投稿日:2014年11月20日 (木) 05時27分
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やぶさかでない
1996年、とんねるずのシングル「やぶさかでない」(作詞:秋元康、作曲・編曲:見岳章)(注)が出た。この中で、各連の終わりに「やぶさかでない」という語が挿入される。連の中での意味は不明と言うしかない。聞く人はこの語をどのように理解していたのだろう。 この「やぶさかでない」という語の理解が『平成25年度国語に関する世論調査』で問われた。本来は「喜んでする」という意味だが、このように理解している人が33.8%だった。一方、「仕方なくする」と理解している人は43.7%だった。筆者は本来の意味を知らず、どちらかといえば、「しないことはない」といった消極的な関わり方として理解していた。「やぶさかではない」と形ではとくにそう理解していた。 地域別でも、年齢別でも「仕方なくする」という意味の理解が多かった。女性より男性のほうがそう理解する割合が高い(47.4%:40.8%)。調査結果で注目されるのは「分からない」という回答が14%あったことである。あまり知られていない言葉だと言える。この回答は、年齢別では40歳代と50歳代が1割未満だったのに対して、70歳以上の20%弱を筆頭に10代後半からと30歳代と60歳代15%前後である。働き盛りの年代の人は他の年代の人より知っている比率が高いといえよう。 国会会議録検索システムで検索してみた。「やぶさかでない」「やぶさかではない」「やぶさかではありません」の合計が、昭和年間で4860件、平成年間で802件ヒットした。簡単には比較できないが、1年間あたりでは昭和で100件超使用され、平成で約30件使用されている。昭和から今日にかけて次第に少なくなってきているという傾向を見てとることができる。 実際の使用例をいくつか見ると、積極的に「喜んでする」という意味より、しないことはない、条件があえばそうする、といった意味が感じられるものもある。これは「ない」という否定表現があるためにマイナスの意味合いが含意されやすいためではないかと考えられる。「全然やぶさかではない」「決してやぶさかではない」といった表現からも積極的に「喜んでする」という姿勢はうかがわれない。 自分自身があまり使わない形式ではあるが、分析してみるにやぶさかでない。 (注)http://j-lyric.net/artist/a003eab/l005d55.html (2014年11月20日) |
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