投稿日:2013年02月21日 (木) 05時20分
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第308回 レゾン・デートル(raison d'être) 懐かしい言葉に出会った。
モテないから反社会的行為に走るというのはあまりにも短絡的な発想だ。だが、モテるか、モテないかは、特に男性にとって、「レゾン・デートル(存在価値)」に関わる一大事のようである。(精神科女医のつぶやき 片田珠美(23)「世の『非モテ男』に捧ぐ」) http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130214/wlf13021412420023-n1.htm
25年以上前、元同僚(たぶん昭和4年生まれ)がよく口にしていた。聞き覚えているのは、長音化した「レーゾン・デートル」である。使うのはきまって組織の存在価値、存在意義という意味であった。あまり認知されない組織に身を置いていて、権力からの抑圧や無視の危機にさらされているといった状況を踏まえていた。 フランス語起源。‘raison d'être’。‘être’が「存在」で、‘raison’が「理由」。直訳すると存在理由、ということになる。 筆者が知っているのは、「モテるか、モテないか」といった事柄が男性のレゾン・デートルであるというような軟弱な使い方ではなかった。 このレゾン・デートルという言葉は四半世紀の間、耳にしたことがないと言ってもよい。ある世代、たとえば、全共闘世代までの、インテリゲンチャ(これはロシア語が起源だそうだ)の流行り言葉だったように思う。筆者自身は世代の点では全共闘世代に属するものであるが、この言葉は理解語彙であり、決して使うことはなかった。 記事の筆者の片田珠美さんは1961年生まれの精神科医。まさかこんな文脈でレゾン・デートルに再会するとは思ってもみなかった。 (2013年2月21日) |
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