| [32] F膝関節と足の関節(靱帯を含む |
- sizu - 2005年01月29日 (土) 20時26分
1.膝関節と靱帯 人体で最も大きく最も複雑な関節である。大腿骨の下端の内側顆および外側顆と脛骨の上端の内側顆および外側顆の間に出来る蝶番関節で、関節包の前壁内にある膝蓋骨の後面が前方からこの関節に加わる。関節包は大腿骨・脛骨・膝蓋骨の関節面の周縁に付着する。関節包の周りは靱帯により強められている。 関節包の前壁には大腿四頭筋腱と膝蓋骨、および膝蓋骨の下縁から起こり脛骨の粗面に着く膝蓋靱帯がある。関節包の側面には縦走する側副靱帯がある。内側側副靱帯は内側上顆から起こり、脛骨内側顆の内側縁と後縁に着き、また内側半月の周縁にも着く。外側側副靱帯は外側上顆より起こる円柱形の線維束で、下端は腓骨頭に着く。関節包の後壁には斜膝窩靱帯があって、脛骨内側顆から起こり斜めに上外方に向かって関節包と癒着している。関節包内には前十字靱帯は大腿骨の外側顆の内側面から起こり、脛骨の顆間隆起の前方に着く。後十字靱帯は大腿骨の内側顆の外側面から起こり、脛骨の顆間隆起の後方に着く。前十字靱帯は脛骨の前への移動を防ぎ、後十字靱帯は脛骨の後ろへの移動を制限する。
膝関節の滑膜は関節包の内面を被い、内腔に向かって滑膜ヒダをつくる。膝蓋骨の下方の正中線の両側に滑膜が関節腔内に突出し、翼状ヒダを作る。この部分の滑膜ヒダは関節腔外へ突出し、関節腔と交通する滑液包を作る。膝蓋上包は膝蓋骨の上方で大腿四頭筋腱に覆われて存在する大きな滑液包である。膝蓋下脂肪体は膝蓋骨の下にあり、膝蓋靱帯の内面を底とする滑膜に覆われた大きな脂肪体である。 2.関節半月 脛骨の内外の上関節面の上には外周に近くそれぞれ1個の軟骨輪が載って関節面の周縁部を高くし、大腿骨の下端に適合した関節窩を作る。外側顆の上にあるものを外側半月といい、内側顆の上にあるものを内側半月という。半月は不完全な関節円板であるということが出来、線維軟骨性である。両半月とも、外縁は厚く、関節包の内面に付着し、内縁に向かって薄くなる。関節半月を上から見ると、外側半月はやや小さく、輪状に近く、その端は顆間隆起の前後に着く。内側半月はC字形で大きく、幅が広く、外側半月の端を前後からはさんで前および後顆間部に着く。関節半月は関節窩を深めて、その安定性を増し、同時に関節は円滑に運動することができる。臨床において膝関節の不適当な運動により関節半月がしばしば損傷する。
3.脛骨と腓骨の連結 脛骨と腓骨は上端で脛腓関節、下端で多くの靱帯結合を作り、骨幹は互いに骨間膜で結合される。脛骨と腓骨の間はほとんど運動がなく、腓骨を部分的に切除しても下肢の運動に影響しない。
4.足の関節 これには距腿関節・足根間関節・足根中足関節・中足間関節・中足指節関節・足の指節間関節が含まれる。
1)距腿関節(足関節) 脛骨の下関節面と内果関節面および腓骨の外果関節面が連結して下方に関節窩を作り、ここに距骨の滑車が入って出来る蝶番関節である。関節窩、関節頭ともに前部が後部より幅が広い。関節包は前後にゆるく、ともに脛骨の下端の縁から距骨の関節面の縁に至り、その内側に脂肪体がある。内外側は側副靱帯として強く発達し、内側は内側靱帯または三角靱帯とも呼ばれ、内果から起こって下方に向かって三角形に分散し、距骨・踵骨・舟状骨に付着する(前脛距靱帯、脛舟靱帯、脛踵靱帯、後脛距靱帯)。外側は外果から起こり、3方向に分散する3つの靱帯がある。すなわち前距腓靱帯・後距腓靱帯・踵腓靱帯がある。 