小説を書こう!
小説!
みんなも、どんどん小説作っていってくださいねー!一応、新しくつく人は、新スレを立てて書いてください。一度書いている人は、次回から、自分の所にレスを立てて続きを書いていってくださいね^^
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綺麗な月夜・・・あたりには荒野が広がっている、その中に2人の男がいた。一人は青い髪の約175前後の身長身体つきは中肉中背で年のころは18ほどであろうか?安そうなGパンと安そうなシャツに安そうな皮ジャンを着ている。しかしその男の首にかかっている唯一ノアクセサリーの十字架は見た事も無い鉱石で出来ているようで不思議に光っている。そしてその男と向かい合って立っている男は190はあろうかという身長に大きな漆黒の鎧を身に付けている。年は鎧と同じく漆黒の兜を被っているので分からない。「ま〜た国からの殺し屋?めんどくせぇな〜見逃してくんない?最近寝不足で体の具合が悪いんだよね。」軽い口調で若い男が言う。「関係無い。」鎧の男が低く重みのある声で言う。声からすると40〜45といったところか。「え〜。やだなぁ。」若い男が言ってるわりには楽しげに言う。わずかに口元が笑っている。その男を見て鎧の男は殺気を放ち、「その元気なら平気だな」と平坦な声で言いそれと同時に若い男へと疾走していく!若い男も身構え殺気を放つ!そこに大きな大剣が襲い掛かる。若い男はそれを半歩下がり避ける。合わせたように鎧男の蹴りが出される。若い男はそれを更に見切り紙一重の距離で避ける。後ろに跳び距離をとると「なかなかやるじゃん、おっさん」若い男が楽しげに言うと大剣を構えなおした鎧の男が「貴様とてまだまだ本気は出していないのだろう?」挑発的に鎧の男が言う。「ば〜れた?でも、本気は出さないよ。疲れるし。」笑いながら、しかし殺気を更に出し告げる。「いいから『力』を使え。貴様の力を見せてみろ。」こちらも挑発的に。その言葉に若い男はわずかに反応を示す。しかし、すぐに軽い口調で「別にいいぜ?あんたがこの世に未練が無いならな・・・・・。」若い男の十字架が光る。「さぁ・・・はじめようか!」夜の荒野が張り詰めた空気に包まれる。
張り詰めた空気の中で二人はお互いに相手の出方を探っている。ふいに黒い鎧の男が、「貴様は名はなんと言う?本当に・・・国の実験の?」青い髪と紫の瞳を持つ若い男がそれに答えるように、「はぁ?分かってるから都からつけてきたんだろ?」黒い鎧の男はその兜を外し、下へ置く。すると黒い髪に黒い瞳、彫りの深い顔が現れる。「ふむ、私の名はグラン・ボルジーニ。貴様の名はスラウス・・・で間違いないな?」確認するように睨みながら問う。「ああ、俺はスラウス・アゲイン。・・・さぁそろそろ始めようや!」スラウスは名乗りそして殺気を放つ!同じようにグランも殺気を放つ!先に動いたのはスラウスだった。しかしそれは動いたというレベルでは無い。消えたのだ。「なっ!?」その現象にグランは戸惑った。彼はスラウスが『力』・・・すなわち『エレメント』を使えることを依頼主から聞かされていた。『エレメント』それは地水風火の自然現象や己の身体能力を上げることが出来るという人外の力である。『力』を使う者を『エレメンタラー』と人は呼ぶ。エレメンタラーは国によっては忌み嫌われてしまう。化物と罵る人もいる。しかしグランは今までにエレメンタラーと何度か戦った事があった。確かに強かった。が姿を消すほどの速さで動ける者は一人もいなかった・・・・。スラウスは普通のエレメンタラーの力を遥かに凌駕していた。そのスラウスの気配を探る、何とか影ぐらいなら見えた。しかし何が出来るというわけでもない。グランは焦り影へと問う、「貴様のその動き!やはり研究所の実験が・・・・悪魔の実験が存在したのだな!?」影が止まり、スラウスが現れる。そして悲しげな顔をして、「好きでこんな力をてにいれたわけじゃなさ・・・こんなめんどくせぇ力なんて・・・」「しかしこれも国からの依頼、国のため!消えてもらう!!」グランは殺気を放ち威圧感が増す。そして大剣を振り上げ、突進してくる!速い!しかしスラウスは動かず左手を出し呟く。「フリーズ」その時グランの猛進が止まる。まさに凍ったように。更にスラウスは出した左の拳を握り、「我が左手に宿りし呪いの氷よ・・・」十字架が光る。拳に冷気のエレメントが光り輝き集まる。「此処に剣となりて・・・・。」冷気が剣の形へと変わっていく。「カタチを成せ!」ピシィ!何かが凍るような音と共に冷気が一本の氷の剣へと変わっていた。剣の刃は美しく澄んでいてまるで鏡のようだ。装飾もそれだけで芸術品といえる美しさを持っている。スラウスは氷剣を持つ。そこでグランが動きを取り戻す。彼は急いで間合いを取る。「貴様人の動きも凍られることができるのか!?それほどの力を国は・・・・。だが、それほどの力を何度も使えはしないだろう!」「まーな。」軽くスラウスは答える。「あの力はめっちゃ疲れる、かなりを体力使うんだけどさ。この剣があればなんとかなるぜ?来いよ。」スラウスは指をちょいちょい。それにグランは怒り「力を教えてもその余裕!今に後悔するぞ!」又も猛進していく。他の技も使えるだろうとは予想はしているがここまで馬鹿にされては後へは引けない。スラウスは口元に笑みを浮かべる。キィン!!剣の絡み合う音。そう突進の重さと全力の力を入れたグランの斬りをスラウスは氷剣で受け止めたのだ。この有り得ない力もエレメントの力なのだろう。「おっさん、確かに強いよ。だけどさ、俺ほどじゃないぜ。」グランは受け止められる事は予想していた。「甘い!!」叫ぶ。するとグランの大剣が剣先から柄まで真っ二つになった。