| (225) 万年最下位チームの逆襲記〜第13話〜 |
投稿者:名鑑引受人(元兵藤洋平)
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今日は茅ヶ崎ドリームスとの3連戦。 このチームはここ2,3年優勝争いから遠ざかっているものの、古くには、江崎、津島といった名選手を輩出しているチームだ。 おそらく、このリーグの中では最古参だろう。なぜかというと、オーシャンズ監督、矢嶋も実を言うとこのチームに在籍していたからである。『どうも、古坂さん、今日はよろしくお願いします』 『あっ、矢嶋さん、いえいえこちらこそ、よろしくお願いします。』 ドリームス監督、古坂である。 この監督は10年前まで選手としてこのチームに在籍、その後は転々と色々な球団を渡り歩き、5年前にこの球団に復帰。 就任3年目にして初優勝、そして昨年も優勝と、まずまずの手腕を誇っている。 『まあ、今日は胸を借りるつもりで行くから、よろしく頼むな』 『そんなこといったって、手加減しませんよ、こっちは』 両監督による舌戦が終わり、選手もシートノックを終え、ベンチに入っていった。 そして、試合開始10分前、情緒を漂わせる、緑のバックボードに続々と両チームのスターティングラインナップが発表された。 オーシャンズ ドリームス 1 遊 槙田 1 二 猪俣光 2 捕 城ヶ崎 2 中 荒川 3 右 鈴木 3 一 レモン 4 三 田中 4 捕 古崎 5 中 バークス 5 左 村中 6 一 高杢 6 三 内藤 7 二 平田 7 右 李鐘餅 8 左 高柳 8 DH 白井 9 DH 千葉 9 遊 黒川 投手 仲元 投手 猪俣剛 午後1時56分、プレイボールが宣告された。 ドリームスの先発は猪俣剛、兄弟選手で有名な、猪俣兄弟の兄である。 球速こそ130`台後半とそれほど速くは無いものの、サウスポーの利点を生かすピッチングを得意とする投手。 その立ち上り、まだ制球が定まらないのか、先頭の槙田を四球、続く城ヶ崎にレフト前にヒットを打たれ、無死1,2塁。 打席には3番の鈴木が入っている。この鈴木、こともあろうことに軟投派の投手を得意としている。 その初球、132`のストレートを見逃し、ボール。 2球目、104`のカーブが緩やかな弧を描いてアウトコースへ逸れていく。が、気を抜いてしまったのか、じゅうぶんに曲がりきらず、球も真ん中に。 鈴木はこれをすかさず右中間へ打ち返す。ランナー二人がホームイン。 オーシャンズが2点を先制した。続く4番の田中、5番のバークス、6番の高杢はいずれも凡退に終わった。 その裏、今度はドリームスの攻撃。 打席には1番の猪俣光が立っている。その初球、内角に137`のシュート。猪俣はこれをセーフティバント。 しかし、相手はかなりフィールディングのうまい仲元、いとも簡単に1アウトをとる。 続く荒川はサードライナー、レモンはセンターフライに倒れた。 その後6回までは沈黙が続く。しかし7回の裏、ついに均衡が崩れる。 ここまで好投を続けてきた仲元が突如崩れたのである。 先頭の猪俣弟、荒川と連続ヒットを打たれ、無死1,2塁とピンチに。 そして、古坂が動いた。審判に、代打を告げたみたいだ。 ”ドリームスのバッター、レモンに変わりまして、小橋、バッターは小橋、背番号4” スタンドがいっせいに沸きあがる。ドリームスの代打職人、小橋の登場である。 小橋太市(こばし・たいち)、ドリームスに入団して14年、ずっと代打に徹してきた選手。過去に一度退団騒動で話題になったが、75%の年俸ダウンを自ら提示、球団に居続けたいという熱心さに心を打たれたファンも多いとか。 その小橋が仲元と対峙する。 その初球、144`のストレートが外角に向かって行く。 小橋はこれを見送る。続くカーブも見送り、カウント2−0。 そして3球目、仲元は自分の得意球のフォークを投げた。 すると、小橋がそれに合わせてバットを出した。 投げた球はバットに吸い込まれるように寄せられていく。 そして、ジャスト・ミート。打球はセンターバックスクリーンめがけて一直線。 あっという間に、バックスクリーンの芝生に消えていった。 逆転3ランである。これで一気に逆転したドリームス。 続く8回にも1点を追加、そして9回、古坂がまた動いた。 ”ドリームスの選手の交代を申し上げます、ピッチャー、猪俣剛に変わりまして、銀狼、ピッチャーは銀狼、背番号11” また、スタンドがいっせいに沸きあがる。 高卒ルーキーでここまで無傷の3セーブ。自責点もとられていなく、防御率もまだ0.00。 『しかし、すごいルーキーさんを取ったな、向こうも・・・』 銀狼はマウンドに登るやいなや3人であっという間に片付けた。 オーシャンズは3連戦の初戦を後一歩の所で取り逃してしまった。 そして、この試合が終わって数時間後、プロ野球界全体を揺るがす大事件が起きる。 なんと。フィッシャーズの大ベテラン、木樽が、今シーズン、オールスター戦前に現役を引退すると発表。 フィッシャーズとして、これはすごい致命的なダメージを負ってしまったのである。 だが、他球団からすれば願ってもいない大チャンス。 これを一気に物にできるのはどの球団か!? 続きは次回。
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2003年02月22日 (土) 13時29分 |
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