「いったいどうしたんだよ。はぁ、はぁ」 中林が息を切らしながら言う。 「下坂だよ」 「下坂がどうした?」 「だから、下坂みたいにサイドスローで投げれば、今のアンダースローよりも下半身への負担が減るんじゃないかなあ?」 「なるほど。でも、今フォームを変えるのは賭けみたいなもんだぞ。」 「少しサイド気味にするだけだから大丈夫だよ。それに、ダメだったら戻せばいいだろう。」 「そんな簡単なもんかねえ。」 「つべこべ言わずにミットをつけろよ」 「わかったよ」 シュッ バシーン 「まだまだだなあ、これじゃあぜんぜん・・・」 「まだ初めてなんだからしょうがないだろう」 その後、20分近く投げつづけた。 シュッ ズバーン 「今の球はまあまあいいんじゃねえか。まさかここまでいいとは思わなかったが。後はこれを極めればいい。」 「うん。がんばろうぜ、中林。」 入団テストまであと3週間。ラストスパートだ。
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