北海道マンション管理問題支援ネット
マンション管理に関する相談、質問、情報交換に利用して下さい。
営業、誹謗中傷及び管理者が不適切と判断した投稿は、予告無く削除させていただく場合があります。
HP管理員 2008年12月27日 (土) 20時53分 No.1020
≪マンション管理新時代≫
私はこれまでの当コーナーのご相談に対しては、「話し合いの先に解決の糸口はある」との信念の下でお答えしてきました。しかし、今回のご質問に対して解決策を考えるうえでは、区分所有者間の話し合いとか管理規約や細則の充実という自助努力レベルだけでは根本的な解決は得られず、マンション(集合住宅)に関する政策・制度面からの支援や第三者による直接支援が必要になると感じています。
◆国や地方公共団体への要望
これまで国交省は、2000年制定のマンション適正化法をはじめ、マンション管理の課題に対する対応策を打ってきましたが、私たちマンション管理士が地方公共団体の窓口で担当部署、担当者と話し合って感じるのは、「マンション管理の現場の実態を知らない。知ろうとする努力が不足している」ということです。マンションを統括している部署のほとんどは建築課または建築指導課で、そうした部署からは「自分たちは建物のハード系は強いが管理というソフトは弱い」、「自分たちのところにはそれほどの相談がない」などの発言が聞かれます。
マンションの現場では様々な問題や課題が顕在化しています。適正な管理が行われずこのまま放置していくと、マンションの居住環境が悪化するだけでなく、周辺の住環境の質も低下するなど、深刻な社会問題につながりかねません。ところが、誰が、どこに相談に行けばよいのかわからないために、窓口である部署にそうした危機感が到達していません。窓口の部署ではそうした実情が理解されていないのです。
これを裏付けるかのように、私たちマンション管理士が開設している無料相談会への相談件数は年々増加している一方で、09(平成17)年度に実施された首都圏地方公共団体アンケートでは、この5年間にマンション実態調査を行った自治体は4割、セミナーなどを主催した自治体も4割に留まっています。マンション管理適正化法はその5条で、「国及び地方公共団体は、マンションの管理の適正化に資するため、管理組合又はマンションの区分所有者等の求めに応じ、必要な情報及び資料の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。地方公共団体は管理組合や区分所有者にとって最も身近な機関であるべき存在ですが、管理組合運営への支援はまだまだ不足しているのが現実です。国や地方公共団体には、マンション管理の実態を調査把握したうえで、将来を展望した適正な支援の手を管理組合にすみやかに差し伸べることを期待します。
◆マンションの新たな管理方式の検討
無関心な区分所有者の増加と、区分所有者の高齢化や賃貸化の進行や、滞納の増加、修繕積立金不足が相互に絡み合って、管理組合の活動の停滞、維持管理の低下が様々な問題を生じ、深刻化するおそれが高まりつつあることは先に述べたとおりです。
それを回避すべく、既に多くの管理組合では役員の選任に当たって、輪番制や抽選制を採用したり、役員を回避する場合に課徴金を設定したり、逆に役員に日当に相当する手当を支払ったり、マンション管理士などの専門家と顧問契約をして役員の負担を軽減したりなどの工夫をしています。
ただし、今後さらに高齢化、老朽化が進行すると、これらの工夫や努力にも限界を生じてくることは確実です。そこで国交省は、「新たな管理方式検討委員会」を設置し、08年4月に「マンション管理の新たな枠組みづくりに関する調査検討報告書)(マンション管理センター)」の中で、「管理者管理方式」と「信託活用方式」の二つの方式を公表しました。
管理組合が適正な意思決定ができるうちに、将来への備えとして、何ができるかを考える必要があります。本来の姿である理事会を中心とする管理方式に加えて、マンションの適正な管理運営を維持していくために、専門的な知識と経験を有した第三者を活用する新たな選択肢も考えてみる必要が出てきます。二つの方式についての詳細説明は省きますが、ここでは前者の「管理者管理方式」に焦点を当てて検証したいと思います。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/mansion/column/20081222/529099/?P=2
