投稿日:2014年05月01日 (木) 05時13分
|
回転寿司
大きな辞書には探す語が必ず出てくると信じている人がいるかもしれないが、決してそんなことはない。辞書が発行された年以後に発生した語は当然ながら登録されていない。ちなみに、回転寿司は『日本国語大辞典』第4巻(1973年7月1日第一版第一刷発行)には載っていない。かつて、「過疎」の語を調べようと国語辞典を調べたが出ていなかったといって苦情を述べる記事を読んだことがある。 回転寿司という語が『三省堂国語辞典』に載ったのは2008年1月10日発行の第6版からである。研究社『新和英大辞典』第5版(2003年7月発行)には「回転」の小見出しとして「回転寿司 a conveyor belt sushi bar」と出ている。 回転寿司の形態は1958年に初めて大阪に登場したそうだ。しかし、回転寿司という用語はまだできていなかった。形態と呼称が全国に普及するのは1990年代末期以降かと思われる。 それはさておき、辞書の見出しには「かいてんずし」のように濁音化した形が載っている。この文章をここまで読んできた方もおそらく濁音化して「かいてんずし」と黙読しているだろう。 ところが、表記の面では「回転すし」と書いてある店が多いと、塩田雄大さんが書いている。(『放送研究と調査』2012年11月号「ことば言葉コトバ」欄、p.15「『回転すし』から、思うこと。」)また、飯間浩明さんも、『辞書に載る言葉はどこから探してくるのか?』(携書、2013年)の中で、「酢たこ」「真たこ」「新巻さけ」「銀さけ」「ズワイかに」「たらばかに」などのように、濁点のない表示が多いと観察し、「どうも、濁点がないのは、あくまで文字の上だけのことのようです。」(p.68)と述べている。先日、晩ご飯を食べに入った店で季節のもの「目には青葉山ほととぎす初鰹」の初鰹を食べた。メニューには「初カツオたたき」「初カツオ塩たたき」などとカツオが清音で書かれていたが、声に出して注文するときには「はつがつおしおたたき」と発音した。 先日買った豆腐の名前が「グラサンドーフ」とカタカナで表示してあった。しかも連濁を生じていた。めずらしいと言うべきか。 (2014年5月1日) |
|