双剣へと変わったのだ。「なっ!」スラウスが驚いて声を上げる。が・・・「遅い!!」そう・・・避けるのに間に合わなかった。左の脇腹と右足の太腿から鮮血。勢いが無かったから切り落とされてはいないが、姿を消すほどの速さは出せなくなってしまった。そこに追い討ちで蹴りが来る!スラウスは身をよじる。なんとか急所は外したが遠くへと吹っ飛ぶ。スラウスは転がりながら大きな岩へとぶつかりやっと止まる。「がぁ!」血を吐く。遠くからグランがゆっくりとした足取りで自分へと来るのが見えた。「ちぃ!アレをやるしかないか。」立ち上がるスラウス。そして氷剣を右手の掌へと・・・突き刺す!そこからは当然血が出る。しかし流れ出る血は彼の前で複雑な魔方陣へと形を作っていく。氷剣を引き抜く。激痛に顔が引きつる。そして赤い血の魔方陣が完成した。それを見たグランは、またスラウスへと突進してくる。まだ距離があるとはいえそのスピードは速い。スラウスは目を閉じて「我が右手に宿りし水の聖霊よ。この血を用いて破滅の激流をここに!」彼の十字架が強く光る!陣から水のエレメントが物凄い勢いで集まる!グランはここからでは間に合わないと思ったのか右手に持った剣を、陣へと疾風のような勢いで投げつける!スラウスは右手をかざして力強く言い放つ!「有れ!!」剣が陣へ届く前に陣から激流が迸る!「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」グランは抵抗する間もなく激流に飲まれる!すぐにスラウスが左手を前に突き出して「我が呪いの氷よ、その冷気を牢を化せ!」グランを氷の牢へと閉じ込める。そして激流が止まる。スラウスは氷の塊となったグランへと「強いな・・・おっさん。」軽い口調で言った。スラウスの肩から血が流れていた。そこには鋭い傷痕があった。「今日は疲れたなぁ、血陣は使っちまうし。氷剣は出しちまうし。本当に疲れた。さらに人まで殺したらもっと疲れそうだよなぁ。」楽しげに独り言を言う。「もう疲れたくないしぃ。何それにおっさん強いし、また戦ってみたいから殺したくないなぁ〜。何よりもおっさんもあの実験の事嫌いみたいだし・・・。」最後のほうは悲しげに言い、空を見上げる。「その氷はさ・・・朝になったら溶けるから。俺もう行くね眠いし休みたいし、腹減ったし。」笑顔でグランに言うこの先に小さな町があるはずだ。そこでたくさん寝て、たくさん休んで、たくさん食べてやると彼は心から誓った。しばらくしてスラウスが街に到着した頃には朝になっていた。彼は傷の手当てを終えて寝ている。大きなイビキをかいて眠っている。彼の十字架がぼんやりと光る・・・・。そのとき朝の荒野の中で誰かが「敵わんな・・・・あの男には・・・」楽しげに呟いた気がした。
森の中に青い髪の少年と赤い髪の少年が木を昇っていた。どちらもまだ12,13才ぐらいだ。この森は帝国のある辺境の村の先にある森だった。その森は村の人々にとっては聖域(勿論立ち入り禁止の)なのだが、子供たちにとっては最高の遊び場だった。赤い髪の少年が木の上に昇った。「お〜い!はやくしろよ〜。スラウス。」「待ってよ、グレン。」下で木に登っているスラウスと呼ばれた少年は急いで昇ろうとした。そこにグレンと呼ばれた少年は「ははっ!落ちんなよ。」冗談めかしに上から声をかける。「よいしょっと!」スラウスはグレンのいる枝へと昇る。「ふぅ・・・・疲れた。」「ごくろーさん。」グレンが笑いかける。「ほんとに疲れたよ。それにこんな高いところを昇るなんて危ないよ?」「昇ってからな〜に言ってんだよ」「そりゃそうだけど・・・。」「もっと軽く考えろよ。お前は難しく考えすぎだよ。俺みたいに行き当たりばったりガいいのさ。」また、楽しそうに言う。スラウスは困った顔をして、「そんなんで帝国の軍人になれるの?」「なってみせる!そしてこの村を住みやすくするんだ!モンスターなんかに恐れないですむような村に!」スラウス溜息を吐く。「何度も聞いたよそれは。そうするのが夢なんでしょ?」「ああ!」グレンの顔は輝いていた。そして何気なく村のほうへ目をやる。その輝いた顔が一変する。「なんだ!?」「どうしたの?」スラウスはグレンの視線の先を追う・・・すると、村から煙が上がっていた。「え!?村が・・襲われている!それにあの服は帝国軍!?」驚く。「いくぞ!スラウス!」勢いよく木を降り始める。あとをスラウスが追う。この森から村までは5分ほど一本道を行くと着くはずだ。グレンはスラウスの遥か先を走っている。さすがは軍人を目指すだけはある。ドッ!何かの音がする。グレンが前のめりに倒れる。彼の胸には矢が刺さっていた。スラウスは動けなかった。現実を脳が否定しようとしたのだ。そうすると道の向こうから声がする。「なにか来たと思ったら。村人か・・・獣かと思ったぜ。」「なに、村人なんて皆もう死んでるんだ。いくら小さい村とはいえ特殊部隊の軍人が50人も来ているんだ。生き残りなんていないさ。」軍人は2人いるようだ。この会話からすると自分には気が付いてないようだ。「でもよぉ。こんな小さな村にあの『十字架』があるのか?エレメントに関わるという・・・。」「それを知る権利は俺たちにはないさ。そろそろ戻るぞ。」「そうだな。」去って行く足音・・・。目の前の友人の震える身体。そこから水溜りのように溜まっていく血・・・・。頭の中に今までの出来事がよみがえり答えが出される。まず聖域・・つまりあの森には軍の特殊部隊が来る様な秘宝があること。次に村はもう助からない・・・・村人は全て死んでしまったこと。友人が危ない状況にあること。「グレン!」駆けつける。「大丈夫!?意識ある?平気?」「はぁ・・・はぁ・・・スラウス・・・。」「グレン!死なないで!」「生きろ。