投稿日:2013年05月02日 (木) 04時41分
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なかれ
文章を読んでいて時々古風な言い方を目にする。「なかれ」がその一つだ。文法的には形容詞「なし」の命令形と説明され、してはいけない、するな、という意味を表す。動詞について「するなかれ」「することなかれ」の形で使われる。 与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」はよく知られているだろう。 国会会議録検索システムで「なかれ」の形を検索してみた。平成20年4月19日から平成25年4月19日の間で110件(1件のヒットに複数例出現するものもあるので実数はもう少し多い)ヒットした。この中には「多かれ少なかれ」のような無関係のものが20件含まれている。慣用句化した「事なかれ主義」のようなものが31例あった。動詞についたものは64例あった。 動詞についたもののうち、漢籍から引用した語句やことわざに含まれているものがかなりある。中でも論語の学而の一節「過ちては改むるにはばかることなかれ」(類似形式を含む)が最も多く、31例あった。普通の動詞では「言う(こと)なかれ」「急ぐことなかれ」「憂う(る)なかれ」「おごることなかれ」などがあるが、最も多かったのは「驚く(こと)なかれ」で13例あった。実態が予想外であることを述べる場合に使われている。 「動詞+なかれ」の形は、一連の表現の中では挿入句のようにして使われる。現代語に言い換えにくい箇所で使われていると感じられ、一定の表現効果がある。 (2013年5月2日) |
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