投稿日:2013年10月17日 (木) 04時38分
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心臓
「心臓が強い」ということを短く「心臓だ」という言い方がかつてあった。辞書によると、「厚かましいこと、ずうずうしいこと、押しが強いことなどの意の、俗な言い方。」(『デジタル大辞泉』)とある。最近は耳にすることがないように感じる。おそらく古い時代の流行り言葉のようなものだったのではないだろうか。子どものころ、母が使ったのを聞いた覚えがある。 谷崎潤一郎『細雪』にその使用例があった。
「年増の女はみんな心臓や。僕の知つてる北の芸者で、これはもう四十以上の老妓やねんけど、東京へ行つて電車に乗つたら、わざと大阪弁で『降りまツせえ』と大きな声で云うて**ねん、そしたらきつと停めてくれはります云ふ女があるねんが」(世界名作全集45 筑摩書房、1960年、上巻 p.135上段)
辞書に書いてあるように、「厚かましい」とか「ずうずうしい」とか、マイナスの評価を伴っている印象もある。しかし、『細雪』での使用例は、気の弱い人には真似のできないような、物おじしない、度胸があるといったプラス評価を伴っているとも感じられる。 あるブログに、見出しだが「かみながら最後まで言うのだって相当な心臓だよね」という例があった。残念ながら筆者のプロフィールは不明である。 http://plaza.rakuten.co.jp/comugicha/diary/201303200000/ 「心臓が強い」の意の「心臓」に対して、「心臓が弱い」と言い、気が弱い、臆病だという意味を「ノミの心臓」という。「厚かましい」とか「ずうずうしい」というのは「心臓に毛が生えている」という表現が当てはまる。 緊張したりすると心臓がドキドキしたりバクバクしたりする。胸の鼓動だ。胸はバクバクしないが、キュンとして胸キュン。中学時代(1962年ごろ)の技術家庭科の先生が「ドキがムネムネ」と言っていた。この表現はトニー谷のギャグだったようだが、「クレヨンしんちゃん」のアニメソング「ユルユルでDE−O!」の歌詞の中にも出て来る。 (2013年10月17日) |
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