自由に・・・好きなように・・・。」何を言っているのか・・・彼は、グレンはもう自分は助からないと悟ったのだろう。そしてスラウスに、「自由きままに・・・いい当たりばったりな生き方もいいもんだぜ?・・・がぁっ!」軽い口調で告げる、そして血を吐く。「わかったよ!僕グレンのように生きるよ!だから・・・」「僕じゃなくて俺だろ?」また軽い口調だ。スラウスに心配をかけたくないのだろう。だが、そう言うと彼の身体から力が抜けた。「うわぁぁぁぁーーーー!!」叫ぶ。「どうしたのです?」いきなり後ろからの声。弾かれたように声の主を見る。金色の髪、同じ色の瞳、着ている物は白い法衣だった。その首に下げているのはぼんやりと光る十字架だった。神父のようだがこの村の神父ではない。「神父様!グレンを・・・・僕の友達を助けて!」神父は悲しげに目をそらし、「彼は・・・もう・・。」「そんな!」神父はスラウスの目を見て。「ここはまだ危険です。奴らはこの十字架を探しにまた戻ってくるでしょう。」「十字架!?やつらが狙ってたのはそれなの!?」「ええ。」「いったいどうやって取って来たんです?罠やモンスターは!?」そうあの森にはモンスターがいる。それに罠も幾つかあったはずだ。「私は・・・・エレメンタラーです。」神父がスラウスに言う。「そんな!?エレメンタラー!?」エレメンタラー、さらに秘宝の十字架をとってこれるということは、彼は強いのだ。「そんな事より逃げますよ。「でも、村の人たちを!」「だめです。死体を動かせば生き残りがいることがばれてしまいます。」悲しげに告げる。スラウスは目を下へ逸らす。が、意を決したように。涙が目に溜まっている、それをぬぐい答えた。「わかりました。」「では、行きましょう。私の名はライハ・スティールです。君の名前は?」ライハが尋ねる。「スラウス・アゲインです。」「では行きましょうスラウス。」ライハが歩き出す。「あの!」ライハは振り返り「なんでしょう?」「僕を・・・いえ、俺を弟子にして下さい!帝国に復讐できる位に強くしてください!」「は?・・・・えっと・・・弟子、ですか?」「はい!」「え〜とまぁ、いいんじゃないですか?」軽い口調で答えてくれた。その姿が友人と重なる。「え・・・」「どうしました?」「いえ!ありがとうございます!師匠!」「師匠ですか・・言われてみるとなかなかよい感じですね。」笑顔で答えてくれる。「そうだ。ではこれをあげます。この村のものですし、弟子の印という事で。」十字架をライハが差し出す。それをスラウスは手にとり、首にさげる。「似合いますよ。」「え・・と・・その、ありがとうございます。」照れるスラウスを楽しげに眺めるライハ。そして、「行きましょう、そろそろ此処からどこかに移らねばいけません。」「はい、師匠。」スラウスはグレンへと呟く。行ってくるよ、グレン・・・。そして二人は歩き出す。「はっ!」ある宿の安い部屋の中、スラウスはベットから目覚める。「グレン・・・師匠・・・。」呟く。そして窓際へと行き窓を開ける。爽やかな風が入り込む。もう昼だ。「俺まだまだ生きていくよ!グレン!師匠!」空へ向かって大きく叫ぶ。ぼんやりと優しい光を出して十字架が光る・・・・。
小さな町の安い宿の前にスラウスはいた。「ふぁ〜あ、よく寝た〜!」大きく背伸びをして大きなあくびをする。「そろそろこの町から出ようかなぁ・・・よし!そうしよう!その為にはまず朝メシ!」一人張り切る。彼は既に宿屋で朝食は済ませたはずだが・・・・彼には関係無いようだ。そして美味く、安い店を探す為に町をぶらついてみる。すると香ばしい香りが、彼の鼻をくすぐる。「!」それは、ほんわかと甘いあんこの匂いだった。匂いの先には!「開店50周年!今なら25%オフ!世界で一番の団子屋へようこそ!」なんて看板の出ている団子屋が目に入る。「団子か、最近食べてなかったなぁ。よし!団子に決定!」団子屋へと一直線に走っていく。すると、「わっ!」少年とぶつかった、黒い髪だ。歳はまだ12,3ほどだろうか。声からすると男のようだが、まだ声変わりはしていない。おもわず立ち止まるスラウス。「あっ、ごめん。平気か?」「すいません!すいません!」少年は深く頭を下げそして足早に去って行く。「え〜と・・・大丈夫かな?」そして団子屋へ歩いていく。団子屋で団子を注文する。しばらくすると出来たての団子がやってくる。「団子〜団子〜」そして団子を夢中に食べる。一緒に出された茶も飲み、一息つく。「ふぅ、美味い!」幸せそうに茶をすする。そこに店員がやってきて、「お客様、当店では今25%オフとなっていますので・・・」「いいよ〜金ならけっこう持ってるからさ」と、懐を探る・・・・また探る・・・。「あれ?」今度はポケットや荷物の中を探して一つの答えが彼の頭に弾き出された!「ない!金が・・・・俺の金が無い!!」叫ぶ。そのスラウスを見て店員が、「お客さん?もしかして・・・」「まさか!さっきぶつかったあのガキか!」「お客さん!スラれたんですか?」「あのガキに違いない!探し出してここの金を全額払ってもらう!」今にも暴れそうなスラウスに店員が告げる。「それって黒髪の12ぐらいの子供かい?」その声に勢いよく店員を見る。「そう!黒い髪の背がこん位の!」自分の胸辺りを示す。「ああ〜それはやられたね、レンファは常習犯だよ。だけど・・・とろそうな旅行客や旅人しか狙わないはずなんだけど・・・、あんた大きなあくびやらなんかしてたんじゃないの?」どうやら犯人の子供はレンファというらしい。「だ〜!俺がとろそうだと!?絶対捕まえる!」勢い良く走り去ろうとしたスラウスに店員が、「お客さん!お金無いなら荷物置いていきな。返して欲しいならレンファを捕まえて金を出すんだね。」スラウスから荷物を取る。「何!?」「その十字架をくれるならタダでもいいけどね。なかなか見ない鉱石で出来てるしね・・。」ジィッと十字架を見つめる。それにスラウスは大きく首を振り、「駄目!!これだけは駄目!これは師匠の形見なんだ!」「じゃぁ、この荷物でいいね。」笑顔で荷物を店の奥へと持っていってしまう・・・。「お・・・俺の荷物がー!あのガキ絶対に見つけ出してやる!」子供みたいにムキになって店を出て行く・・。呆れたように十字架が光る・・・。
