今回のテーマは、生き残った者の責任。
震災発生から25日が経過した。
震災での犠牲者は1万人を超過し発表の度に増える一方で、負傷者も膨大な数である。
いつしか救命センターの医師達(進藤と楓を除く!)は、何人助けても焼け石に水…と、虚しさをあからさまに口にするようになっていた(そんな意識が自然と油断を生む)。助けられた人にとってはたった一つのかけがえのない命だというのに!
そして進藤は迷っていた。国際人道支援医師団からアフリカ出国要請があるのだ。が、東京もこのまま放ってはおけない。
そんな矢先、心停止の身元不明の老婆が運び込まれた。
処置にあたった日比谷と河野は、少しの時間であっさり諦めようとする。
しかし、間もなく登場した進藤は可能性がゼロでない限り決して諦めない。
楓と共に、可能な方法と自分の技術の限りを尽くし、見事蘇生に成功。
河野は呆然、日比谷は傍らで唇を噛み退場(医者としてのジェラシーも感じる)。
簡単に蘇生を諦めようとした事。カルテの記載にいくつもの不備がある事。それを許しあっている事。進藤はそんな集中力を欠く甘えた空気に憤りと不満を感じていた。
それでも医局長は「被災しギリギリの状態でやっている」と身内を庇う発言をする。更に「貴方は何れここを出て行くだろうが、我々はこの状況が延々と続くのだ…」と泣き言まで持ち出し、余所者・進藤を牽制する。
そこで進藤は静かな怒りが爆発。
「まだ震災を言い訳にするのですか?患者を前にして!」
目から鱗の医局長だった。
その後、ある患者の様態が急変。腹部大動脈流破裂で極めて危険な状態になる。
実は何時間か前に予兆のような異変があったのだが、看護師の油断から主治医・楓への報告義務を怠り、このような事態に至った(進藤の恐れていた事はこれだ!)
誰もが諦めかけていたが、進藤は決して諦めない。想定されるあらゆる事態に備えて指示を飛ばしながらも、神の手が炸裂。医師達にも考えられないような方法で見事に患者を救ったのだ。
患者が落ち着いた時に、進藤は楓にしみじみと語る。
「生き残った人間には全力を尽くして生きる責任がある」
それが亡くなった人達への礼儀なのだ(楓は加賀を思い進藤は妻を思うのだろう…)
スタッフ達は己の甘えと油断を思い知り反省する。
そして医局長は、素直に進藤に「暫くここにいて欲しい」と希望する。
進藤は、この病院の機能が完全回復するまでは、東京を離れない事を約束する。
「いっしょに頑張りましょう」のメッセージが添えられた小さな花の植木鉢が重く心に染み、癒される救命病棟だった。
---つづく---