目から雫が流れ落ちて、涙かと思ったらどす黒い液体だった。とめどなく流れ続けて私は泣いている気分になる。と、左目の視界が途絶え、手の上に丸いもの。眼球かしら。
　――泣けるものなら泣きたい。
　口から血を流した彼が横たわっていて、少し、ウジが湧いている。右目だけでそれを見ている間も目から液体は流れ続け、彼の体を汚してしまう。彼の腰に短剣が下げてあるのに気付く。私は手に取り、刃をひらひらさせる。思い切り喉に突き刺す。……なんともない。傷からまたどろどろの液体が溢れ出しただけだった。今度は彼の左顔面に突き刺す。ぐじゅっと音がして刺さる。刃を動かし、左眼球を取り出す。私の左目があったところにぐっと埋め込む。
　――貴方はこんな風に世界を見ていたのね。
　次は服ごと彼の胸を切り裂く。肉がぐねぐねしている中を探る。きっとこれが心臓。ウジがたくさん。貴方のハートは私だけのものよ。がぶり、と噛み付く。弾力があり、けれど口内に彼が染み渡る。咀嚼し、また一口。また一口。二人で一緒に堕ちて朽ち果てて。肩の肉がずるりと流れた。