| (194) 万年最下位チームの逆襲記〜第4話〜 |
投稿者:名鑑引受人(元兵藤洋平)
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オーシャンズのキャンプも徐々に佳境にさしかかっており、今日は1・2軍混合の紅白戦が行われた。 紅軍には1軍のベンチ入り+2軍のスタメン人、白軍には1軍のスタメン+2軍のベンチ入り、とまあ多少偏った感じの布陣だ。 そして、紅軍の先発はドラフト3位新人の仁井田、白軍の先発は大ベテランの向井という面々。 この試合は紅軍の指揮を投手コーチの高井が、白軍の指揮をヘッドコーチの原山が執り、監督の矢嶋はベンチ裏から総指揮を執っている。 そして白軍には注目の投手、水無月がベンチ入りしている。 オーシャンズの首脳陣はこれが全選手の力量を見れる千載一遇のチャンス。紅白戦の火ぶたが斬って落とされた。 まず最初にマウンドに登ったのは紅軍の先発、仁井田。 ストレートは140`前半ながら、それを持ち前の制球力と多彩な変化球でカバーしている、軟投派の右腕だ。 対する白軍の最初の打者は俊足・巧打のスイッチヒッターで有名な槙田敬太。仁井田が右投手だからというわけではなさそうだが、左打席に入っている。 第1球、内角低めの際どい所に136`のストレートを投げた、槙田は見送った。判定はストライク。 2級目、今度は外角の低めにスライダーを投げた、すると、槙田はこれを見逃さず、セーフティバントを敢行、だが、実はこれは矢嶋からすでに言い渡されていた事なのである。「あの仁井田のフィールディングがどれだけ上手いか見たいから、アウトになってもいいからセーフティをやってくれ」と。 しかし、仁井田は落ち着いてピッチャー前の弱い打球を捌き、ファーストへ送球。判定はギリギリの所でアウト。 仁井田は続く2番、3番をそれぞれセカンドフライ、ショートゴロに斬って取った。 そして、1回の裏、今度は白軍ナインが守備に入る。 「おい、水無月、向井さんのピッチング、よく見ておけよ」 そう言ったのは白軍監督、原山だった。 「ええ、参考にできそうなところはできる限り盗んでいくつもりです」 水無月がそう返した。 そして、向井の最初のマウンド。 その初球、下手から繰り出されたストレートのスピードは149`。 「コンディションは良いようだな」矢嶋が呟く。 そして向井は1番をサードゴロ、2番を見逃し三振、3番を四球で歩かせたものの、4番をファーストゴロで打ち取る。 仁井田とは対照的にこちらはかなり快調な出だしのようだ。 2回は両投手とも無難に切り抜けた。そして3回、ついに仁井田が、オーシャンズ1軍打線に火をつけることになる。 この回、先頭打者は8番の城ヶ崎。 この城ヶ崎、他球団からは「粘りのジョー」として、打席に立つと、必ず8球以上は粘るという所が恐れられている。 そして、仁井田の初球、インコース低目へ落ちていくカーブ、城ヶ崎はこれを待ってましたといわんばかりにライト線へ引っ張ってファールにした。城ヶ崎の得意としている攻め方だ。 そしてこれ以降、実に8球粘った後の9球目、集中力が切れたのか、はたまたすっぽ抜けたのか、仁井田の投げた球はど真ん中へ。 城ヶ崎はすかさずそれを軽打し、センター前へ。 仁井田も一本取られたな、と苦笑を浮かべた。しかし、これがオーシャンズ打線爆発の合図。続く9番の向井はきっちり送りバントを決め、1番の槙田の打順。「こうなったら、アレを使うしかないか」と仁井田がつぶやいた。初球、仁井田の投げた球は外角高目への敬遠かと思われがちの球、しかし、なんとそこから強烈な変化がかかり、一気に内角低め、ストライクゾーンぎりぎりをかすめた。 「!」両軍監督、そして総指揮を取る矢嶋が一斉に立ち上がった。 「な、なんだ、今の球は・・・」一同があ然とする。 仁井田の必殺球、シューティングスター(スクリューのキレが鋭いもの)である。 槙田はこれを意識させられ、結局3球目を引っ掛け、セカンドゴロに倒れた。続くバッターはカーブを見逃し、三振に倒れ、結局、この回の得点は無得点。 「まさか見せる事になってしまうとはな・・・」仁井田は半分がっくりしていた。 そして、3回の裏、この回も向井が上がるかと思いきや、向井はマウンドを降りていた、そして2番手投手、ロングリリーフならお任せの、竹上浩太(たけがみ・こうた)がマウンドに登った。 この投手、4年前までは先発ローテの一角を担っていた。しかし、2年前に慢性のヒジ痛を訴え、以降、リリーフの道を歩んでいる。 持ち球は130`後半のストレート、カーブ、シュート、チェンジアップといたって普通。だが、マウンド度胸のよさはチーム一である。 3回の裏、今度は紅軍の攻撃。この回は9番の仁井田からである。 竹上は臆することなく、初球内角高目へ134`のストレート。 仁井田はこれをフルスイング。ガツンッ!少し鈍い音を響かせながらも打球はレフトへ。レフトが懸命に追う。フェンスに付いた、しかし、グラブには収まらなかった。なんと両チーム通して初の得点は、ピッチャー・仁井田のソロアーチである。 「あちゃー、初球からあそこはいかんかったか」、竹上がはにかむ。 しかしそこから持ち直すのはさすが竹上、といったところか、続く1・2・3番をきっちりしとめた。3回の裏、ついに紅軍が1点を先制。 現在、3回裏終了時紅軍1−白軍0 紅軍投手:仁井田 白軍投手;向井→竹上 さあ、投手戦に始まったオーシャンズ紅白戦、紅軍がこのまま逃げ切るのか!?白軍がそれとも逆転するのか!?それはまた次回。
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2003年01月13日 (月) 16時52分 |
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