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人形劇といえば「ひょっこりひょうたん島」「新八犬伝」が大好きで、実家のある市では世界人形劇フェスティバルを 開催したり、人形博物館で辻村ジュサブローさんの人形を展示したりと、人形劇に縁が深いと勝手に思っている 私です。特に大人向けの怖い物語が好き。 映画だと、ホラーもスプラッタもバイオレンスものも どうしてもダメですが、人形劇だと割と平気で見られる せいかもしれません。
ストリングスは、それまで本格的に人形劇に関わったことのない人だからこそできた作品だと、私も思います。 ある意味、全然 人形劇らしくないんです。ものすごくまっとうな文芸作品(!?) ホントに生身の人間が演じているような、錯覚を覚えます。
ですから心優しいジーナが処刑される場面では、胸がつぶれるほど悲しくて・・・。 息絶えようとするジーナを抱き、それでも真実を見極めようとするかのように 大きな瞳を真っ直ぐに見開いている ハル王子。普通なら目を伏せるところなのに、なぜかそれがハル王子らしくて 思わず込み上げるものが・・・。
戦争の場面で 空中で幾筋もの糸が燃え上がるシーンも、下で起きているであろう具体的な戦闘場面を描くより はるかに恐ろしく、衝撃的でした。 スクリーンにはたくさんの燃え上がる糸が映っているだけですが、それが美しいだけに心が凍りつきそうでした。
ショッキングな場面ばかり書きましたが、ジータの踊りは大変色っぽくて ハル王子とのラブシーンも、 とてもステキでした。糸を使う人形劇だからこそできる、こんな描き方もあるんだ!と。
エリトの奥さんアイケの出産シーンでは、新しい細く輝く糸が天井から下りてくるのが感動的!と 戸田恵子さんは舞台挨拶で話されましたが、私にはアイケの糸から少しずつ少しずつ枝分かれしていくように 見えて、それはそれで感動的でした。次に見に行く時には、よく見てこようと思います。
牢に落とされていたハル王子が 同じく囚われていたエリト一家を救おうと、牢獄の格子を上から落とす場面は 臨場感あふれていて「みんな、動くな!」の声にハラハラ。思わず手に汗を握りました。 落ちてきた格子は、本当に重そうでした!
印象に残ったシーンは、他にも湖の中や死んだ子どもの頬をなでるシーンなど たくさんありますが、この辺で。
実は、スポット番宣などを見ていて 剛くんの吹き替えにはちょっぴり心配していました。 いくら若くて青い感じの王子役とはいえ、あそこまで真っ直ぐな言い方で大丈夫か?と。 最初は少々気になりましたが、だんだん少しずつですが王子も成長するせいか 気にならなくなり、 エリトに「裏切り者〜!」と言って去っていくシーンでは、悲痛な気持ちがよく伝わってきました。 世間知らずだけれど真っ直ぐで勇気があって、瞳の美しい青年王子にぴったりでした。(ファンの欲目かな?)
伊武さん、戸田さんがやっぱり圧倒的に上手いなぁと思いました。 声だけなのに、たくさんの表情や動きがこもっているんですね。 慎吾ちゃんの声は、威圧感があってびっくりでした。ジータは、中谷さんご本人より色っぽいような(失礼!) 優香さんも優しいジーナにぴったりで、不安な感じもよく出ていました。 劇団ひとりは、ちょーっと若過ぎるかな?
実際の人形を見て、その小ささに驚きました。顔のアップが大変多いので、もっと大きいのかと思っていました。 人形に文字通り生命を吹き込み これだけの演技と表情をさせたのは、人形師と映画スタッフの 努力と協力の賜物なんでしょうね。いくら賞賛しても、足りないくらいです。
最後に、描き方や映像はとても大人向きなのに ストーリーが悪い意味でお子様向けみたいで、ちょっぴり残念 でした。もとのストーリーを知らないので何とも言えないのですが、大事なところをあっさり端折ってしまったり、 もう一波乱あるのかなと思ったら もう終わり?だったり。
かつてゼリス族の女子どもの虐殺に反対して 国王の逆鱗に触れたガラクが、真実を知っていながら今回の戦闘 ではなぜ「皆殺しにしろ!」と叫んでいるのかがよくわからないし、ハル王子はどうやって自国に戻ったのかも はっきりしません。今回は人形の動きとストーリーを追うのに忙しくて、私が見落としたのかもしれません。 いずれにしても、何回も見たい映画です。
わかりにくい感想ですみません。 人間の愚かさと素晴らしさを、人形を使って描いた素晴らしい作品だと思います。 大人にも子どもにも たくさんの人に見てほしい映画ですが、上映館が少ないのが何とも残念です。
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