投稿日:2014年06月26日 (木) 04時31分
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第378回 とは思います
同僚から聞いて以来、注意して聞いていると、インタビューに対する回答を述べるとき、「〜とは思います」という表現があちらこちらで聞かれることに気が付いた。「〜と思います」というのが無色の表現だとすると、「は」が入った表現は、引用内容を際立たせて強調する勢いを持った表現である。そして、背後に、その内容を否定する気持ちが含まれているという印象を持つ表現である。つまり、「〜とは思います。しかし、必ずしもそうではありません。」といった対比性を帯びている。 先日、聞こえてきたのをメモしておいた、こんな表現がそれに該当する。
せいぜい楽しみたいなとは思っています。
どうして直接的に「(せいぜい)楽しみたいと思っています」と言わないのか。「せいぜい」の用法も気になるところだ。「な」も、過剰だと感じられるほど多用される。「思っています」は「思います」と比べて自分の思いを客観化した形式である。総じて、この用例は、よく言えば自分の気持ちを冷静に分析した感想、悪く言えば冷めた、他人事(ひとごと)のようにみなした感想だと言えるのではないか。 レトリックとして客観を装うというのも分からないではない。インタビューに対して主観を抑えて回答するという姿勢も、必ずしも悪いわけではない。しかし、「〜とは思います」とか「〜とは思っています」のような、「は」を入れた表現を聞くと、なんだかなあ、と嘆きたくなる。 (2014年6月26日) |
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