投稿日:2013年04月18日 (木) 04時45分
|
第316回 思いきや
古語を使った慣用的な言い回しである。「き」は過去の助動詞で、「や」は疑問を表す係助詞である。直訳すると、「思ったか」であるが、反語的な用法であり、「いや、思わなかった」という意味が含まれている。予想した事柄が、実際には意外な結果であったという場合に使われる。 古語を使っているので、文体的に古い印象を与えるはずだが、実は砕けた感じのスタイルで使われる。 国会会議録検索システムを使って検索してみると、面白いことが分かった。
平成20年4月2日から平成25年4月2日までの間で37件ヒットした。 平成15年4月1日から平成20年4月1日までの間では39件ヒットした。以下、5年を範囲として検索すると、次のような結果となった。 平成10年4月1日から平成15年3月31日まで 19件 平成5年4月1日から平成10年3月31日まで 7件 平成元年4月1日から平成5年3月31日まで 0件 昭和58年4月1日から平成元年3月31日 2件 昭和53年4月1日から昭和58年3月31日まで 1件 昭和48年4月1日から昭和53年3月31日まで 2件 昭和43年4月1日から昭和48年3月31日まで 2件 昭和38年4月1日かわ昭和43年3月31日まで 1件
昭和38年からの25年間で8件。平成元年からの25年で102件。平成も初めの5年間はヒットしないも同然である。平成5年に1件、平成6年に0件、平成7年に1件、平成8年に2件、平成9年と10年に1件ずつというヒット状況である。 このことから、「と思いきや」という慣用的な言い回しは昭和の国会ではほとんど使われなかったが、平成5年から少しずつ使われるようになって、次第に使用数が増えてきていることが分かる。 砕けた感じだという印象は、次の例に示されるだろう。
だから、非常に私の問題意識に合致したとおりのことをやっていただいているんだなと。その分、交番が充実してきているのかな【と思いきや】、交番も平成十一年比で二百九十六件減っているんですね。(衆議院 - 決算行政監視委員会第一分科会 - 2号 平成21年04月21日 秋葉賢也分化員*)
「かな」という形式は独り言でも使われるもので、公的な場面の硬い表現にはなじまないような印象がある。前の文の「やっていただいているんだなと」というのも、硬い表現だとは言えない。日常会話のような印象を受けるのである。これがすべてを物語るわけではないけれど、発言者の年齢も関係しているのではないかと思われる。30歳代から40歳代といった比較的若い議員の発言の中に見受けられるような印象を持つのである。このことは、別に調べてみなければならない。 *秋葉賢也 1962年7月生、自民党衆議院議員 (2013年4月18日) |
|