スラウスは早速町で情報を集めた。町の人々はレンファについていろいろと教えてくれた。レンファは12歳で、親はいない。だから旅行者や旅人を狙ってスリを働くのだということ。しかし、町の人からは一度も取った事は無かった。さらに必要以上にスッたりはしないこと。むしろ町の人には何もしていない良い子だという事。いずれは旅に出て有名になる夢がある事。それらの情報に、「なんなんだ?あのレンファとかいうガキは、いい奴なのか悪い奴なのハッキリしないしよぉ・・・」ため息混じりに呟く・・・・。そして今度は八百屋のおじさんに聞いてみると、「ああレンファね。あいつならいつも公園の裏にあるつぶれた宿屋にいるよ。」笑顔で教えてくれる。やはり町に人からは良い子とされているらしい。「よし!ありがとな、おっちゃん!」おじさんに礼を言うとすぐに走り出す。公園に着くと周りを見わたす。潰れた宿屋はすぐに見つかった。「アレだな。」スラウスは、そこへ行こうと足を踏み出す。「お兄さんどうしたんですか?」後ろからの声。振り返るとそこにはレンファがいた。「お前がレンファだな!?お前のせいで俺は荷物が無くなっちまったんだぞ。」「やだなぁお兄さん。無くなってないでしょ?荷物は団子屋に置いてあるんですから。」「お前・・・なんで知ってるんだ?」「後ろから見てましたから。」笑顔で言われる。スラウスは手を差し出して、「お前よく俺の前にノコノコ出てきやがったなぁ!金返せ!」「いいですよ。」その上に財布をのせる。「へ?」間抜けた声でスラウスがレンファを見つめる。「旅人の人って結構お金持ってるんですね。今までの旅人の人も結構ありましたし。御かげで助かりましたよ。」「助かった?なにがだ?」「僕は兄弟がいるんです。アイツ等はまだ小さいので稼げないんですよ。だから僕が稼いでいるんです。」なるほど、だから町の人たちはレンファに優しいのだ。「ふ〜ん・・・まぁ俺は金さえ戻ればどうでもいいんだけどよ。」レンファはためらった様に、「僕の夢は弟たちを不自由の無い生活をさせることなんです。」「ふ〜ん・・・・で?」「その為には旅に出て、有名になってたくさんのお金を弟たちにあげるんです!そして幸せにするんです!!もちろんこの町も大きくして見せます!」レンファが昔の友人と重なって見える。大事な村の為に有名な軍人になると言っていた友人・・・。しかし、彼は憧れる国の軍の軍人に矢を撃たれて・・・・今はもう・・。「あなたはスラウスさんですよね?」スラウスは驚く。「なんで俺の名を?」「やっぱり・・・。その十字架を持っているから。」レンファは十字架を見つめる。「十字架?」「ええ、スラウス・アゲイン。不思議な十字架を持つエレメンタラー。それしか情報は無いが多額の賞金を掛けられた男。」感心したようにレンファを見る。「ほぉ、そんで俺を捕まえるか?」そのスラウスにレンファは、「いいえ、むしろ逆です。僕を旅に連れて行ってください!町の人を幸せにする為に!」レンファに昔の自分が重なる・・。そして「ん〜。まぁいいんじゃない?」「え・・・ホントですか!?」輝く顔で確認を取る。「ああ、スリさえしなければな。」それにレンファは大きく頷く。「んじゃ行くぞ。・・・・・・の前に団子屋で荷物を取ってこなきゃな。」「はい!」二人は団子屋へ行く。そこで荷物を受け取り、金を払い。町で食料を買い。町の門へ行く。そこでスラウスはレンファに尋ねる。「ホントにいいんだな?」「勿論です!」即答だった。「んじゃ、行こ〜か。」「はい!」二人は町を出た。ぼんやりと十字架が光る・・・。
気が付いたら二人は道に迷っていた・・・。辺りを見回すと木・・・木しか無い。森だ。足元に何かの気配を感じ、レンファは視線を落とす、そこには蛇がいた。ニョロニョロと。「うわっ!」叫ぶ。そして踏みつける。「おいおい、いくらなんでも踏むのは無いだろ!踏むのは!」「蛇ですよ!?爬虫類ですよ!?丸飲みですよ!?」「でもなぁ〜蛇って神様の化身って言うじゃん?」「関係有りません!・・・というか、なんであんな何も無い道からこんな森に入り込むんですか!?」「ああ、あれだ。森に行きたくなった。」あっさりと言うスラウスにすかさずレンファがツッコミを!「何故に、行きたくなったんですか!?訳分かりませんよ。しかも迷うし!」「蜂蜜食べたかった・・・・・。」「貴方はプ○さんですか!?も〜・・・なんでこんな事に。」「熊さんをなめんなよ!?動物園の人気者のパンダだって熊さんなんだぞ。」呆れてため息を吐くレンファ・・・。「はぁ・・・・・もういいや。とにかく出ましょう。こんな所さっさとオサラバしましょうよ。」そこにスラウスが笑顔で「蜂蜜採るまでヤダ」裏拳でツッコミをレンファが入れる。速い!「ぐはっ!」顔面に喰らいノックダウン・・・。「どうしよう・・・・。ほんとにこの人って犯罪者?蜂蜜欲しがるし、裏拳でKOされるし・・。」倒れた賞金首を見つめる。不意に草むらが動く!「誰だ!?」
