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[1547]新・ことばの路地裏 第338回「落語のギャグ」 投稿者:小矢野哲夫

投稿日:2013年09月19日 (木) 08時07分

落語のギャグ

 歩きながらウォークマンで上方落語を聞いている。昔はラジオに聞き入ることが普通にあったが、最近は、なにかをしながら音楽を聴いたり朗読を聞いたりしている。『特選米朝落語全集¢譏Z集』(東芝EMI株式会社)の中に収録されている「焼き塩」。聞いていて、文字の関するギャグが出てくる。「司」という漢字を教えてもらうという場面。巧みな教え方だと感心する。

○「ちょっと、教(おせ)てもらいたいんやがな」 △「何が」 ○「つかさ、ちゅう字がわからんちゅうてんねん」 △「あぁ、わしにそんなこと聞いたかてわからん、魚屋(さかなや)の大将に聞いてみ、あいつなかなか学者や」 ○「魚屋の親父(おやっ)さん」 魚「なんじゃい」 ○「ちょっと、あの字ィ教えてもらいたいんやがな」 魚「なんちゅう字や」 ○「つかさ、ちゅう字がわからん言うてんのや」 魚「つかさ、あぁ、つかさかい。あれはお前、同じくちゅう字を二枚に下ろして、骨付きのほうや」
……えー、まことに、魚屋らしい教え方があったもんでございます。
(落語「焼き塩」桂米朝 平成元年10月17日)

 もう一つは凝っている。当て字にまつわる誤解である。

□「えぇ、あいつがなんやて、置手紙して行(い)たて」 女「そうやがな、あんたが留守やちゅうたらな、手紙読んでもろといてくれ…」 □「あいつこの頃お前、手習いに行て、ちょっと字が書けるようになったら生意気に置手紙やなんて、何をすんのやいな、えぇ。見てみィ、みみずののたくったような字書きやがって。えー、借りた羽織は七(質のこと)に置いた、……何をさらすねん、あいつ。三日だけ、ちゅう約束で貸したったのに、黙って質に置きやがって、なんちゅうことすんねん」
 言うてると、
◎「おう、手紙読んでくれたか」 □「お前はえげつない男やなあ。三日だけちゅうて頼むさかい羽織貸したった、なんでわしに黙って質(ひち)に置いたりすんねん」 ◎「そんなことするかい、返しに来たんやないかい。お前が留守やちゅうさかい、そこの棚の上へ置いた、ああ、その棚の上に乗ってるやろがな」 □「へぇ、あ、ほんにあるなぁ。そやけどお前、これ借りた羽織、七(ひち)に置いたと書いたあるやないかい」 ◎「お前字ィ知らんな、そら『七夕(たなばた)』の『たな』という字やがな」
(落語「焼き塩」桂米朝 平成元年10月17日)

 語ってこその落語だが、付録を参考に文字に記してみた。
(2013年9月19日)



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