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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 47
内容  新式のドアホンならカメラやマイクがあり、小さな画面越しに会話がなされるのだが、このビルに設置されている物は生憎と旧式で、中からはウンともスンとも言わなかった。メイファーは片耳をドアにピタリと寄せる。
(音なし)
 確認しながら、再度呼びかけた。
「もしもしー? 誰もいないんですかー?」
 叫びつつ反応を待つ。ビルの中からは相変わらず物音一つもしなかった。
(外れかな?)
 じっと耳を澄ます。ふと、ジジッと小さな微かな作動音が聞こえた。
(え?)
 目を見開いて左右を確認すると、木陰に隠された警備カメラを発見する。街路樹に埋没する様にそれはあった。
 警備カメラ自体は珍しい物ではない。どこの家庭でも保安の為に使っている物だ。だがそれが隠された様に設置されているとなると、話は全く違って来る。
(見られてる!)
 理解した途端、穏やかな方法をメイファーは放棄した。レーザー銃を引き抜くと、ドアの開閉をコントロールするパネルに向かって発射した。パネルは呆気無く破壊され、閉ざされていた扉が一気に開く。
[68] 2005/09/18/(Sun) 16:33:04

名前 MUTUMI
題名 46
内容  二人が今いるのは、ネロ・ストークの潜伏先と思われるビルの前だ。桜花部隊からの情報を元に、ディアーナ星全域で一斉捜査を行っていた。
 このビルの担当はメイファーとテリーだが、近くの別の場所にはロン達もいる。ロン達もまたメイファー達と同じく、潜伏先と思われるビルへの捜査を行っているはずだった。
 ディアーナ警察からの情報漏洩を恐れて、星間中央警察は自分達だけで捜査を行っていた。そのため、元々少ないメンバーは多大な人手不足に陥っている。桜花部隊から人手を割いてもらう事も出来たのだが、難色をしめす者が多かった為、その案は流れている。やはり警察には警察の面子があるようだ。
 メイファーは時刻を確認すると、テリーに約束した通り5分後に、ビルの側壁にあった控えめなドアホンを押した。旧式のドアホンがジリリンと音をたてる。
「すみませーん。ご在宅ですかー?」
 いかにも人畜無害な声をメイファーが発する。
[67] 2005/09/18/(Sun) 13:40:53

名前 MUTUMI
題名 45
内容  シトシトと降る雨水が雫となって落ちる。特殊加工されたスーツの表面を水滴がコロコロと転がっていた。
 メイファーやテリーが着ている星間中央警察の制服は、星間軍で使用されている軍服と同じ素材で出来ており、微弱のレーザーや弱い衝撃ならば、着ている本人が気付く事もなく、弾いたり吸収してしまう。水もやはり弾き、土砂降りでもない限り制服がずぶ濡れになる事はなかった。
「服は水を弾くけど、髪の毛もどうにかして欲しいわよね」
 濡れた前髪をひとつまみし、メイファーが鬱陶しそうに左右に流す。テリーは苦笑を浮かべその様子を見ていた。
「制帽でも作ってもらえよ」
「うちってセンスないから野球帽が制服のオプションになったら、どうするのよ」
 あながちあり得なくもない予想だったので、テリーは吹き出すのを堪えるのに苦労した。
「……ぶっ……。メイファ、今から強制捜査って時にそういう冗談は言うなよー。緊張感が抜けまくりで困るだろ」
「冗談言ってるつもりはないんだけど……」
 小声で反論し、メイファーは唇に人指し指を当てた。
「しー。そろそろレッドゾーンよ」
 一般的な監視装置、警備カメラの範囲に入りそうな事をテリーに知らせる。テリーはピタリと口を閉じた。
「正面と裏、どっちに行く?」
「ああ、俺は裏でいいよ。メイファが正面の方が、相手は油断するから」
「わかった。じゃあ5分後にドアベルを鳴らすから」
「了解。相手はギルガッソーだ。十分注意しろよ」
「そっちもね」
 メイファーとテリーは、古びたビルを前に左右に散って行った。
[66] 2005/09/16/(Fri) 14:28:55

