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小説。鋼の砦サマでアップさせて頂きました。ロイエドです。 |
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にゃお
(1705)投稿日:2004年03月18日 (木) 13時13分
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「今日はやけに雨が激しく降るなぁ・・・」 窓の外を見ながらロイは呟いた。雨粒が窓を激しく打ち付ける。外の景色は水滴で ぼやけていた。しかしそのぼやけた景色にひとつの赤い影が見えた。 「鋼の!?」 ロイは慌てて外へ出る。そこにはずぶ濡れになったエドがたたずんでいた。 頬を伝う雫は雨粒なのか、涙なのか、よくわからなっかたが、エドの身体は 小刻みに震えていた。 「一体どうしたのだ?鋼の。こんなに濡れて、冷え切っているではないか」 ロイはそう言うと、自分の着ていたコートをエドにかける。エドは口を開こうとはしない。 二人を冷たい雨と重苦しい沈黙が包む。一体どれくらいの時間が経ったのだろうか、 ロイのかけたコートもロイもすっかりずぶ濡れになってしまった。傘を持ってくれば よかった・・・と少し後悔をするロイ、しかし今はただ冷たくなったエドの傍にいる ことしか出来ない。もしこの場を離れてエドがいなくなってしまったら・・・ そう、エドは今にも消えそうであった。ようやくエドの重い口が開いた。 「俺、何もしてやれなかった。何も守れなかった。錬金術なんて便利だと 思われてるけど、でも本当に守りたいものを守れない、何の役にも立たない愚技に しか過ぎない。かあさんもニーナも・・・誰も救えない・・・」 「鋼の・・・」 嗚呼、ニーナのことを悔やんでいるのだね。でもあれは例え私であったとしても どうにもならなかったよ・・・。そんなに自分を責めてはいけない。人は人である以上、 越えられない一線というものがあるのだよ。例えそれを望んで生きて旅を続けていた としても、今の段階では、人にはどうしようも出来ないことなのだよ・・・。
「俺、俺・・・」
エドはロイを見上げる。今度は分かる、その頬を伝うものが涙だということを。 小さな身体で、大きなものを背負っているのだね・・・。私に一体何が出来よう? 今はその傷ついた心を癒し、冷えた身体を温めてあげることが出来たのならば・・・。
「気にするな、というのが無理だろうが、今は休みたまえ」
ロイはそう言うとエドの方を抱き、官舎へと向かった。冷え切った体温が濡れた コート越しにも伝わる。不謹慎かもしれないが、このまま君の唇に触れたい。 そう思いながらも、ただただ、黙って肩を抱きながら寄り添い歩くしか出来ない 自分に苛立ちを覚えた。
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