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[1509]新・ことばの路地裏 第307回「リッチな容貌」 投稿者:小矢野哲夫

投稿日:2013年02月14日 (木) 04時44分

第307回 リッチな容貌

 芥川龍之介の『文芸的な、あまりに文芸的な』を読んでいて偶然に見つけた。志賀直哉の「彼と六つ上の女」(明治43年)の結末部分が引用されている。「彼と六つ上の女」を読んでみた。約2800字、400字詰原稿用紙に換算して7枚程度の短編である。
 「リッチな」という形容詞が「容貌」を修飾していることに対する違和感があったのだ。
 『デジタル大辞泉』を調べてみると、こんなふうに記述されている。

   1 金銭があって物質的に恵まれているさま。裕福なさま。「―な生活」
   2 料理などの内容が豊富で、充実しているさま。食物、料理の味わいや香りが豊かで濃いさま。「―な味のワイン」

 「裕福だ」「金持ちだ」「充実している」といった訳語がぴったりすると感じる。しかし、「リッチな容貌」というのはどうだろう? 「リッチな容姿」という表現がインターネットの検索でヒットしたが、これは化粧や着る物に裕福感があるといった意味だろう。「リッチな容貌」にも同様の解釈をすることは可能かもしれない。しかし、原文はこうである。

   煙管(きせる)は女持でも昔物で今の男持よりも太く、ガツシリした拵(こしら)へだつた。吸口の方に玉藻(たまも)の前(まへ)が檜扇(ひあふぎ)を翳(かざ)して居る所が象眼(ざうがん)になつてゐる。……彼は其の鮮(あざやか)な細工に暫く見惚(みと)れて居た。そして、身長の高い、眼の大きい、鼻の高い、美しいと云ふより総(すべ)てがリツチな容貌をした女には如何にもこれが似合ひさうに思つた。――

 身長が高いこと、眼が大きいこと、鼻が高いこと、すなわち容貌が大作りだという意味合いであることがうかがえる。この作品が書かれた明治末期において、外来語としての「リッチ」がどのように使われていたのは未詳だが、経済的な意味で使われているのでないことは明らかだ。「背が高く、目が大きく、かつ鼻が高い」と言えば美人の要素を含んでいるようにも思われるけれども、「美しいと云ふより総てがリツチな容貌」と表現されているように、美しいと言っているのではない。
 経済的な意味での「リッチ」には羨望の気持が含まれているように感じられるけれども、大作りであることを評価した「リッチ」にはそのような意味合いを感じることができない。
 百年前の日本語の一端を示している用例として記憶に留めておこう。
(2013年2月14日)



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