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(214) 万年最下位チームの逆襲記〜第11話〜 投稿者:名鑑引受人(元兵藤洋平) MAIL URL
2連戦の初戦を物にしたオーシャンズ。
さすがに、二日酔いで初戦に出ることができなかったおっさん軍団も、今日は体調がいいみたいだ。
『ウシ、今日はいけるぞ』
向井が開口一番につぶやく。
『今日は酔いの醒め具合が良いみたいですね』
水無月が言った。
『今日の試合も落とせないからな、お前もひょっとしたら連投になるかもしれないから、ちゃんと肩作っておけよ』
向井がそういいながらブルペンへ向かって行った。
彼がそういうのも無理がない、なぜなら、つい2時間ほど前、フィッシャーズに新外国人が来日したからである。
その選手の名前はドミンゴ。
メキシカンリーグではかなり有名な選手。それを天野監督が自らメキシコまで渡って獲得してきた。開幕時はファームだったが、今日一軍に昇格してきた。
『俺たちのもとには野手、って言う情報しか入ってきていないからな・・・』
『えっ?どういうことです?それ。』
水無月、続木、阪田がそろって返す。
『実はな、俺の知り合いからの情報なんだけどな、その外人、実はピッチャーもこなすらしいんだよ』
『二刀流、ってことですか?』
『まあ、そうなるわな』
『へぇ・・・』3人が揃って納得したようだ。
『今日の試合から早速出るらしいぞ、まあ、俺らは打撃がどれだけの実力を持っているのかを見るだけだがな』
『そうですね、俺らは俺らで頑張りましょう』
そういい終わると4人はまた軽い肩慣らしに入った。
そして、時間は刻々と過ぎて、気が付けばオーダー発表がもう始まっていた。
両チームの今日のオーダーは以下の通り。
   オーシャンズ            フィッシャーズ
1 遊 槙田             1 捕 上代
2 二 平田             2 右 上嶋
3 右 鈴木             3 二 正野
4 三 田中             4 一 ドミンゴ
5 中 バークス           5 左 ロバート
6 一 高杢             6 三 唐澤
7 DH 千葉             7 中 江坂
8 捕 城ヶ崎            8 遊 小向
9 左 高柳             9 DH 川下
投手  向井             投手  橘高
午後4時55分、球審がプレイボールを宣告した。
マウンドにはフィッシャーズのサウスポー、橘高。
特徴がないのが長所でもあり、短所でもあるつかみ所のない投手。
140`前半の速球にカーブ、シュート、チェンジアップをバランス良く混ぜて投げるタイプの投手だ。
その橘高、いきなり初回4連打で2点を先制されてしまう。
その後は立ち直り6回までをその2失点だけで乗り切る。
対して向井は初回〜4回までパーフェクトとこちらは見事な内容。
5回も難なく抑えるだろうと思われたその矢先、なんと、少し苦手意識のある唐澤から一発をもらってしまう。
2-1で迎えた6回の表、フィッシャーズ監督、天野が動いた。
審判に選手の交代を告げている。
”オーシャンズの選手の交代を申し上げます、ピッチャーの橘高が退いて、そこに後藤田が入りファースト、セカンドの正野に変わり、オーウェンが入りセカンド、ファーストのドミンゴがピッチャーに入ります、3番、セカンド、オーウェン、背番号52、4番、ピッチャー、ドミンゴ、背番号57、ファースト、後藤田、背番号8”
『これはまたずいぶんと大胆に変えてきたな・・・』
矢嶋が呟く。
『さて、奴さんの実力でも見てくるかな、監督、ちょっくら行って来ますね』
『おっ、分かった、じゃあ俺も審判に言ってくるかな』
”オーシャンズの選手の交代を申し上げます、7番、千葉に代わりまして代打、三井、バッターは三井、背番号40”
三井が打席に向かう。
「オレノジツリョクヲミセテヤル!」
ドミンゴが気合いを入れた。
そして第1球を投げた。
シュッ!グイイィーン!バシィーン!
『な、何てはやいんだ・・・』
バックスクリーンの電光掲示板の右隅に、154km/hという数値が出てきた。
『ただ速いだけじゃない、何てノビだ・・・絶対、あれ(表示速)以上あるだろ・・・』
三井が驚く。
間髪いれずに第2球を投げる。
シュッ!クククッ!バシーン!
外角低め、それも少しズレればボールの所にサークルチェンジを決める。
『チェンジアップもすごいなあ・・・』
結局、三井は3球目のスライダーを引っ掛けてショートゴロに倒れた。
『・・・』
三井は何も言わずにベンチに引き下がっていった。
ドミンゴはこの後8回も難なく抑える。
『マダマダゼンリョクダシテナイヨ』
ドミンゴが汗を拭いながらベンチに下がっていった。
試合の方は2-1でまだまだオーシャンズがリードを奪っている。
そして、7回の裏、矢嶋が動いた。
”オーシャンズのピッチャー、向井に変わりまして水無月、ピッチャーは水無月、背番号30”
『まさか、本当に連投する事になるなんて・・・ちょっとびっくりだな』
水無月がマウンド上でつぶやく。
打席には先ほどの回からマウンドに立っているドミンゴが立っている。
『アノサキノトウシュヨリハウチヤスソダナ』
ドミンゴがかたことの日本語でつぶやく。
『ま、いいか、どんなバッターにも全力でが俺のモットーだ、全力で行くぞ!』
水無月が勢いよく振りかぶる。
シュッ!グィィィィーン!バシッ!
147km/hのストレートがインコースの真ん中に入る。
足元を整える暇を与えさせるまもなく2球目を投げる。
139km/hのシュートが外角高めに入る。
1球はずした後の4球目、城ヶ崎はインハイに構えた。
シュッ!グィンッ!バシンッ!
135km/hのスラーブをドミンゴは腰を仰け反らせながら見送った。
しかし判定は、
『ストライク!バッターアウト!』
『・・・・』
ドミンゴはそのまましばらく立ち上がれなかった。
この回は3人で攻撃が終わってしまったフィッシャーズ、対するオーシャンズは8回、ドミンゴを一気に攻め立てて、2点を追加。
9回、マウンドには抑えのエース、続木が登る。
打席には先の打席で水無月の前に三振を喫してしまったドミンゴ。
『コノダセキ、オトスワケイカナイ』
その初球、147km/hのストレートをフルスイング。
ブンッ!バキーン!
バットに当たったとは思えない音を残し、打球はセンターバックスクリーンに一直線。
ドミンゴの来日初アーチだ。
これで4-2とするものの、反撃もここまで。
後は続木が完璧に抑え、4-2でオーシャンズの2戦2連勝で終わった。
「ツギ、マケナイ、ツギコソ、マケナイ」
ドミンゴが悔しげにつぶやいた。
『よし!みんな、今日は御疲れさん、この2連戦、見事に2連勝で乗り切ることができた!だが、気を抜くなよ、あさってはドリームスとの試合だ、ちょっと移動がきついかもしれないが、頑張ってくれよ!』
『オイーーーーーッス!』
さあ、この後どうなる事やら・・・・
今日はここで終わりです。

2003年02月08日 (土) 14時19分




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