投稿日:2014年12月04日 (木) 04時31分
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「願わくは」と「願わくば」
最近、「年俸制」導入のことが話題になることがある。口頭でこのことに言及するとき、「ねんぼう」と「ねんぽう」の二つの言い方に接する。国語辞典で調べてみると「ねんぼう」とは読まないとか、それは誤りだとか注記してあり、「ねんぽう」が正しいことを知った。これで二つの語形の間で自信なく揺れることがなくなった。 「願わくは」が正しく、「願わくば」は間違いだと指摘されることがある。それにもかかわらず、「願わくば」の形がけっこう使われる。「……ごとくんば」「……べくんば」「さもなくば」といった古い言い方から類推して「願わくんば」のつもりで「願わくば」と言っているのか、「ば」を条件を表す表現と誤解して使っているのか。 「国会会議録検索システム」を使って両者の使用状況を調べてみた。 昭和年間 願わくは 1613件 願わくば 1208件 平成年間 願わくは 297件 願わくば 424件 この数字だけを見ると、昭和では「願わくは」が優勢で平成では「願わくば」が優勢になっている、両形とも平成になって使用頻度が少なくなっている、といえそうである。しかし、こまかく見ると少し複雑である。 昭和22年 願わくは 32件 願わくば 53件 昭和23年 願わくは 34件 願わくば 64件 国会会議録では、当初から「願わくば」の形のほうが多く使われていたことが分かる。これは驚きである。いわゆる誤用の「願わくば」は、かなり以前からあったということになる。 ところで、検索していて面白いことに気が付いた。両形のあいだでゆれがあることは明らかだが、このゆれが個人においても見られることが分かったのである。 町村信孝氏の発言で両形の使用を検索すると、合計36件、37例、ヒットする。初出が平成4年4月26日の「願わくは」で、この形は平成17年8月3日までに19例、使用されている。一方「願わくば」は平成9年11月17日が初出で、平成24年5月22日まで18例使用されている。 平成10年には「願わくは」だけが7例使用されている。平成13年は「願わくは」2例、「願わくば」3例である。平成17年は「願わくは」7例、「願わくば」11例である。とくに面白いのが同じ委員会で両形が出現していることである。平成17年3月22日の沖縄及び北方領土に関する特別委員会での答弁である。平成17年はかなりゆれている。 (2014年12月4日) |
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