この関節の運動は屈伸運動する他に、足が足底に屈する時に狭い距骨滑車の後部が広い関節窩の前部に入り、わずかながら外転と内転の運動ができる。 2)足根間関節 足根骨間の関節である。距骨下関節・距踵舟関節・踵立方関節・楔舟関節がある。距踵舟関節の距骨と舟状骨の間の部と踵立方関節とを合わせて横足根関節(ショパ−ルchopart)という。2つの関節の結び線は横S字形を呈し、内側部は前に凸弯し、外側部は後に凸弯している。足の切断術は常にここで行なう。 足根間関節には付属する多数の靱帯がある。主なものは底側踵舟靱帯は踵骨の載距突起の前縁下面と内側縁から起こり、舟状骨の底面、内側縁と上面の内側部にかけて広がる強い靱帯である。足底弓を支えるのに重要である。二分靱帯は踵骨の背面から起こり、前方に向かう強い靱帯で内外2部に分かれて、舟状骨と立方骨に付着する。長足底靱帯は最も表層にある長く強い靱帯で、踵骨隆起の下面から起こって前方に広がり、立方骨とII−V中足骨底に付着する。底側踵立方靱帯は踵骨結節から起こり、前方に放散して立方骨粗面に着く。 距踵舟関節と距骨下関節は前内方から後外方に斜走する軸を中心として、それより遠位の足部とともに距骨のまわりに働き、足の内反と外反を行なう。このとき、距骨は下腿の延長上にあり、動かない。内反は手の回外と対比され、足はやや内転して底屈しながらねじれて内側縁が挙がり、足底が内方に向く。外反は手の回内に対応し、足はやや外転して背屈しながら外側縁が挙がり、内側縁が下がる。また足根の運動にはわずかであるが踵立方関節も加わる。
3)足根中足関節(リスフラン関節) 足根骨遠位列と立方骨の前端とI−V中足骨底間の関節で、平面関節であるために動きはわずかである。
4)中足間関節 隣接する中足骨底の互いに対向する面の間にある平面関節で、その関節腔は足根中足関節腔に通ずる。その動きもわずかである。
5)中足趾節関節 中足骨頭と各指の基節骨底との間の関節で、関節頭と関節窩の形からは球関節である。
5.足底弓 足底骨は靱帯によって連結され、全体として距骨を頂点とする弓状の隆起をつくる。これを足底弓という。また前後の弓状の配列を縦足弓、左右の弓状の配列を横足弓といわれる。縦足弓はまた内外2部に分け、内側部は踵骨・距骨・舟状骨・3つの楔状骨および内側の3つの中足骨からなる。内側部は高く、踵骨隆起より第1中足骨の頭まで地面と離れる。足底弓全体の頂点にある距骨は内側に偏っているから、実は縦足弓内側部の頂点であり、したがって下腿から距骨を経る体重は主として縦足弓内側部にかかる。外側部は踵骨・立方骨・外側の2つの中足骨からなって、頂点は立方骨にある。外側部は低く、後端は踵骨隆起で、前方は第5中足骨の底と頭の外側部で地面に接する。横足弓は立方骨・3つの楔状骨と中足骨からなる。頂点は中間楔状骨にある。 この足底弓があるから人間は凹凸不平の地面に安定に立つことができ、足底の血管と神経の圧迫が免れる。または足底弓は弾力性を与え、地面が体に作用する衝突力を減少し、内臓とくに脳に対して保護作用がある。走行時や歩行時の体の前進、跳躍などに対して有利である。 足底弓を維持するには足の骨を連結する靱帯の中で、底側踵舟靱帯と長足底靱帯が最も重要であって、また足底の短筋と長筋の腱もこれに加わる。もしこれらの靱帯・筋と腱が損傷されると足底弓は壊れて扁平足となる。

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