北海道マンション管理問題支援ネット
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HP管理員 2008年12月03日 (水) 16時47分 No.992
≪マンション管理新時代≫
国土交通省の社会資本整備審議会住宅宅地分科会に設置されたマンション政策部会では、「分譲マンションストック500万戸時代に対応したマンション政策のあり方」について議論が進められている最中です。その第2回の議論の場に国交省が「マンションに関する紛争事例の分類」というペーパーを提出しています。
そこに、この「共同の利益に反する行為」を想起させる事例がいくつか出ているのですが、最も悩ましいと思ったのが次のケースです。
「組合員Aは親族BをAの住戸に入居させた。このBは、深夜に大声で奇声を発したり、ベランダに干した布団に水を撒いたり、共用廊下にゴミをまき散らしたりする。AにBの退去を求めたところ、話し合いにも応じない。再度文書で退去を要請したところ、容認して欲しい旨の回答だった。組合員全員は我慢できない状態まで来ているので、何とか解決する方法を相談する弁護士を紹介して欲しい」
「退去を要請」や「組合員全員が我慢できない状態」という文言が私には引っかかりました。親族の行為を「共同の利益に反する」とみなして57条の差止請求を行い、それで解決できないなら、こうした事例でも58条の使用禁止請求や59条の競売請求にまで踏み込むことになるのでしょうか。
迷惑行為の当事者はもちろん故意ではないでしょう。しかし、他の居住者からすれば、故意であろうと過失であろうと迷惑を被っていることに違いはありません。一方、当事者である区分所有者からすれば家庭内の事情で譲れないこともあります。
ペーパーは“望ましいと想定される解決方策イメージ”という項目を設けており、この事例については「第三者である専門家などによる解決案の提示や裁判」などではなく、「当事者間での話し合い」で解決する内容と分類していますが、当事者同士の話し合いではとても解決できるレベルではないと思います。
ちなみに九鬼弁護士は、「区分所有法や管理規約では解決できない問題」という見解でした。
高齢化社会を迎え、精神的疾患にかかった親族を引き取らざるを得ないなど、こうした事例は今後増えてくる可能性があると思います。
読者のみなさんはどうお考えでしょうか。
集まって生活している以上、「共同の利益」がそこに存在することは否定できません。しかし、これに反したからといって、「条文があるから」と、直ちに専有部分の使用禁止請求や区分所有権の競売請求に走ってよいのでしょうか。
1983年の区分所有法改正で57条〜60条がほぼいまの形に整備されたとき、私は「これは合法的な“村八分”条項ではないか」という感想を抱きました。
映画「楢山節考」にも登場しましたが、“掟破り”の村人の家族をコミュニティーから強制的に排除する“村八分”。そんな相互監視のムラ社会を嫌って都会に出てきた人たちが多く住んでいるマンションに、似たような“排除の掟”があるとしたら何とも皮肉な話です。
映画のような陰惨な状況としないためにも、57条はともかく、58条〜60条は使わずに済めばそれに越したことはないと思います。日ごろから居住者に対して「共同の利益」について周知徹底を図ることが先であり、そのうえで「共同の利益に反する行為」については、司法はもちろん管理組合も、慎重のうえにも慎重に、かつ限定的に認定すべきでしょう。
硬直したルール至上主義に陥り、「共同の利益に反する!」と規約違反行為の差止請求が乱発され、あげく使用禁止請求や競売請求の訴訟がたびたび発生するような中古マンションは、息苦しいだけで住みたくはありません。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/mansion/column/20081203/528568/?P=2