投稿日:2014年04月17日 (木) 05時42分
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するようにしてください
小学校高学年のころの思い出である。校内放送で放送部員が児童を呼び出すときに「〇〇さん、職員室に来るようにしてください」という表現を使っていた。これは定型化していると思われるくらい頻繁に使われていた。その都度(というのは大げさだが)「行くように努力しさえすればいいんだな。結果として行かなくてもいいんだな」と屁理屈を心の中でつぶやいていた。「下校時間になりました。帰るようにしてください」といった放送もあったように覚えている。 最近、森山卓郎著「『ようにする』命令形の文と『ように』型指示文」(『日本語学』2014年4月号、vol.33-4)という論文を読んだ。これによると、次のように指摘されている。
「ようにする」命令形の文は、「ように」節の状況を一つの状況のタイプとしてとりあげ、その実現を要求する命令文である。(p.48)
このことから、発話時に限定された現場性、緊急性を持つ「行きなさい」「行ってください」といった命令文とは違って、「脱現場性」(森山の用語)の命令文だということになる。子どもなりの屁理屈もあながち間違っているとは言えない。とは言え、このような表現が使われたのは、婉曲的な表現にして強制的なニュアンスを抑制する効果があると考えられる。 放送部員が教員の代わりに指示をしているということを考慮に入れると、児童の口からは「職員室に来なさい」「職員室に来てください」などの直接的な命令文は使いにくいと思われる。教員が直接放送するなら、高圧的、威圧的な響きを持つ「職員室に来なさい」「帰りなさい」といった形式が使われるだろう。 (2014年4月17日) |
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