HP管理員 2008年12月27日 (土) 20時54分 No.1021
≪マンション管理新時代≫
◆管理者管理方式とは何か
2007(平成19)年2月、国交省は、マンションの区分所有者で構成する管理組合の理事会に代わり、管理会社が業務の大半を請け負える新制度の検討に入ると発表しましたが、マンション管理の関係者からは賛否両論が出ました。区分所有法の定める「管理者」の持つ権限が大きいことから、利益追求の民間企業が管理者になるとやりたい放題となって歯止めがかからなくなるのではと危惧する意見がある一方、当の管理会社からも、権限と表裏一体となる責任の重さを考慮して、免責条項や報酬規定、賠償保険といったものがないと引き受けられないという意見が出ています。
この方式が採用されるには事前に決めるべき事項が色々とあるので、制度として整備されるまでにはまだ少し時間がかかるでしょう。
私たちマンション管理士の唯一の全国組織である「日本マンション管理士団体連合会」では、「新たな管理方式」研究会を設置して、マンション管理士が管理者となり責任をもって業務を遂行するモデルを作成中です。このモデルは近々発表する予定です。
マンションを管理組合の機能に着目して層別すると、
(1)小規模かつ老朽のうえ、管理組合が機能していない
(2)リゾート型、投資型、超高層型、賃貸率が高いなど資産管理面の色彩が強いマンションで管理組合があまり機能していない
(3)管理組合がある程度機能している
(4)管理組合としてそれなりにチキンと機能している
――の4パターンが考えられます。
研究会の中では、区分所有法およびマンション適正化法に基づき、かつ、管理組合の自主・自立を促すことを主眼に据えて検討しています。(4)のパターンの管理組合はそもそも「管理者管理方式」を当面必要としません。したがって対象となる管理組合は、ある程度理事会が機能しており、かつ管理会社と基幹業務について管理委託契約が結ばれている(3)のパターンが該当することになると思われます。「目的に合致し、環境が備わっていないとできない」という、引き受け側である管理会社の先述の発言と似た事情があります。
(2)のパターンは、採算ベースに乗れば管理会社が「管理者管理方式」で対応してくれるかもしれません。しかし、(1)のパターンを含めたすべてのマンションを対象に「管理者管理方式」を適用するのは難しいと思います。
管理組合は以上の現実を直視しなければなりません。
「管理組合が適正な意思決定ができるうちに、将来への備えとして…」という先述の言葉は、この場面で効いてきます。手をこまねいて何もせず、建物・設備の老朽化を看過していれば、第三者による管理方式の対象にもならず、いずれは耐震補強促進法に基づいて地方公共団体から取り壊し・建て替えの勧告を受けることにもなりかねません。
マンション(集合住宅)の区分所有者には、建物や設備を自己管理する責任があります。
自らの責任を自覚し、そのうえで自ら行動を起こすことが、マンションの危機を回避するために何よりも必要なことなのです。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/mansion/column/20081222/529099/?P=3
HP管理員 2008年12月27日 (土) 20時55分 No.1022
≪マンション管理新時代≫
◆管理組合や区分所有者が動いていかなければ何もはじまらない
以上を踏まえ、私自身が3年前に実体験した内容をもとに、小規模かつ老朽のうえ、自主管理で管理組合の機能がおぼつかなくなったマンションの「管理組合再生への道筋」を示したいと思います。
1)役員経験者がまずはとことん話し合う
すべての管理組合の活動が機能しなくなる前に、現役員は管理組合役員経験者を交えて、当マンションの将来、行く末についてとことん話し合うことから始める。
2)「緊急全集会」の開催を決定する
現旧役員が危機感、緊張感の共有化が図れたら、小規模であることを逆に利点と捉えて、全区分所有者を対象とする「緊急全集会」を開催して、現況を訴えることを決める。
3)「緊急全集会」の場所を確保する
小規模のマンションには集会室がないので、近くの公民館などの会議室を予約し、話し合いの場を確保する。
4)趣旨書を作成し、新旧役員は手分けして全戸訪問する
