投稿日:2012年09月20日 (木) 05時33分
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せっせと編んだだよ
「かあさんの歌」という歌がある。この歌は筆者が小学生のころ、名古屋で大学生活を送っていた叔父が帰省した折に歌っていて聞き覚えたと記憶している。1956年の作品だそうだ。歌詞の一節に「(手袋を)せっせと編んだだよ」という表現がある。どこの方言だろうと気になっていた。 筆者の故郷、鳥取県倉吉市の方言でも「行っただ」「飲んだだ」のような言い方がある。共通語では「言ったのだ」「飲んだのだ」のように「のだ文」になるのだが、倉吉市方言では「の」が入らない。過去形だけでなく「行くだ」「飲むだ」のように非過去形にも、「の」を介さず、直接「だ」を付ける。丁寧表現は「行ったです」「飲んだです」「行くです」「飲むです」のようになる。 「かあさんの歌」の歌詞と共通するように思われる。しかし、他の部分の歌詞「もすぐ春だで」のような理由表現「だで」は倉吉方言にはない。 あれこれ調べていると、この歌は窪田聡作詞・作曲ということを知った。窪田さんは1935年、東京の生まれだが、「戦時中、長野県信州新町の実父の実家に疎開」(ウィキペディア)していたそうだ。信州の方言に「編んだだ」のような表現があるらしい。「だで」もそうらしい。窪田さんが幼少期に疎開先で覚えた方言が歌詞に使われているのではないかと推測される。 (2012年9月20日) |
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