投稿日:2013年11月21日 (木) 05時09分
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映り込む
「ひかり」や「たたみ」のように動詞から派生した名詞がある。現象や動作が事物を表している。「片づける」から派生した名詞は「片づけ」だが、これは事物ではなく動作を表す。このように動詞から名詞へという道筋をたどることができる語は多い。 ところが、名詞の形はあるのに、元になっていると考えられる動詞が、なくはないものの、普通に使われているとは思われないものがある。例えば、「いいがかり」の元となった「言いかかる(言いがかる)」や「通りすがり」の元となった「通りすがる」などは、名詞の形で使うのが一般的だ。 こんな表現を見つけた。 **************** 15日、衆院厚生労働委員会で社会保障プログラム法案が強行採決されたとき、「反対、反対」と委員長席にかけ寄る民主党の山井和則元厚労政務官がテレビの中継にしきりに映り込んでいた。 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131116/plc13111607010001-n1.htm[2013/11/16 8:30:22] **************** 「写り込み(映り込み)」は『デジタル大辞泉』に以下のように記述されている。 **************** 1 (写り込み)写真で、滑らかな器物の表面に反射した他の像や光源が、画像として撮影されること。「―を避ける撮り方」 2 テレビ受像器やパソコンのディスプレーなどの画面に室内外の物の像が映っていること。画面が見にくくなる。「液晶モニターは―が少ない」 **************** 説明から察するに、写真、映像といった分野の専門用語ではないかと思う。小型の辞書には登録されていない。それはともかく、「写(映)り込み」は結果として事物等が写(映)っていることを表している。人が意図的に、あるいは意志的にそうするという意味合いは感じられない。 ところが、引用した表現は、結果としてそうなった(映り込んだ)と解釈することもできるが、政務官がテレビ中継の画面に写る(映る)ことをもくろんでそうした、と解釈できないことはない事例だ。 (2013年11月21日) |
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