ガサッ!そこから現れたのは熊だった・・。熊・毛モサモサ・大きい・肉食・怖い・逃げる・死んだふり。一瞬にしてこれらの事が頭によぎる!「熊!くーーまーー!!」叫ぶ。逃げようと思うが逃げらるはずがない。「スラウスさん!助けて!」寝てた・・・・むしろ気絶?「クソッ!どうする?」腰のダガーを手に取ろうとするが、それよりも速く熊がノッソリとこちらに来る。「だー!起きろ!!この野郎。」スラウスの頭を踏みつける、熊が少し後ずさる。「はっ!・・・・ここは?蜂蜜は?」「熊に襲われているんです!何とかしてください!」スラウスは熊を見つめる。目が合う。「熊さーん!蜂蜜下さい!」熊に駆け寄る。「熊さーん」物凄い勢いだ。熊は悟った、この生物は危険だ。このままだと自分の命が危ない。その結果、熊は逃げた。「熊さん!?」追いかけようとするスラウス、「五月蝿い!」今度はボディに一発。「ぐはっ!」なんとか持ちこたえるスラウス。「なにをするんだ?レンファ。」「追いかけてどうする気だったんですか?」「蜂蜜を・・・・」その時レンファからの殺気が、「やっぱ蜂蜜はいらないね、うん。いらない。」その顔には汗が・・・。笑顔でレンファが、「そうですね。速くこの森出ましょうね?」「はい・・・・出ます。」その眼には涙が・・・。そして二人はこの森を出て行ったのだった。
赤の記憶赤かった・・・周りが、全てが、世界が。目の前に見えるのは師と呼んでいた人。白い法衣は赤く染まっていた。彼はなんとか言葉を出そうとする。「ス・・・ラウ・・ス。あの十字架がある限り・・貴方との絆がある限り・・・私は消えませんよ・・。」血で染まった指で近くにいる少年の胸元にある十字架を指差す。傍で倒れている赤くなった彼を涙をこらえて見ている少年がいた。「師匠!何故・・・何故です!?俺を置いていかないで下さい!。」「その・・十字架・・・は・・・・貴方だけの物です。」「待ってよ・・・。師匠!」「それが・・あれば話せな・・くとも心が通・・・じるはず・・です。貴方の終り・・は終りでは・・ないのです。私はその十字架と・・・っ!!」血を吐き、彼はもう動かなくなった。スラウスの手の中でどんどんと冷たくなっていく。「そんな・・・また、大事な人を・・・。」道で倒れた自分の親友の姿が脳裏に走る。「この十字架はなんなのさ・・師匠。この十字架と師匠はなんなんだよ!!」首にかかった十字架を握る。赤い、血の世界の中でも十字架は皮肉にぼんやりと光っている。赤い中の白。赤い世界。赤い記憶・・・・・。
森を抜け、次の町に着いた二人。なかなか大きい街だ。しかし、大きいが故に治安はあまり良くないらしい。「ん〜。これだけ大きい街だと俺をねらってる奴もいるかもね〜。」青い髪の・・・スラウスがいつもよりも少しだけ、本当に少しだけ真面目に言った。しかし、軽く言っているように聞こえる。「そんな事を言うなら、もう少し・・・いえ、もっと真面目に言ってください」隣の黒髪・・・レンファがツッコミをいれる。「気を付けろ!ここは危険だ!さらわれるなよ!!」真面目に(仰々しいくらい)言った。スラウス。「っ!」足に激痛が走った。何かに踏まれたような、そう誰かの足に思いっきり踏まれたような痛み。その犯人が、「はいはい、んじゃ気を付けますから暫く黙っていてくださいね。」と告げる。「うう・・・すいません。・・・・だけど気を付けろよ。一応俺はお尋ね者なんだから。」「ええ、熊さん好きの・・」それを遮るようにスラウスの腹が鳴る。・・・・・「食事にしますか?」「ああ。」うつむき、顔を赤く染めたスラウス。「じゃあ、僕は食事の出来るところを探してきますね。待っていてください。」「すまないな、頼んだぞ。俺はここに居るから店を見つけたら教えてくれ。」近くに有ったベンチに座って言う。「はい。それじゃ行ってきますね〜」笑顔で走っていくレンファを見送る。
キョロキョロと周りを見回し店を探すレンファ。(あの人は何食べたいのかな?聞いておけばよかったな。やっぱ食べ易いのがいいよね〜)しばらくそんな事を考えながら歩いていると、パン屋を見つける。「あそこにしよっと」少し笑顔で店に行こうとする。いきなり身体が固まった。動けない、声が出ない。背筋が凍った気がした。「なっ!」かろうじて声が出た、しかし同時に背中をナイフで突き付けられる。(暗殺者!?)小さな声で、しかし殺気のこもった声で告げられる。その相手は黒いコート、黒いフード。黒ずくめでよく分からないが、声は若いスラウスと同じ位だろう。身長もおそらく同じくらいだろう。・・・が、今はそんな場合ではない。「大人しくしろ。貴様がスラウスと一緒に居るのを見た。」(くっ!誰か呼ばなきゃ!)「黙れ。」ナイフが強く背中に・・・・。「分かりました」ナイフが下げられる。反撃しようと思ったが、(僕じゃ適わない・・・)連れて行かれるしかなかった・・・・・。(スラウス!)思ってもすぐに現れるなんて事は無いと分かっていたが、来るはずない。しばらく連れて行かれて着いた所は街を出て10分ほど進んだ所にある小屋だった。「ここは俺たちの隠れ家だ。」強引に小屋に入れられた。(少しでも情報を聞き出さなければ!)口を開こうとした瞬間、「声を出すなよ。**?」短いが殺気のこもったセリフだった。(本気だ!しかし、俺たちと言ったということは少なくとも一人じゃないって事か)唯一ある窓から空を見上げ、(腹へらしてないかなァ・・・・・)溜息が出た。
