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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 198
内容 「ファイアーウォールを突破されたのか?」
「そのようだ。管理課が真っ青になっていた」
「あらら」
 呆れた声が間の手を入れる。
「あるんだな、現実にそんなこと……」
「データも流失したのか?」
「恐らくな。まだ特定は出来ていないようだが」
「最悪だな」
「ああ」
 職員達の声が途切れることはない。
(データ流失? ファイアーウォールだって?)
 はて?と、ボブは足を止める。
(何だ?)
 思わずじっと、噂話に興じる職員達を見つめる。視線を感じたのか、職員達は怪訝な表情をしてボブを見遣った。
「あの、何か?」
 略式ではあるが、星間軍のユニフォームを着た精悍な男に睨まれて、声には微かだが、怯えが混じっていた。
「いや。……何があったのかと思ってな」
[234] 2007/03/09/(Fri) 23:27:50

名前 MUTUMI
題名 197
内容  携帯端末を胸ポケットに仕舞い、ボブは温くなったコーヒーを啜った。疲れていた頭に、苦味が染み入る。若干朦朧としていた思考がすっきりとし、少しだけ眠気と疲れが吹き飛んだ。
 残りのコーヒーをほとんど一気に飲み込み、コップを片手でぐしゃりと潰す。ダストボックスに向かって放り投げると、放物線を描きコップの残骸は、そこへ吸い込まれて行った。
「……さて、戻るか」
 呟き、ゆっくりと歩き出す。休憩コーナーを抜け、本館の廊下へと達すると、五月蝿いぐらいにザワザワとした気配に満ちていた。
(何だ? まだバタバタしているのか? 何を慌てているのだか)
 多少呆れつつも、機構職員の側をすれ違う。すると、
「ありえないだろ、それ」
「だけど現実らしい」
「本当にダウンしたようだぞ」
「どうなっているんだ?」
 という囁きが耳に入って来た。
(ん? ダウン?)
 聞くともなしに耳をそばだて、会話を拾う。
[233] 2007/03/07/(Wed) 17:38:31

名前 MUTUMI
題名 196
内容 「そうか」
”ええ、でも……本当に何か、どこか引っかかる”
「お前の杞憂は覚えておこう。桜花も釈然としていなかったしな」
”へえ、隊長も?”
「ああ。俺も似たような印象は持っている。恐らくこちらが引き摺られる様に動いているからなのだろうが……」
”後手後手ですからねー”
 リックは軽く肩を竦める。
”先手にまわれる様に、ちょっと本腰を入れて頑張ってみます”
「頼む」
 ボブのどこか切実な響きのこもった言葉に、軽く敬礼が返され、通信はリックの側から切られた。暗くなった受信画面を見つめ、ボブが囁く。
「信用しているぞ、【03】」
 
[232] 2007/03/06/(Tue) 17:15:50

名前 MUTUMI
題名 195
内容 ”【02】……杞憂だといいんですが”
「どうした?」
”どことなく誰かに、いえ、何らかの意図に誘導されているような気がしませんか?”
「……」
”どうも空気がいつもと違うんですよ”
「勘か?」
”んー、そうとも言えるし、言えないような”
 リックは曖昧な表情を浮かべる。
「はっきりしないな」
”仕方ないですよ。自信のある話じゃないんですから”
[231] 2007/03/02/(Fri) 22:16:12

名前 MUTUMI
題名 194
内容 「逐次報告を頼む。どうも今回は、時間との勝負のような気がする」
”時間ですか?”
「ああ。星間中央警察も頼りにならないし、……嫌な感じだ」
”警察の内通者は絞り込めたんですか?”
「生憎まだだ。報告は来ていない」
”そうですか”
 難しい顔をしてリックは考え込む。
[230] 2007/03/01/(Thu) 20:08:45

名前 MUTUMI
題名 193
内容  一矢が大物なのか、友人達が大物なのか、判断に迷う所だ。
 そんなどうでもいい事をつらつらと考えていたボブは、そういえばと思い出す。
「【04】の調査はどうなっている?」
”進展なしです。強いてあったといえば、辺境惑星の独立型のデータベースにも何も残っていない、という事が判ったというぐらいで……”
「未だネロ・ストークと名乗っている男の正体は不明か」
 ギルガッソーに属し、その名で活動している男の顔写真を思い出し、ボブは唸る。
(何も出ないか。こうなると、調べる方向性が間違っているとしか思えん。生活情報からは諦めるべきか)
「【03】」
”はい?”
「ストーク連隊に、その男が関わっている可能性がある。いや、今となってはその可能性の方が大きい。何にしろ関連事項が多過ぎる」
”確かに”
 名前に物証、アジトに残されていた本物の勲章ときては、関連付けるなという方が無理だ。
「【04】達も、ストーク連隊の調査に回せ。連隊長の周辺を徹底的に洗ってみてくれ」
”了解”
[228] 2007/03/01/(Thu) 00:36:46

名前 MUTUMI
題名 お知らせ
内容 187修正。
[229] 2007/03/01/(Thu) 00:45:47

名前 MUTUMI
題名 192
内容 ”他のは碌なものじゃありませんよ”
「まあな」
 その他の面々が、それこそ暗黒街の顔役だとか、ギャングの親玉だとか、有名海賊の妾だとか、どうなんだそれは?というような輩ばかりなのだ。よくもまあ付き合っていられると、常々ボブは思っている。
[227] 2007/02/27/(Tue) 18:18:04

名前 MUTUMI
題名 191
内容  彼らと一矢の間には、一種独特な線引きがあり、善悪では判断しきれないシンパシーがあるのだろう。
 その辺りについては、ボブもリックも関与出来ないし、一矢自身踏み込ませない。だから二人はその黒い繋がりを知ってはいても、黙って傍観するしかなかった。
「まあ情報屋の彼は、人脈の中でも比較的まともな部類に入るし、実際役に立っているし、そう目くじらをたてる事もないだろう」
”……彼は、ね”
 リックは呟き、どっぷりと重い溜め息を吐き出した。
[226] 2007/02/25/(Sun) 19:03:57

名前 MUTUMI
題名 190
内容 ”……そ、ですね”
 リックも微妙な顔をして相槌を打つ。
 二人とも一矢にそういった人脈、裏世界に通じる、或いは裏世界そのものに携わる人脈がある事は、知っている。
 一矢の友人達の一部が、何故か何時の間にかそういう位置に納まってしまっていたのだ。彼らは大概身を持ち崩してそこ迄落ちた。戦後の混乱期を、真っ当な生き方でくぐり抜ける事が出来なかったのだ。
 だからといって、一矢との友人関係が崩れた訳ではなく、一矢が無役だった時代も、今の様に取り締まる側に回った時代になっても、そこに友情関係は成立している。ボブやリックからすれば、摩訶不思議な状態としか言い様がない。
[225] 2007/02/24/(Sat) 23:52:45

名前 MUTUMI
題名 189
内容 ”了解”
 リックは端的に頷く。
”そういえば桜花の姿が見えませんが……”
 きょろきょろと、映像のリックが辺りを見回す。常ならば、一矢の声が聞こえて来たり、後ろ姿がチラチラと見えたりするものだが、今回はそんな素振りもない。
「桜花ならば、先程ヒュードラに発った」
”ヒュードラ? ああ、子飼いの情報屋ですか?”
 リックの疑問に、ボブは軽く首を縦に振る。
「彼なら何か知っているかも、と言ってな」
”裏人脈フル活用ですね”
「そうだな」
 苦笑と共にボブは肩を竦める。
「あまり誉められたものではないがな」
[224] 2007/02/23/(Fri) 20:50:27






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