投稿日:2012年03月29日 (木) 05時43分
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サンキューとベリーマッチ
英語の外来語「サンキュー」はよく知られているように“Thank you.”に由来する。そして、感謝の気持ちが大きいことを表すとき、“Thank you, very much.”と「ベリーマッチ」を付け加える。外来語のサンキューは単独で使うこともあるが、ベリーマッチは必ずサンキューのあとに付けて使う。 藤本義一さんがかつて面白いことを書いていた。 サンキュー』というのは東京ですね。サンキュー、ノーサンキューで話が決まっていく。確かにビジネス・ライクにいくわね。『ありがとうございます』『いや、結構でございます』とね。 大阪の場合は、『サンキュー・ベリマッチ』の『ベリマッチ』で勝負している。『大いに』が訛って『おおきに』になった(注)。つまり、『おおきに、おおきに』というのは、サンキューもノーサンキューも、『ベリマッチ』ですからね。ノーサンキューの場合は、『おおきに、考えときま』で止める。『す』まで言ってないから、『考えときま』といった時には『ノーサンキュー』なんです。(『週間本33 藤本義一 サンキューとベリマッチ』朝日出版社、1985年5月) 「おおきに」が下に「ありがとうございます」を付けて一体となって使うことを基本とするのだが、近畿方言では、本体の感謝表現を省略して、程度表現だけで感謝表現が成り立っていることになる。英語では“very much”を単独で使うことはまず決してないと思われるが、その訳語に対応する「おおきに」は単独で感謝表現の機能を果たしているのである。 (注)「大いに」が訛って「おおきに」になった、という説明は正確ではない。正しくは、「おおきなり」という形容動詞があり、連体形「おおきな」、連用形「おおきに」という二つの活用形が現在に残っている。「おおきな」は連体詞、「おおきに」は副詞ということになる。「おおいに」は「おおいなり」という形容詞の連用形から派生した副詞である。 (2012年3月29日) |
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