「緊急全集会」開催の趣旨書を作成し、新旧役員は手分けして全住戸を個別に回って開催の趣旨説明を行い、各住戸から必ず誰かが出席する確約を得る。出席しやすい開催日時に配慮し、居住している区分所有者全員の出席を目指す。
5)外部居住の区分所有者にも出席を強く求める
居住しない区分所有者に対しても、趣旨書に「このままでは大切な資産価値や賃貸料の低下を招く」くらいの警鐘の言葉を添えて、出席を強く要請する。
6)外部専門家の協力も得て準備を進める
できることなら、「緊急全集会」に向けて、マンション管理士などの外部専門家のアドバイスを得ながら準備を進める。
7)マンションの現状について認識を共有化する
当マンションの現状とこのままの状態が続くと将来どうなるか、その対策としていま自分たちが何をしなければならないか、認識を共有化できるように集会のシナリオを練る。日常生活面の不具合や問題点から入るとよい。
8)集会は参加者全員の自己紹介から
開催日当日は、居住者の顔と名前が一致しないことを前提に、一人3分程度の自己紹介から始めると、とても友好的な雰囲気で始められる。
9)マンションの将来像について参加者全員が発言できるようにする
話し合いの中から区分所有者の当マンションに対する期待や将来像が見えてきたら、将来に向けた解決の方向性について本音で話し合う。できるだけ、出席者全員が発言するように進行する。
10)集会の議事録をすみやかに作成、配布する
「緊急全集会」で話し合われた内容をすみやかに議事録としてまとめて区分所有者に配布し、「鉄は熱いうちにたたけ」という教えどおりに、旧役員の協力や専門家の支援を得て具体的な対応策をまとめる。
11)中間案の段階でアンケート調査を行い、意見を集約する
対応策の中間案を提示し、区分所有者を対象にアンケート調査を行って意見を集約、最終案に反映する。全員で取り組んでいるという一体感の醸成と最終案の合意形成につなげる。
12)特定の役員への負荷集中を避ける
特定の役員に負荷がかからないように、新旧の役員がチームワークで手分けをして取り組む。
以上の展開を6カ月という短期間でやり遂げ、このマンションでは、分譲後29年にして初めての臨時総会を開催し、「輪番制の新規採用」、「役員を回避する場合の課徴金の設定」、「新たに修繕積立金の徴収」、「管理会社との出納業務等委託契約締結」、「長期修繕計画の策定」、「マンション管理士との顧問契約締結」、「関連する管理規約の改正」などの重要な案件を、いずれも賛成多数で可決しました。
「一気呵成」とはこのことでしょうか。管理組合運営を回していくのに必要な最低要件をただ1回の臨時総会で確保できたのです。臨時総会の実出席率は約8割でした。
総会後のある役員の言葉が印象に残っています。
「やればできる自信がついた。今回のことがキッカケで、これまで廊下ですれ違っても会釈もしなかった居住者同士が挨拶をするように変わった」
相談会で初めて役員さんとお会いしたのを機会に、私はこのマンションの管理組合の顧問管理士を今日に至るまでの3年間、務めています。現在は、輪番制で就任された83歳のお元気な単身住まいの女性理事長を支援しています。理事会が終わるとご自宅にお呼ばれして、お茶を飲みながら世間話をしています。このマンションは近いうちに、私が初めて「管理者」を務めるマンションとなることでしょう。
最後に申し上げたいことは、「人間の顔と同様にマンションも十人十色。課題も解決策も異なる。どれが最適な道なのかは、結局のところ当事者同士で、汗水を流し、悩み苦しんでやっていくなかから見つけていくしかない」ということです。これが私の結論です。
何もせず、外から助けてくれるのを待っているだけでは未来は開けません。嘆いている時間はありません。まずは仲間づくりからはじめて、最初の一歩を踏み出し、各種の相談会や自治体の窓口、同じ環境下にあるマンション管理組合を訪ねることをお勧めします。勇気づけられ、役に立つ情報が必ず得られることでしょう。
<参考>
マンション管理の新たな枠組みづくりに関する調査検討報告書
http://www.mlit.go.jp/common/000012099.pdf
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/mansion/column/20081222/529099/?P=4