「腹減ったなぁ・・・・」青空の下でそんなことを言いながらベンチに座っている奴がいる。「遅いなぁ・・・・」あくびを噛み殺しながら呟く。いくらなんでも遅すぎる。一時間も待たされているのだからそろそろ(とっくに)来ても良いはずだ。「探すかぁ・・・。(飯が)心配だしな。」と、公園を出て行く。露店のおばさんに、「黒髪の礼儀正しいガキ見なかった?12ぐらいの男でさ。」説明にならないような説明で聞いてみる。「ああ、その子なら黒ずくめの人に連れてかれたよ。」と教えてくれた。「黒ずくめ・・・」おそらく暗殺者だろう。「どこへ!!?」いきなり大きな声を出したスラウスに迷惑そうに、「多分街の外をちょっと行った所の奴だろうよ」それを聞いたときには足は走っていた。ぐんぐん加速し通行人を掻き分けていく。まさしく疾風。通行人は風が通ったとしか思わないだろう。(黒ずくめに連れてかれたなら自警団にでも通報しろよ!!これだからでかい街は治安が悪いんだ!)そう思いながら走っているとすぐに外に出た。そこにはチンピラが二人いた。遊ぶようにナイフの腹を掌にパシパシとたたいている。おそらく黒ずくめに雇われたのだろう。「どけ。俺も雇われているんだ。」適当に言ってみる。その反応は、「マジか!?なら合言葉を言え!」「いまどきそんなの無いだろ?」所詮は、あるかないかの二分の一だ。無い方に賭けてみた。「正解!!通れ。」と、道を開ける二人組み。(なに!?「いまどきそんなの無いだろ?」が合言葉!?なかなか面白いじゃん・・・。)思いつつ歩いていく。が、二人の間を通る時に殺気が!「貴様嘘ついたな!?」「くっ!」訳が分からない。正解したはずなのに攻撃されているのだ。「何故わかった?正解したはずじゃ・・・。」「間を通る時は右手を上げていくんだよ。」律儀に教えてくれる。(合言葉は布石か!)文句を言う暇も無く横から一人がナイフを持って、もう一人は距離をとって投げようのナイフを構える。先手必勝!まずは近いほうのやつのナイフを蹴り弾く。足が上がったまま軽く相手のほうへ軽く跳躍し着地と同時に上がっている方の足を振り落とす。相手の後頭部に直撃。そのまま地面へと叩き付ける!が、相手の頭が地面につく瞬間、水を発生させて瞬殺の一撃を、死にはしない程度の一撃に変換させる。その間は一瞬だ。ナイフを弾かれたのにも気付いていないだろう。倒れた相手は動きもしない。もう片方はいきなり仲間が倒れたことに対して能が一瞬理解不能状態となる。が、それだけでも十分な時間だった。相手のナイフを(衝撃を弱める時に)生み出した水で飛礫を作りそれを飛ばしてナイフを無力化する。刹那の動きで相手も懐に入り、体を低くし、一気に立ち上がる!同時に、相手のアゴ目掛けて拳底を打ち込む。相手はそのまま宙を舞い、地に落ちた。手加減したから死んではいないだろう。「急がなきゃな。」また、走っていく。
街から離れるにしたがって道や風景が殺伐としていく。そして林の中に古びた小屋を発見した。「あれだな…」普通なら離れた所から様子をみたりするはずだが…スラウスの足は真直ぐ小屋へ。「許さねぇ、絶対にだ。アイツに死を見せたりしたら…」相手は恐らくかなりの使い手がいるはずだ。このちょっとした距離からで分かるほどの殺気を放っている。しかし、ほかにいる輩は大したことはないだろう。先刻のチンピラ程度といったとこか。小屋の少し前まで来た。扉の前にはチンピラが二人仁王立ちしていた。「待ちな」チンピラA「動くなよ」チンピラBスラウスは無視をして進もうとするが、チンピラ二人組がこちらにやってくる「待てと言っているだろうがぁ!」A「ここを進みたいなら…」Bしかし、Bのほうが言いおわる前にスラウスは動いていた。スラウスの頭は既に戦闘用に切り替わっているAの右足にローキックをたたき込む。ゴキィ!足は間接ではありえない方向に曲がっていた。叫ぶ暇も与えずに裏拳を頭にいれる。口を金魚のようにパクパクさせて倒れこむ。どちらの一撃も手加減したとはいえかなりの力だ。死にはしないが後遺症は残るだろう。「わりぃな。急いでいるんだ。」 倒れた Aに冷たく言い放つ。「てめぇ!」BがAの仇を取らんかのようにナイフを振りかぶる。その時にはスラウスは彼の後ろにいた。まさに刹那の動き。「遅いな。」Bに言ったのではなく、ただの感想だろう。スラウスは呟いただけだった。Bのナイフを持った手が宙に待っていた。つまり、彼の後ろに行くと同時にエレメントで作り出した水の刄で切っていたのだ。Bは声の無い叫びを上げた。しかし、首に手刀を食らい倒れる。このままだと死んでしまうので傷口を氷のエレメントで凍らせておく。「わりぃ…。」倒した二人を見下ろしながら言った。彼らも依頼さえなければこんなことにはならなかっただろう。「ははは、同情?」笑い声。扉の前に黒ずくめの男。その隣にはレンファ「流石はスラウスだ。速いし強い。なによりエレメントのコントロールが最高だ」男が言った。その言葉とは正反対に殺気が満ちている。「とりあえずお前が来たからガキは解放な」レンファがこちらに駆け寄ってくる。「スラウス!ごめん…」「いや、アイツはかなりの使い手だ。この殺気、化けモンだ。」複雑な顔のレンファにスラウスは自分の感想を告げる。「下がれ。危なくなるから。」スラウスは真剣だった。レンファは頷き安全圏へ避難。スラウスの額に汗。恐らく気を抜くと殺られる。(なんか、街で脅された時と感じが違う…)木の影からレンファはそう思った。確かに全然違う。「いやー、懐かしい顔見たら嬉しくってさ」男が軽く言った。「何?懐かしいだと?」 スラウスの声は驚いてはいるが動揺はしていない。「俺は…」
