北海道マンション管理問題支援ネット
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HP管理員 2008年10月22日 (水) 16時48分 No.928
≪マンション管理新時代≫
まず2週前からの1週間に車検証の写しを組合事務所に持参したうえ、用意された「外→内」、「内→外」の箱から封筒を引きます。封筒の中には、入れ替え当日の朝に行われる駐車場選定の順番を決める番号が書かれた紙や、管理組合法人と居住者が取り交わす覚え書2通などが入っています。
「外→内」の封筒には「?1」からはじまる若い番号が振られており、「内→外」の封筒の中の紙には、その後に続く番号が振られています。外部の駐車場を使った人は次の年には必ず内部駐車場を選択できる仕組みです。
入れ替え当日は、管理事務所内の集会室を使って早朝から駐車場選定が行われます。抽選番号の若い順に10人ずつ呼び込まれ、敷地の内外に点在する指定駐車場の中から自分の望むスペースの番号を指定し、覚え書と組合の記録簿にその数字を記入していきます。
集まった居住者の点呼と集会室への呼び込み、名前と住戸の確認、駐車スペースの選定、覚え書への記入事項の確認、記録簿の作成と続く流れ作業は、組合役員と管理事務所の事務員が総出で手際よく行います。選定順位の抽選の準備から当日の作業まで、役員が費やす労力は半端ではありませんが、入居時から続く慣習なので、みな手馴れたものです。
駐車スペースの選定作業は午前中に終わり、14時から一斉に入れ替えが始まります。400台以上のクルマが一斉に駐車スペースを入れ替える様はさぞかし壮観だと思われるかもしれませんが、いたってスムーズに事は運びます。
どうせ入れ替えだからと、選定を終えると遠出したり、周辺のSCやレジャー施設に出かけたりで、指定時間の前からかなりのスペースが空き状態になるからです。私は10数回この入れ替えに参加していますが、一度も混乱するのを見たことがありません。
「内部」と「外部」の使用料は同じに設定されていますが、荷物の積み出しや搬入、家族を乗せるときの手間などはかなり違います。「外部」に当たる年で最も遠かったときは、住戸から約400m離れたスペースを割り当てられたこともあります。あの苦い経験に比べればはるかにましですが、1年間の我慢でした。
現在は、たとえ「外部」の年でも、遠くの駐車場を割り当てられる可能性はほぼなくなりました。10年前にクルマを利用する居住者の5割強だった「内部」駐車場の充足率が8割近くに達したからです。
このマンションにとって、駐車場の確保は新築分譲時からの大問題でした。
管理組合は敷地周辺の地主の協力を得てマンション用の専用駐車スペースを確保してきましたが、代替わりで地主側の意向が変わったり、都市計画道路が抜かれたりで、同じ数の駐車スペースを外部で安定的に確保できる見通しは立ちませんでした。
駐車場問題を検討する専門委員会は何代にもわたって続きました。
二段式の駐車場に改築する案や、地下ピットを掘って機械式駐車施設を取り込む案が出されたこともあります。前者は建築確認だけでなく都市計画の変更まで必要になること、後者は工事やメンテナンス費用、子どもの安全確保などで問題のあることが指摘され、いずれも廃案になりました。
敷地内に残る樹林地を伐採して駐車場を拡張する案が出されたときは、居住者が“クルマ派”と“ミドリ派”に分かれて大論争となり、結局、実現しませんでした。
では、どうやって事態は改善したのでしょうか。理由は二つ、考えられます。
ひとつは数年前に管理組合を法人化したうえ、隣接した敷地を買い取って「内部」駐車場に繰り入れたことです。この隣接地は食品スーパーが地主から借りて使っていましたが、地主の相続でスーパーが撤退。物納された挙げ句、一団地指定の都市計画がかかっているため建物を新たに建てることができず、半ば放置されていました。この敷地を管理組合法人が購入したことで、“内部”扱いの駐車場を数十台分、一挙に増やすことができたのです。
もう一つは居住者の高齢化に伴ってクルマの利用者が減ってきたことです。正確な数はわかりませんが、10年ほど前は少なくとも450台程度の利用者がいたと記憶しています。最寄り駅からバス便の立地なのでもともとクルマ利用者の数は多いのですが、全世帯に占める割合は確実に減る方向にあります。来客者用の専用スペースを敷地内に設けるだけの余裕も出てきました。最近は内部駐車場の増設は話題にならなくなりました。
仮に駐車場不足が俎上に上がっていた時代に機械式や二段式を採用していたとしたら、いまごろどうなっていたでしょうか。
内部駐車場は確実に余りはじめたことでしょう。といってマンション外の人たちに貸し出すのは、会計処理や税法上の扱いで難しい面があるといわれています。となると駐車スペースは空いたまま放置するしかありません。
時代は移り変わります。
以前はマンションにおける内部駐車場の不足は大問題でしたが、最近は機械式にせよ二段式にせよ、分譲時から内部駐車場の“100%確保”をうたったマンションが増えています。屋内駐車場面積の一部を容積率不算入とする建築基準法の緩和措置も効いているようです。
ただ、高齢化や人口減少、若年層のクルマ離れがこのまま進めば、こうした「100%充足マンション」でも、駐車スペースはやがて余ってくるのではないでしょうか。
外部への賃貸や機械式駐車場の撤去、用途変更がスムーズにできる仕組みや長期計画を、いまから考えておく必要があるのではないかと思います。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/mansion/column/20081022/527305/?P=2