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[23] 梗概・SF編・星からの帰還+チャペックのロボット
投稿者:びっぐ
投稿日:2002年09月26日 (木) 17時21分
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性欲を抑制させる薬が人類にもたらす悲劇 スタニスワフ=レムの「星からの帰還」にあるような、性欲を抑制させる薬が開発された(スタローンとスナイプスの映画「デモリッション・マン」にも似たような設定がありましたな)。これにより、人口問題の解決にも道が開かれたように思われた。しかし、この薬には恐るべき副作用があった。薬を服用した人の子供は、身体上の第一次性徴、第二次性徴は現れるものの、自身は薬を服用していないにも関わらず、そもそも性欲というものをまったく持たないことが明らかとなった。そのため、数世代を経た後、男女は、お互いのことを、身体的特徴の異なる単なる異民族としてしか認識できなくなっていた。そうして発生したのが、過去の幾多の民族紛争が子供の喧嘩に見えるような全面的な男族と女族の間の戦争であった。そうした戦争を何回か繰り返した結果、男女は地球上でまったく分離して住むようになった。その頃には、人間は遺伝子技術によって完全に人工的に出生できるようになり、男女の産み分け技術も確立していたので、存続のためにお互いを必要とするということがなくなっていたのである。 そしてさらに何世代かが過ぎたころ、国境近くに住むある男性が、反対側のある女性に、それまで何百年間誰も経験したことの無いような感情を抱くようになる。そして女性の方も、最初は嫌悪感を抱いていたものの、やがてその感情が自分にも芽生えたことに気付く。こうして人類は夥しい犠牲の後、ようやく元の自然の摂理へと戻る一歩を踏み出したのであった(…このエンディングは完全にチャペックのパクリ)。
(ちょっと恰好を付けた固いことを書くと、このアイディアの発想の原点は… ●キリスト教やイスラム教の説く性愛を罪悪視する発想を極限まで推し進めたらこうなるではないかという一種のシミュレーション。 ●歴史上、肌の色や宗教の些細な違いで酸鼻を極める民族紛争や虐殺が各地で起きたが、人間同士の間で最も身体的・精神的違いがあるのは男性と女性。それを民族の違いに見立てて民族紛争の愚かしさを風刺するという一種の寓話。)
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