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文字書きさんに100のお題

[37] 012:ガードレール(パラレル)
綺兎里 - 2003年04月24日 (木) 23時14分

轟々と音を立てて、目の前を横切っていくクルマのタイヤが。
雨上がりの道路に残った水分を巻き上げて、霧にしていった。
夜の自動車道。
闇を切り裂くライトに、アスファルトが黒と銀とに光る。
「JAF、すぐ来るってさ」
携帯電話を畳んで黒いワゴンに預けていた長身を起こしながら。
悟浄は、車から降ろして路肩に避難させていた連れに声を掛けた。
「しっかし、参ったよなあ」
いい加減ガタがきていたが。
それでもダマしダマし使って、今まで目立ったトラブルもなかったのに。
「よりによって、こんなトコで動かなくなるなんてよ」
もう春だとはいえ、夜は冷える。
見やった先には、寒いのだろう、少し肩を竦めるようにしている細い姿があった。


三蔵は、路肩のガードレールに浅く腰掛け、両手を脇について体を支えていた。
規則正しく並んだ街灯が細い体から何本もの影を引かせ、擦れ違いざまに舐めていくヘッドライトが金糸の髪を煌かせる。
「やっぱ、もう買い換えねえとダメってか?」
少し俯いている三蔵の前に立って、悟浄はそんなふうに話しかけた。
二人を包む騒音に紛れてしまいそうな。
低い、呟くような声に、それでも三蔵は顔を上げて悟浄を見つめ返した。

月光と街灯の光とヘッドライトを吸い込んで、紫暗の瞳がゆらゆらと揺らめく。
何度見ても吸い寄せられてしまう、不思議なその色合い。
ゆっくりと前屈みになり、ガードレールに突かれている白い手に触れかけて。
目の下の細い体がバランスを崩すことを懼れるように、悟浄はその動きを一瞬止めた。
少し躊躇い、そしてその手のまた少し外側の湾曲した鉄板を節の目立つ指で握り込む。
まるで車道を行き過ぎる、ドライバーの目から彼を隠すように。


掌から駆け上がって来る冷たさに、思わず体が震える。
寒い。
そう思って見やれば、腕の中に閉じ込めたような格好になった三蔵も、小刻みに震えている。
「寒くねえの?」
訊いてやっても、三蔵は小さく首を振るばかりだ。
何度も買い与えようとしたコートを、モノを欲しがらない三蔵は生返事で退け続け。
普段はクルマの中ばかりだからとタイミングを逸しているうちに、今日になってしまっていた。
夜の風に吹かれている三蔵は、初めて逢った時に着ていた黒い革の上着を羽織っているばかりで。
「震えてるクセに」
低く笑うと。
「別に寒くない……お前は寒いのか?」
細い声が耳元を擽った。
「…うん、寒い」
だから、暖めて。
くすくす笑いながらそんなふうに言い、なおも顔を近づけると、三蔵は静かに目を閉じた。
僅かに仰のけられた白い面の中で、寒さにいつもの色を失っている唇に唇をそっと重ねる。
掌と足元から這い上がってくる冷たさに強張る体を、唇から流れ込んでくる熱がじんわりと溶かし始め。
耳を聾する音も、もう聞こえては来ない。
至近距離から見る金色の睫毛が細かく震えていることに、相手も同じ熱を感じていることを知らされて。
そのことにまた、灼かれ、煽られていく。

カラダと、……ココロが。

「……ふ…」
やがて。
仰のけた姿勢が苦しいのか、キスに耐えられなくなったのか。
唇でだけ触れ合っている三蔵が小さく息を漏らし、悟浄はそっと身を起こした。
夜の明かりに晒された、上気した美貌。
それが自分のモノだということに未だ慣れないまま。
悟浄はダウンジャケットを脱ぎ、華奢な肢体を包み込んだ。

腕の代わりに、体温で抱き締める。

夜の自動車道で。


JAFが来るまで。



[38] thanks 1000hits over!
綺兎里 - 2003年04月24日 (木) 23時21分

『kitori presents』のふたりです。
でもって、ずーっと先の話です(涙)
このふたり、本編ではまだ出会って一日目だよ…。

[47] 感想大変遅ればせながら!
ほたる - 2003年06月13日 (金) 01時15分

この二人がとても好きです。特にひよこ三ちゃんがかわいらしくて嗜虐し、いえ、思うさま、
…えーと…ものなれないかんじが好きなんです///
きっと三蔵の方も悟浄さんがちゃんと好きなんだけど、悟浄さんの方はそれを知らないかも、と思ったりもいたします。
お互いすすんでいちゃいちゃできる日が来るのをお待ちしてますーv
(でもさんぞが成長?したら素直に引き寄せられるままになってくれませんかね?)
読んでいて、冷えた空気を肺で感じるような気がしました。
ラブストーリー、堪能いたしましたv

[48] ありがとうございますぅ
綺兎里 - 2003年06月14日 (土) 22時33分

ひよこ三ちゃん……なんかこの人秘密が多くて、なかなかペースが掴めません(笑)
冷静に考えると、そーとーヘンなんですけど、割と好評です。
(いや、何も言って来られない方は呆れ果てているのかも…(涙))
『kitori presents』は元々悟浄さん慰安コンテンツなので、どっちかと言うと三蔵様の方が一方的に悟浄さんが好きな感じです。
……まだ、そこまで書いてないんですけどね(しくしく)
このお話は、ずっとずっと先と言うか、果てのお話で、そんなところまで話は進んでるのに、書く方がちっとも追いつかないという…(ため息)。なかなか書く気力が続かなくて。決して拗ねて書かないわけではありません(微笑)

ああ、はじめて感想いただいて舞い上がってしまいました。
ここまでカキコに来てくださってありがとうございます。
カウンタが2000になったら、また一つ書けたらいいなあと思っています。




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