投稿日:2014年11月13日 (木) 04時35分
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第398回 山陰
山陰地方の「山陰」という語に暗いイメージを持つ人がいることを知った。その根拠、原因はなんだろう。 山陽地方と山陰地方は主に中国地方をほぼ二分している。中国山地を境として県境が設けられていて、中国山地の南側が山陽で北側が山陰である。瀬戸内海側が山陽で日本海側が山陰である。 歴史的には古代の五畿七道の一つとして東海道や東山道、山陽道と並んで山陰道がある。これらの地域名は大局的見地から命名されたものだろう。山陰道には現在の北近畿(京都府北部と兵庫県北部)、鳥取県、島根県が含まれる。 山陰が暗いイメージを伴うとすれば、山陽との対比という視点が思い浮かぶ。山陽が山の、太陽が照らす側、山陰が山の陰になる側。これに陽気な陽と陰気な陰といった身近な語によるイメージの対比が重なる。しかし、このような二分法は必ずしも妥当とはいえない。山陽は特にプラスのイメージで言及されているとはいえない。評価的なイメージとしてはいわば無色である。これに対して山陰には暗いというイメージが伴うのだろう。 『岩波新漢語辞典』の「陰」の項に「@日かげ。かげ。山の北側。川の南側。かげる。くもる。」とあり、「山陰」の例が示してある。これは普通名詞だと思われる。これには「暗い」というマイナス評価のイメージはない。同じ辞書に「C易で、地・月・女・静など、相対的に消極的・受動的なものを表す語。マイナス。」とある。これがマイナスの評価的イメージと結合しているものと思われる。 山陰自体にはマイナスイメージは伴わないにも関わらず、これに含まれる陰の字の意味Cが表に出て受け止められるに至ったのだと推察できる。 筆者は山陰地方の鳥取県の出身だが、山陰の語にマイナスのイメージを持っていない。鳥取県民にとって山陰の語は山陰本線、山陰中央テレビ、山陰放送、山陰合同銀行といった固有名詞に含まれて知られているように、評価的に無色の語であろう。それを外部の人が勝手に評価付けをしているものと考えたい。 (2014年11月13日) |
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