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[1472]新・ことばの路地裏 第279回「大正百年」 投稿者:むささびとびのしん

投稿日:2012年08月02日 (木) 05時39分

第279回 大正百年

 1968年は明治百年で賑やかだった。明治の満100歳の誕生日に当たる10月23日には政府主催の記念式典が行われた。この当時、浪人中だった筆者は、明治百年のことをよく覚えている。というのも、大学入試の日本史の問題に明治百年がらみで明治のことや百年の歴史などが出題されるのではないかといったことが受験界の話題になっていたからだ。
 明治は遠くなりにけりという句がある(注)が、明治元年からは144年が過ぎ、明治の最後の年、明治45年からでも100年が過ぎた。ということは、大正元年から数えて今年は満100年に当たるのである。大正元年は明治天皇が崩御した1912年7月30日と同日にスタートした。
 岐阜県の日本大正村というところで大正百年を祝う行事が行われたそうだ。昨年にも四日市市本町通り商店街で大正百年祭という催しがあったらしい。このように、大正百年は明治百年と違って小規模での催しであり、政府が取り組む行事もなかったのではないか。不思議なことである。残念なことでもある。
 大正といえば、大正デモクラシー、大正ロマン、大正モダンといった言葉が思い出される。比較的自由な時代だったのではないかと思われる。足かけ15年という短い期間だったせいだろうか、明治の45年間、昭和の64年間にはさまれて、存在感が乏しいようにも、平成の今日から見て、思われる。
 大正百年という言葉自体が耳目を集めなかった。しかし、確実に今年は大正百年である。そのことを記憶にとどめるためにも、「大正百年」という言葉を記しておこう。
(注)降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男(1931年の作品)
(2012年8月2日)



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