投稿日:2014年12月25日 (木) 06時04分
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むべなるかな
自分自身はほとんど使った記憶がない言葉の一つに「むべなるかな」がある。「さもありなん」について調べた時に、「むべなるかな」も「さもありなん」と似たような状況があるのではないかと思い、調べてみた。例によって『国会会議録検索システム』を利用した。 昭和22年の第1回国会から現在の187回までを対象に調べた。298件301例ヒットした。昭和に175件、平成に123件である。 表現上の特徴を分析した結果、@文副詞的に文頭に使われるタイプ、A文の述語として文末ないし引用部分の述語として使われるタイプ、Bこれに関連して、文の述語の中止の位置に使われるタイプの3つのタイプがあると考えられる。 文頭に使われるタイプは「なるほど」や「確かに」と同じように、文頭に位置して、後続する叙述内容を肯定的に捉えて導いている。例えば次の例がそれである。 むべなるかな、政府のこれまでやつてまいりました政策は、ことごとくまじめな勤労者階級の期待を裏切つてきたのであります。(第1回衆議院本会議、昭和22年12月9日) 次に、引用部分の述語となるタイプは次のような例である。 税金をかけて空港を整備しているわけですから、そこの使用料ということを、これを取るというのはむべなるかな。(第166回衆議院決算行政監視委員会平成19年5月10日) 述語となるタイプには「と思う」「と考える」「という感じ」などの引用部分となる例がある。また、「だ」「であります」「かもしれない」といった形式に続くものもある。これは「もっともだ」「当然だ」といった意味合いである。 今外務大臣がおっしゃったこともむべなるかなと思います。(第166回衆議院予算委員会平成19年2月14日) 中止の位置に現れるタイプは、「むべなるかな」で止めて「こう」「こういうふうに」などの指示語で受けて後に続けるものがある。 (前略)そして選挙で大敗を喫した、これはもう本当に、むべなるかな、こういうふうに思っておるところでございまして、(以下略)(第168回衆議院予算委員会平成19年10月9日) 今回調べてみて分かったのは、文副詞的に文頭に位置して使われる例があるということである。20数例で、決して多い数ではないけれど、今まで知らない用法であった。 (2014年12月25日) |
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