「なんなんだよ!?一体どうなってんだ!!」相手が言う前にスラウスの心はガタガタになっていた。自分の過去を知るのは師匠と幼なじみだけだ…。しかし、師匠が死んだ所を自分は見ていた。同じく幼なじみも。だが、確実のは自分の師匠はあんな喋り方はしない。逆に幼なじみは…。まさか。そんな訳ない。それに彼ならこんな事をするはずはない。根拠の無い考え。「気が付いてるんだろ?お前の過去を知っているのは俺だけなんだから…」「まさか…」「う〜ん。そのまさか。」「グレン?でも死んだはずじゃ?」それを聞いて男―グレンの顔が皮肉気に変わる。「あぁ、お前に捨てられた親友のグレンさ。」「そんな!?でも矢が刺さって…その…死んだはずだ。」「お前に盾にされたせいでな。おかげで跡が残っちまった。どうしてくれる?」「盾?何を言って…」「黙れ!貴様の所為だ!こんな体になったのは!!」上着を脱ぐグレン。その下から表れたのは、体中に炎の型の入れ墨が掘ってあった。その入れ墨からは負に傾いたエレメントが流れでている。しかも、入れ墨の場所だけ忌々しく脈を打っている。おもわす息を飲むスラウスとレンファ。スラウスはその『脈打つ入れ墨』に見覚えがあった。そう、悪魔の研究。「ふふふ…。どうだ?お仲間さんよ?俺は身体にエレメントを焼き付けたが、お前は?どうだったか…」「黙れ!言うな!!」グレンを止めたいが身体は動かない。心の奥底では期待しているのかもしれない。彼の口から真実が放たれるのを…レンファはただスラウスを凝視しているだけだ。心から信頼していた人が…あの化け物と同類だったなんて。「そぅ、お前は血に焼き付けたんだよな?でも大したことないだろ?せいぜい三日ぐらい血に焼き付けるぐらい。だいたい一週間ぐらい頭がグラグラな感じ?」スラウスは口元を押さえた。あの日の事を思い出したのだ。三日間身体の感覚がなくなり、一週間耐えきれない吐き気、頭痛、身体の麻痺。寝たいが気分が悪くて眠れない。腹は何も受け付けない。点滴も禁止されていた…血を汚さないようにと。感覚的には一ヵ月ぐらいだった。まさに地獄だ。しかし、彼は「大したことない」と言ったのだ。「俺は二年間苦しんだ。始めの一年で魂を復活。残りは強化。いや〜まさに生き地獄だぜ〜。お前の苦しみに地獄の痛みを二年だ。」魂?二年?次元が違う。「ありえない!そんなんだったら精神が崩壊しているはずだ。」「あ〜。でもお前に裏切られた時よりマシだったぜ?」「だから…それは違う。」どうやら完全に記憶が変わっているようだ。「あぁ〜もう十分だろ?つまり、ラボでの苦しみよりお前の裏切りのが…辛かった。そうゆう事。」ラボ?―研究所の事か。「何故、俺を狙う?十字架か?師匠亡き今は俺が「保持者」だから他人にはつかえない。」「関係ないね。あの方の命令さ。」あの方?一体誰なのか…それに可笑しい。二年の苦しみでラボを恨んでいるはずなのに「あの方」とやらには敬意が籠もっている。(つまり、グレンは「あの方」に復活させられて、強化と精神操作をしたという事か…それで自分とラボに対する感情を操作した。)「さぁ、十分だろ?もう死ねよ。殺してやるから……こ、ころし、し、死ね!!」グレンの様子が一変した。口が廻っていない。それどころか目の焦点も合っていない。口の端からは涎が滴れている…。ここまで壊すなんて…いや、こんなモノにしやがって…。絶対に「あの方」は許さない。「解った。お前を解放する方法は一つだけなんだな…。」なら…自分は…「お前をその苦しみから解放してやる!!」スラウスは本気になった。ラボの暗殺部隊で最強とまで言われた男が…殺気を解放すると同時にエレメントの絶対領域(スラウスを中心にした三メートルの魔法陣)を形成、展開。此れにより領域内は無限に水と氷を形成できる。さらに自分に合わせて陣も移動する。完全に本気。完全に相手を抹殺するときだけしか使わない秘儀だ。師匠から習った秘儀。これで戦いの準備は完成した。「さぁ、始めよう…」
距離はおよそ10mぐらいか・・・。まずは武器。次は対策。「来たれ。」軽く手を振るう。すると・・・氷で出来たナイフ、ダガーが現れる。それも一本や二本ではなく、十本ほどが一瞬に。同時にそれ等を身の回りに展開。「水よ、切り裂け。」同じく軽く手を振るう。すると水が何処からともなく現れ、不規則な動きでグレンへと迫る。本当は陣や詠唱が必要な技も「領域」を作り出した事により極限までキャンセルできるのだ。まるでカマイタチだ。速度は早く見切るのは困難であろう・・・・普通の相手には。グレンは動かずに・・・吼えた。「ガァァァァ!」見に迫った水の刃を一気に蒸発させる。そのせいかグレンの身体が陽炎の様に少し歪んで見える。雰囲気もまた変わった。眼は無機質な感じで瞬きも無くなり、口からは涎もなくなっている。息も上がっていたのが落ち着いてきている。(リミッターを外したのか?しかし・・・・手加減はしない。それが一番の道だから・・・。)手の傍にあった氷の短剣を手に取り・・・手の甲目掛けて刺す。「氷剣よ・・・・来たれ。」すると、刃は透き通り彫刻は鮮やかな剣が現れた。「行くよ!」剣を構えグレンへと疾走する。同時に水の刃を放つ。さらに展開したナイフの内二本を自分より先に放つ。グレンは手を振るう。すると炎の柱が目の前に発生する。それにより投擲した二本は蒸発。しかし、水の刃は意志でも有るかのように柱を迂回して背後から迫る。グレンは自分を中心に火の柱を発生させる。水の刃は無効化される。(何!?自爆か?)そんなことが頭によぎる。しかし、そんな訳は無い。恐らくは「身体の紋章」により炎や熱の耐性が上がっているはずだ。恐らくダメージは無いだろう。しかし、スラウスは柱が消える瞬間に懐に入る。そして切り上げる。グレンは半歩下がり回避する。しかし追うように空中のナイフが左右から襲い掛かる。それを両腕で防ぐ。つまり両腕に刺して防いだのだ。一瞬動きが止まる、隙は逃さない。「はぁ!」斬り上がった剣を一気に降ろす!必殺のタイミングだ。これは逃れられないだろう。グレンは苦し紛れに下がる。そこへ剣が胸元を裂く、傷は浅いかもしれない。今度はスラウスの動きが止まってしまう。大きな一撃の後には必ず隙が出来てしまうのだ。グレンは隙を突かずに間合いを開く。そして刺さっている剣を抜き、その血が炎となり剣を形取る。まさにスラウスの「氷剣」の反対だ。刀身は荒々しく炎を纏い、装飾という物が無い。グレンは剣を構え軽く押す。すると炎の濁流が現れスラウスへと襲い掛かる。「ちっ!