投稿日:2012年11月01日 (木) 04時52分
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御意
10月18日に始まった木曜ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系、中園ミホ脚本)を見ていて驚いた。もはや古語だと思っていた語が使われていたのである。「御意」。 『日本国語大辞典』を引いてみると、鎌倉時代、江戸時代の語だと分かる。用法は3つに分類され、古い順に@「相手を敬ってその考えや気持をいう語。お考え。おぼしめし。みこころ。」、A「主君や貴人などの仰せ。おさしず。ご命令。」、B「(「御意のとおり」の意から)目上の人の意見や質問などにたいして、同意を示したり肯定したりするのに用いる。転じて、感動詞的にも用いる。ごもっとも。そのとおり。」とされている。Bの用例として江戸時代の噺本の「御意でござります」と森鴎外の『最後の一句』の「御意でござりまする」があがっている。 『ドクターX』の第1話で、久保院長の「彼以外でも手があいてる者は見学してください」との指示に対して、隣に並ぶ鳥居外科部長が院長に顔を向け、頭を下げて「御意承りました」と応じ、次いで寺山事務長と半田事務次長もともに顔を院長に向け頭を下げながら「御意」と答える場面がある。白い巨塔と言われる大学病院の権力構造を象徴している。 『新潮文庫の100冊』を検索すると、『国盗り物語』『山椒大夫・高瀬舟』『焼跡のイエス・**懐胎』『放浪記』『羅生門・鼻』にBの用法の「御意」の用例が合計16例見られるが、感動詞的用法は『国盗り物語』に次の1例があるだけである。 ************************* 義竜は待ちかねたように、 「おう、はやばやとよう来た。いま鷺山にいる佐久間七郎左とそちとは同郷のうまれであったな」 「おおせのとおりで」 「顔見知りか」 「御意」 「さればたばかって、七郎左をこの稲葉山城下につれてこい。事情はこうじゃ」 と、お勝騒動の一件を話した。 ************************* さて、この古語然とした「御意」、ドラマの第2話でも冒頭から「御意承りました」「御意」と連発された。日常会話ではまず使われない表現であるにもかかわらず、大学病院という特殊ともいえる環境で頻繁に使用させることで、流行語にしたいといった目的でもあるのだろうか。 (2012年11月1日) |
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