投稿日:2015年01月22日 (木) 04時48分
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第407回 いや応にも
見かけない言葉を見つけた。「いや応にも」である。類似形式に「いやが応にも」がある。自分自身は「いやが応でも」の形で理解し、使っている。また、「いやが上にも」の形もある。「いやが応にも」は「いやが上にも」と「いやが応でも」が混交した形式ではないかと考えられる。共通して「いや」の形式があるけれども、「いやが上にも」と「いやが応でも」では意味が違っていることはよく指摘されているところである。 見つけた言葉は次の記事の中に使われている。
若かりし頃、音楽祭授賞式での様子が「ウソ泣き」と批判されたこともある聖子さん、一つ一つの所作が【いや応にも】注目を集め、場の空気を一変させることがスターの証しとするなら、聖子さんがアイドルとして今も輝き続けていることを再認識させられた。(産経ニュース2015年1月1日【紅白歌合戦】記者回顧 全部持っていった吉高…聖子の涙に「アイドル」再認識) (http://www.sankei.com/premium/print/150101/prm1501010039c.html)
新野直哉著『現代日本語における進行中の変化の研究─「誤用」「気づかない変化」を中心に』(ひつじ書房、2011年)の第1章「“いやがうえにも”の意味変化について─『いやがうえにも盛り上がる』とは?」に「いやがうえにも」の意味変化が論じられている。 「いやがうえにも」の基本的な意味は「なおその上に。さらにますます」であるとする。これが「否応なしに、意識的にそうしよう・そうしたいと思うか否かを問わず」「自然に、おのずと」の意味で、「否が応にも」「否応なしに」と同様の意味で使われるようになってきていると述べている。問題の用例は「いや応にも」の形ではあるが、「いやがうえにも」の新しい意味で理解できる。 あるいは、「いや応にも」は「いやが応にも」が短縮された形式だとして理解する方が素直なのかもしれない。 (2015年1月15日) |
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