投稿日:2014年01月09日 (木) 03時17分
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整わない表現
「ゲストの方がおいでいただきました」のように首尾がねじれたり、「さあ、ここからどんな展開になるかどうか」のような2か所の疑問表現や、「わたしはこの場面ではダブルプレーを取りにいくでしょうねえ」のような表現は、話し言葉ではよく聞かれる。その場で訂正するのも必要がないくらい、リアルタイムでは不自然さを感じない。 ところが書かれた表現では反省したり内省したりする余裕が出てくるので、変だという気持ちが残ることがある。特に新聞記事にそういう表現を見つけると、校閲はどうなっている? と不審を抱く。 こんな表現があった。
民主党の前原誠司元外相は4日収録のTBS番組で、安倍晋三首相や閣僚の靖国神社参拝に関連し、「何らかの形でA級戦犯を分祀(ぶんし)し、外交問題化にすべきではない」と述べた。(MSN産経ニュース2014.1.4) http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140104/stt14010417320003-n1.htm
ここで「外交問題化にすべきではない」に注目する。変だとの印象を持つ。助詞の「に」を削除して「外交問題化すべきではない」と表現するか、「化」を削除して「外交問題にすべきではない」と表現するか。どちらかにしたほうが適切だ。 「外交問題」自体は動作性の概念を持たない名詞である。「外交問題化」となると動作性の概念を帯びた名詞になる。名詞として振る舞えば「外交問題化が懸念される」「外交問題化を取りざたする」「外交問題化に発展する」といった表現が可能になる。動作性の概念が顕著になると「する」を付けてサ変動詞になる。要するに、「外交問題化」という名詞として用いるか、「外交問題化する」というサ変動詞として用いるか、どちらか一つになる。 このような整わない表現が、校閲を経ていると思われる新聞記事として出てくることに首をかしげるのだが、この例は発言を引用している点に特徴がある。前原元外相の発言を正確に引用したのであれば、文法的な問題はわきにおいて、正しい表現である。発言を多少変形して引用したのであれば、引用ミスである。 発言内容を正確に引用することはもちろん大切なことだが、疑問のある表現だと気づいていれば適切な形式に整えて引用することも大切である。 (2014年1月9日) |
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