投稿日:2014年06月19日 (木) 08時22分
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第377回 声を大にする
「声を大にする」というのは慣用句である。したがって、実際に声を大きくしなくても、強調するという態度があれば使用することができる。しかしながら、小さな声であっては意味がない。たいていは「声を大にして」の形で動詞を修飾する用法である。修飾される動詞は「言う」「主張する」「訴える」といった、相手に対して意見等を表明し伝達する意味を表すものである。単に発話するというだけでは使えない。例えば「おしゃべりする」「話す」「談笑する」「語る」などは被修飾語にはなりにくいと考えられる。 自分自身が使った記憶が乏しいので内省ができにくいので、どんな表現があるのか、国会会議録検索システムで検索してみた。 「言う」「叫ぶ」「申し上げる」が多く出てくる。また、「強調する」「警告を発する」「説明する」「要求する」「要望する」「力説する」などもある。珍しい使い方だと思われるのが「今勝間田委員が声を大にして私をなじられますけれども」(昭和34年2月10日、衆議院予算委員会、岸信介国務大臣)という例で、これらは文字通り大きな声を出しているのだろうと想像できる。直前の勝間田清一委員の発言内容は「あなたは総裁としての責任を果すべきである。同時にその上に総理としての責任を果すべきだ。どうしますか。二大政党の話し合いがそこで成立しますか。」のように詰め寄る勢いのものである。 声を大にするというのは声を荒げる、怒気を含んだ声になるというのではない。切実感や緊迫感を伴って事態の実現、成立を願う態度を表しているのである。 (2014年6月19日) |
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