名前 MUTUMI
題名 44
内容 「ならいいわ」
 かなり直接的な方法でテリーの揶揄を封じ込めて、メイファーは満足気に微笑する。
「女の子の体型は永遠の秘密なのよー」
 とっくの昔に女の子と呼ばれる年代を過ぎているだろうがと、テリーは思ったが、防衛意識が働いたのかそれを口にする事はなかった。
「まあ、軽口はこの際おいといて……メイファ、時間だ」
 腕時計の時刻を確認しながら、テリーが囁く。
「じゃあ、行きましょうか」
 左脇のホルスターに格納されているレーザー銃の、安全装置が外れている事を確認し、メイファーはエアカーのドアを開けた。テリーも同様にエアカーから降りて来る。二人は傘もささず、雨避けシールドも展開せず、ゆっくりと目的地に向かって歩き出した。
[65] 2005/09/15/(Thu) 22:18:04

名前 MUTUMI
題名 43
内容  一週間後。
 惑星ディアーナ、サンリーグ地区では、朝から雨が降っていた。ポタポタと水滴がエアカーのウインドウを濡らす。ザーザーと音を発てて流れる雨は、一向に止む気配がなかった。
「雨、止まないわね」
 じーっと、真っ黒に近い曇天を見上げてメイファーが呟く。エアカーのハンドルに肘を乗せ、テリーがのんびりと返した。
「天気予報だと今日一日、ずっとこんな感じらしいぜ。夕方は土砂降り傾向だってさ」
「ふうん」
 相槌を打ちながら、メイファーはごそごそとポケットを探る。本日のメイファーの格好は内勤ではないので、ラフな服装ではなく、きちんとしたパンツスーツだった。とはいっても制服なので、デザインはテリーと同様で、どこか野暮ったさが拭えない。黒に近い紺色の制服は特殊な生地で出来ており、危険を伴う時に着用される事が多かった。
「どうした?」
「ん、手錠どこに入れたかなと思って」
「……」
 メイファーの言葉にガクリとテリーが項垂れる。
「お前な……。それはちょっと酷いぞ」
「五月蝿い。キーをなくすテリーよりは、ましってものよ」
「なっ!?」
 前回の捜査時に手錠の解除キーを紛失し、きっちり始末書を書かされたテリーが、パクパクと口を開ける。
「私はまだなくしてないもん。……ほら、あった!」
 ズボンのバックポケットから、メイファーが黒色の二つのリングを取り出す。
「お尻に敷いてたのか〜」
 にぱっとした顔でメイファーは宣った。
「……なあ、普通は違和感で気付かないか? よっぽど尻の肉が厚っ!?」
 皆まで言わない内に、腕を抓られる。
「な〜に〜か〜言った〜?」
「……や、何でもないよ。うん。何でもないから」
 抓られた部分を擦り、テリーが涙目で訴える。そこには刑事の威厳は微塵もなかった。
[64] 2005/09/14/(Wed) 19:46:49

名前 MUTUMI
題名 42
内容 「世界は安寧とし、過去の痛みを忘れる……」
 男は再び眼下に視線を落とすと、薄い唇を歪めた。
「だからこそ思い出せ。……恐怖と言う名の鎖を」
 囁きは風に乗って拡散する。男が浮かべた軽蔑と憎悪の眼差しに気付いた者は誰もいなかった。上着のポケットから煙草を1本取り出し、男は再び火をつける。細く煙りがあがり、独特の臭いが漂った。
「このまま終わらせるものかよ。思惑通りにはいかせないぜ」
 ふぉんと吐き出された煙りが、周囲に溶け込み消えてゆく。男は平和な街の光景を憎しみの目で眺めながら、それを壊す瞬間の感覚を想像した。逃げ惑う大勢の人々の姿を想像し、愉悦に浸る。
「くくく」
 体が快感で震えた。
「楽しみだなぁ」
 声には喜悦が宿っている。
「もうすぐ幕があがる。さあ踊れ、ディアーナ。ルキアノ様の描いた筋通りに……」
 日が暮れ宵闇が迫るのそ瞬間迄、男はその場に佇み続けた。薄い唇に浮かんだ残酷な笑みが消える事は、ついぞなかった。
 闇に潜んだ者達が動き出す。悪意がねっとりと絡み付き、ディアーナを揺るがす争乱が幕を開けようとしていた。
[63] 2005/09/12/(Mon) 17:01:27

