投稿日:2014年07月03日 (木) 04時43分
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アクセント
生まれ育った鳥取県倉吉市はアクセントの点で東京式アクセントの地域に分類される。ただし、東京のアクセントではない。京阪式アクセントとは明らかに異なっている。 小学校の低学年のころから唱えてきた掛け算九九の一つひとつは語だろうか、句だろうか。はたまた文だろうか。語でないことは明らかだ。というのは、例えば6×5=30という式を「ロクゴサンジュー」と唱える。この時、クとサにアクセント核がある。つまり、ゴとンの部分で音が下がる。語にはアクセント核が一つあるか、一つもないかのどちらかであり、アクセント核が2つ存在することはない。「ロクゴサンジュー」にはアクセント核が2つあるので、語ではないということになる。「ロクゴ」と「サンジュー」の2語が結合した句と考えられる。句が独立して表現されていると考えればよい。 しかし、ロクゴサンジューには6掛ける5は30だ、という文相当の意味が含まれているから文のような句だと考えることもできる。 九九はインイチガイチに始まってククハチジューイチに至るまで、一の段から二の段、次いで三の段のように順番に唱えて覚えた。各段は全体として、平板ではあるがイントネーションのような音調が伴っている。句としてのアクセント、段全体のイントネーションは長年変わらず唱えている。 秋永一枝さんの過去の論文(「日本語の発音─イントネーションなど」『講座日本語教育』第2分冊、早稲田大学語学教育研究所、1966年)を読んでいて、アクセントが自分のものと異なっていることを知った。秋永さんが「かけ算口調」と仮称している記述の中に「ニニンガシ」があった。これのアクセントが句頭のニと句末のシにアクセント核があることを示していた。これには驚いた。東京人は(秋永さんは東京は両国の生まれ)そう唱えるんだ。筆者は句頭のニを低く、2拍目のニを高く発音する。ニサンガロク、ニシガハチ、ニゴジューは同じだった。 今さら変えることもないけれど、還暦を過ぎるまで東京のアクセントを知らずに生きてきた。このような九九は人前で唱えることがないから知らないままで過ぎてきたのだろう。 (2014年7月3日) |
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