投稿日:2012年05月03日 (木) 05時47分
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第266回 マスト
お好み焼きをめぐる大阪人の論争として、こんな記述があった。 具や食べ方も「ウチはちくわが必須」「おれは肉よりネギ多め」「私は焼きそばとエビがスキやねん」「やっぱりご飯と一緒にがマストやろ」などと多岐にわたる。(都会生活研究プロジェクト[大阪チーム]『大阪おかんルール』2012年3月20日、(株)中経出版、p.76) この中のマストは英語の法助動詞‘must’に由来する。初めて見る語だ。 法助動詞は話し手の気持ちを表す文法形式で、日本語では「にちがいない」「なければならない」「かもしれない」「べきだ」といった、話し手の認識や評価を表す形式が対応する。しかし、これらの形式は基本的に自立用法を持たない。それにもかかわらず、マストが自立語のような振る舞いをしている。 自立語でない形式が自立語として使用されることはまれではない。接尾語の「らしい」が「らしいプレー」とか「らしくない」のように形容詞として使用されることがある。比較の助詞「より」が程度副詞として「より速く、より高く、より強く」のように使われる。また、文脈に依存するが、「試合が流れるかもしれないね」「かもね」のような「かもね」の用法もある。さらに、「べからず集」のように語の一部となっている場合もある。 さて、自立形式となったマストは「必須」とか「欠かせない」といった意味で使われている。インターネットで検索すると「マストアイテム」「マストブック(必読書)「マストな一品」という使い方もある。 (2012年5月3日) |
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