名前 MUTUMI
題名 41
内容 「同じロットで産まれた仲じゃないか」
「ふん、ほざいてろ」
 ネロは吐き捨てるとクルリと男に背を向る。
「行くのか?」
「仕込みがある」
 短く返し、そのまま静かに部屋を出て行った。ふおっと再び残った男が円状の煙りを吐き出す。
「御苦労なこって」
 短くなった煙草を足下に落とし、男はそれを靴底で踏みにじった。
[62] 2005/09/11/(Sun) 23:50:50

名前 MUTUMI
題名 40
内容  ふぉっと男の口元から円状の煙りが吐き出された。
「家畜の様に飼いならされた、平和ボケした奴等ばかりだぜ。だからなぁ、この平和をブチ壊したくて、腕がウズウズする」
「……」
「お前はどうなんだ、ネロ?」
 指に挟んだ煙草から灰がポトリと落ちた。細い眼鏡を鼻先でクイッと押し上げ、ネロは興味なさ気に応じる。
「どうでもいい。俺には関係ない」
「冷たいねー。兄弟」
 男は低く笑いながら呟いた。兄弟という言葉に、眼鏡の方の男性が不快そうに顔を歪める。
「馴れ馴れしい、不快だ」
[61] 2005/09/10/(Sat) 16:53:36

名前 MUTUMI
題名 39
内容 「ディアーナというのは幸福な星だと思わないか?」
 煙草を燻らせて男が同伴者に尋ねた。
「幸福?」
 いまいち意味が掴めず、尋ねられた男が困惑した顔を浮かべる。それをニヤニヤと眺めながら、男は煙草の灰をコンクリートに落とした。白い煙りが細くたなびく。
「戦争を知らない平和な民。複数のゲートを持つ恵まれた環境。この星は一度として民衆の血で、大地を染めた事がない」
「……」
「な? 幸福な星だろう?」
 幸福、幸福と口では言いながらも、男はつまらなそうに眼下を歩く人や走り去るエアカーを眺めている。
[60] 2005/09/07/(Wed) 20:23:38

名前 MUTUMI
題名 38
内容  その回答に、いかにも官僚的な詭弁の臭いを嗅ぎ取りつつも一矢が素直に頷く。
「ねえ、それって班長は信用が出来るってこと?」
「彼が内通者なら、私は辞表を叩き付けて星間中央警察を去るわ」
 きっぱりとレミングは一矢に言い切った。一矢は「へえ」と呟き、
「覚えておくよ」
 と短く返す。レミングにとってはその短い一言で十分だった。ロン・セイファードに対する一矢の信用度が、少しだけ上昇したのを感じ取ったからだ。
「じゃあ僕、そろそろ帰るよ。言いたい事は言ったしね」
 ヒラヒラと手を振って「バイバイ」と一矢が呟く。
「ええ、またね一矢」
 レミングも笑顔で片手をあげた。
 スウッと周囲から光が一矢に向かって収束していき、それが突然弾ける。ヒュオンという音と共に一矢の姿が消えた。後に残るのは静寂とレミングただ一人。
 誰も居なくなった室内になんだか物足りなさを感じつつ、レミングは自室の窓に近寄った。乳白色の不透明設定にしてある窓を透明設定に変え、映った外の景色を眺める。
 眼下に広がる公園には憩いを楽しむ多くの人が見えた。その先のずっと向こうのビル、軍部統括の機関である統合本部と特殊戦略諜報部隊が入居しているビルを眺め、レミングは瞳を細める。
「杞憂に終わってくれる事を望むのだけれど……、そうはいかないのでしょうね」
 ある種の覚悟を決めて、レミングは惑星エネのビル街を眺めた。
[59] 2005/09/04/(Sun) 09:45:46






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