投稿日:2012年07月26日 (木) 05時46分
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第278回 「なるほどね」と「なるほどですね」
相手の発話内容を聞いて同意したり、または事態の推移や展開を見て納得したりするとき、「なるほど」と言う。どうということのない語のように思えるが、使い方には制限があるように思われる。 どことなく上から目線といった空気を感じてしまう。したがって、親子ほどのように、かなりの年齢差がある年下の人にこの語で同意・納得されると違和感を覚えるのである。 「なるほどね」や「なるほどな」の形式は、親しい間柄では問題はないだろう。この印象が「ね」や「な」がない形式にもつきまとうのだろうか。 「なるほどですね」というのは「なるほどね」の丁寧形のように見える。丁寧形だからそれほど親しくない間柄で使われるのだろうか。上から目線的なニュアンスは伴わないだろうか。なんとなく違和感を覚える。「なるほどですね」を「なるほど、そうですね」のはしょり形だと考えれば違和感も薄らぐような気もする。 しかしながら、依然としてすっきりしない。 「なるほど(ね)」は確かに同意や納得を表し、時には感嘆の気持を表すこともある。しかし、同意や納得には程度差があるのではないか。全面的な同意や納得もあるけれど、いったん同意や納得をしておいて、自分の意見や考えを表明するという使い方もある。「なるほどね、君の言うことにも一理ある。しかし、別の考え方もあると思うよ」 このような用法、いわば反論の前置きといった用法があることが、「なるほど」「なるほどね」「なるほどですね」などには潜んでいる。そこに相手が示す同意や納得を額面通りに受け取れない居心地の悪さを感じると言えないだろうか。 (2012年7月26日) |
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