こっちもやるか!」剣を地面に勢いよく刺す。「吼えろ、氷の絶叫よ。」地面から建物と同じ位の高さは有ろうかという氷柱が生えてくる。「行け、水の怒りよ。」今度は何処からともなく水の洪水が発生する。炎は氷柱により勢いが弱まり、刹那に起きた洪水で消される。洪水は勢いを失わずグレンへと襲い駆る。その影に残ったナイフを全て追わせる。グレンは眼前に迫った洪水を炎の剣で斬る。すると迫る洪水が全て蒸発する。(まじかよ!?・・・このままじゃ相殺しあうだけで一撃は入れられない。一気に決める!)身体の「力」を最大限に引き出す。スラウスの身が淡く青色に発光する。剣を引き抜き。自分の「気」でコーティング。そこでナイフがグレンへと迫る。全てを回避、同時にスラウスへと疾走する。自分も走り、迎え撃つか。またもナイフや洪水で足を止めるか。(どれも無意味さ。相殺か回避されるだけ。だったら待って最速で最強の一撃を入れるのに専念すればいい。)迫る。迫る。距離は近い。グレンが剣を大きく振り被る。迫る。スラウスは左に腰溜めに構える。剣は洋剣だが居合い抜きの用量だ。「喰らえ!この一撃を!!」刹那でグレンへと半歩近ずく。恐らく、これでグレンの反応が一瞬は遅れるはずだ。そして「力」を全て開放。そこにグレンの剣が迫る。一気に抜き放つ!振り下ろされる剣を腕ごと切り裂く。一瞬の間を置いて、切り裂いた腕を今度は切り落とす。ゴトリ。剣を握ったままの腕が落ちる。そして間髪いれずに剣を心臓へ突き刺す。「終わりだ。もういいだろ?」そう言いながら剣を抜く。もう終わったはずだ。腕を切り落とし、心臓を一突きだ。しかし!グレンの切り落とされた腕がスラウスの心臓へ突き刺さる。「なっ!」思わず声が洩れる。油断した。自分のミスだ。深く刺さりすぎた。「腕」はグレンの切り口へと戻り、腕は元通り。意識が薄がる。グレンは興味無さそうに眼をスラウスへと投げやる。そして、その足は隠れているレンファへと向かう。レンファは恐怖のあまり動けなくなっている。心臓が弱くなっている気がする。身体が冷めていく気がする。意識が無くなる。そして・・・・心臓が止まる。スラウスは動かなくなった。「スラウスが・・・・・・死んだ。」僕には力が無い。今では助けてくれる人も死んでしまった。大切な物が無くなった虚脱感。グレン近ずく。死が近付く。どうするか・・・。ふとスラウスを見る。彼は固まっていた。動いてはいなかった・・・。
どうすることができる?闘う・・・力が無い。逃げる・・・その先には死。どうすることができる?レンファは自問自答をしていた。このままでは死ぬ。一瞬で殺される。だが・・・死ぬわけにはいかない。自分には大切な物があるから。先ほど消えた大切な者。その後を追うのか?嫌だ。逃げるのか?嫌だ。闘うのか?・・・・勝てない。諦めるのか?諦めない。なら道は一つだ。闘うのだ。負けは見えている。死は確定している。しかし、この「心」が殺されるわけではない。この「心」を武器に闘う。それが道だ。「負けるけど・・・負けない。勝てないけど・・・勝つ。諦めない。絶対に!」目を見開きグレンを睨む。そしてダガーを引き抜く。「このまま死にはしない。心は死なない!」道を進むのが人だ。・・・・なら突き進むのみ。力がみなぎる感じがした。思いは堅く、大きくなっていく。「この生命体に禁呪の力を確認。抹殺に移行。」無口だったグレンが口を開く。しかし、禁呪とは?そのとき!グレンの後ろから閃光が。白く暖かい、しかし眩しい光が世界を照らした。起き上がる気配。偉大な存在感。「後方より生命活動の再起動を確認。ターゲットを変更。」グレンは気配へと・・・いや、生き返ったスラウスへと疾走した。「え?・・・スラウス?・・・金色・・」スラウスの両目が金色になっていたのだ。「貴方の力に反応してグレン君は言語機能が再起動したようですね。いや・・・・貴方の力?本当に?・・・違いますね。これは禁呪の反応。」「何を・・。スラウス?」レンファの疑問に応えようとした「スラウス」にグレンが襲い掛かる。素早い一撃。疾走からの最速の一撃だ。それを回避。いや、一瞬消えたのだ。また次の瞬間には元の位置にいる。「遅いですね。」勢いを殺せずグレンは少し先に止まった。「貴方も・・・私の所為でこのような姿に。」言葉を無視して今度は炎の壁を「スラウス」へと解き放つグレン。「あの子の意思を継ぎ、直ぐに無に返しましょう。」「スラウス」が手を差し出すと炎は消え、その後ろから不意打ちを狙ったグレンが現れる。「光にて無に還れ。」閃光。次の瞬間にはグレンは消えていた。「すいませんでした。私の過ちで・・・」眼を背ける。その先にはなにも「無い」のに。「スラウス?・・・・なの?」振り返りレンファの元へ行くと、「私はライハと申す者です。この十字架の中に居ました。」胸元の十字架を示す。「え?その・・・・十字架なの?」「まぁ、そんなとこです。」優しい笑顔で応えるライハ。やはりスラウスとは感じが違う。「貴方はこれから先に不幸が待ち受けています。しかし、貴方は光。この子を照らしてあげてください。」「光・・・・」「そろそろ戻る頃合です。・・・・では。」またしても閃光。レンファの前には青き瞳のスラウスが立っていた。「スラウス。今のは?」「・・・・中で見てた。まったく、死んでも世話かけるなんてな。」苦笑しながら十字架を示す。「本当に・・・いい人だ。」「僕は光だからね。これからは僕が照らすよ。」「は?」「見てたんでしょう?」「・・あ〜・・ヨロシク。」いつものやりとり。「さ〜て、帰るか〜。」「どこへ?」「どっか。」二人はいつものように笑っていた。(グレン・・・じゃあな。)ひとり心で呟く。彼等は一歩進む、そして進みだす。旅はまた始まった。・・十字架がボンヤリと輝いていた。