投稿日:2013年04月25日 (木) 04時34分
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おつくりなったもの
金子みすゞの「みんなを好きに」という作品に、表題のような表現が2箇所出てくる。 「かあさまがおつくりなったもの。」 「神さまがおつくりなったもの。」 共通語の文法規則では「おつくりになった」と表現するところである。助詞の「に」が脱落している。これは誤用なのだろうか、山口県仙崎の方言なのだろうか。ずっと以前から気になっている。しかし、まだうまく説明できないでいる。 鳥取県倉吉市の方言で、「つくる」の尊敬表現に「つくんなる」という形式がある。これは「つくりなる」が音変化したもので、動詞の連用形に尊敬の補助動詞「なる」を付けたものである。この場合には助詞の「に」は不要である。しかし、尊敬の接頭辞「お」は付かない。 原文を、「おつくりになった」を基底として、「に」が撥音便化し、さらに省略されたものと考えることは可能だろうか。他の箇所で「何でもかんでもみいんな。」という表現がある。「みんな」ではなく「みいんな」。話し言葉として書かれているように思われる。そうすると、問題の箇所も、書き言葉による決まりを反映したものではなく、話し言葉を表しているのではないかと考えられる。そうすると、さきほどの仮定が現実味を帯びてくるのではないだろうか。 金子みすゞが2箇所も間違うはずがないという前提での推測である。 (2013年4月25日) |
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