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一度も消防設備点検を受けていない居住者宅に立ち入るための方策は? HP管理員 2008年10月15日 (水) 11時45分 No.919

icon ≪マンション管理新時代≫

Q:築7年目のマンションの理事長です。最近、防火管理者から「これまでに一度も消防設備点検を受けていない区分がある」と知らされました。その区分所有者の普段の行動から察するに、点検を受けていないのは確信犯的(故意)と思われます。まずは直接的に、点検を受けるようお願いするなどの対応から始めますが、いよいよ、点検を受け入れないようであれば、どのような対応が可能でしょうか。ご教示よろしくお願いします。

A:私はいつもご質問の内容から状況をできるだけ正確に把握したうえで適切な回答作成に務めたいと考えていますが、本コーナーのQ&A形式ではご質問者にご不明な点を再確認することができませんので、ある部分は推定(仮説)になることをまずお許しください。

消防法によれば、共同住宅である分譲マンションの管理者(理事長)は、消防用設備について消防設備士等の有資格者に、法定の点検をさせ、その結果を3年に1回、消防長または消防署長に報告しなければならないとされています。一般的には、消防用設備には、「消火設備」、「警報設備」、「避難設備」、「消防用水」、「消火活動用上必要な施設」、「非常電源」、「その他、配線、操作盤」などがあります。

ご質問にある「これまで消防設備点検を受けていない区分がある」の意味するところが何かを考えてみると、「区分」という表現があるので、専有部分ないしは専用使用部分にある消防用設備の点検と推定できます。想定できる設備は以下の2つです。
(ア)専有部分の火災警報器類の点検
(イ)専用使用部分のベランダに設置されている「折りたたみ式避難はしご、救助袋、緩降機」類の点検

(ア)は火災発生時に周辺居住者へ警告を通知するか管理員室の集中警報盤に通知するもの、(イ)は緊急避難時の避難路を確保するものです。
いずれも大切な生命を守るうえで重要な消防用設備です。1区分所有者の確信犯的(故意)行為で、その「区分」の消防用設備点検がなされないことは、単に当該区分所有者だけの問題にとどまらず、当マンション居住者全員の「安全・安心」にかかわる問題となります。早急に解決を図らなければなりません。

ではどうしたら、解決できるのでしょうか。
こうしたときに私は、すぐに区分所有法や管理規約を持ち出して「法律やルールがこうなっているのだから直ちに点検させなさい。さもなければ訴訟も辞さないぞ!」と力づくにやるのではなく、まずは、もう一度原点に立ち返り、“なぜ自らの安全確保につながる点検を拒否するのか”という真の理由(背景)を解き明かすことをお勧めしています。拒否する理由(背景)がわかれば、問題解決の糸口は見えてくるからです。

平たく言うと、心の通い合いで問題解決を図るようにお勧めしているわけです。甘いと言われるかもしれません。このような回答をするには理由があります。私自身マンション管理士として、「話し合いの先に解決の糸口がある」を信条として管理組合の顧問活動に取り組み、問題解決に努めてきました。
そのなかで、ご質問にあるような「専有部分並びに専用使用部分に立ち入っての点検」を拒否されるケースにも何度か立ち会いました。拒否し続ける区分所有者のご自宅を理事長と私が何度も何度も訪問し、その理由をお尋ねしてようやくわかった代表例をここで紹介します。

(1) かつて管理組合活動に関して投書箱で意見具申したところ、当時の理事が自宅を訪ねてきて非難を浴びせられ、一方的な報告書が名指しで掲示され、村八分的な扱いを受けた。あるいは、何度も意見具申したが理事会から無視された。それからは管理組合役員と管理組合活動に不信感を抱くようになり、嫌がらせ的に専有部分や専用使用部分への立ち入り点検を拒否するようになったケース
(2) マンション固有のルールでやってはならないと決められていることは認識したうえで、専有部分や専用使用部分を違法な仕様に変更する、ベランダ部分に温室やロッカーを設置する──といったルール違反を犯しているので見られたくないというケース
(3) 明確な理由はないが、とにかく他人を自分の部屋に入れることを嫌がるケース

(1)と(2)のケースには点検を拒否する理由(背景)が存在します。一方、(3)は理由があってないようなケースです。
ご質問には「普段の行動から察するに、点検を受けていないのは確信犯的(故意)と思われます」とありますが、上記の(1)、(2)、(3)のいずれに該当するでしょうか。私は判断がつきかねますので、それぞれについての対処法を以下に回答します。
仮に、いずれにも当てはまらない第4のケースであれば、そのときは、回答の流れに沿って、第4の回答を導き出してみてください。

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/mansion/column/20081007/526914/
HP管理員 2008年10月15日 (水) 11時47分 No.920

icon ≪マンション管理新時代≫

(1)管理組合の活動や役員に対して不信感を抱き、それが原因で立ち入りを拒否するケース
このようなケースでは、真の原因が管理組合と区分所有者のどちらにあるのかは不明瞭であり、時間も経過していることから、事実の究明は極めて難しい状況にあります。
従って、まずは当該区分所有者の意見を十分に聞き、心のわだかまりを解いてあげることが大切になります。現役員が誠意をもって当該区分所有者と接し、ヒアリングした意見を理事会でキチンと論議して、その結果を本人に報告するか掲示することで、関係改善を図りましょう。

(2)専有部分や専用使用部分でルール違反を犯しているので、立ち入りを拒否するケース
ルール違反があるとすれば、それを管理組合として放置することはできませんが、まずは点検できるようにすることが先決です。
A 点検は委託している第三者である業者が行うことを説明し、消防設備点検以外の報告は理事会に上がらないことを強調する
B 書面ではなく直接会って、消防設備点検の重要性について説明する
C 避難はしご設備や避難ハッチの部分、隣戸との隔て板の周辺に物を置かないといった「善管注意義務」が区分所有者や居住者には課せられており、万が一、違反が原因で罹災(逃げ遅れによる死傷など)するケースが発生すれば、損害賠償を請求されることがあることを伝える
――以上を行うことで理解と協力を求めましょう。

(3)明確な理由がないにもかかわらず拒否するケース
このケースが一番難しいと言えます。明確な理由がないまま「拒否」だけはハッキリするタイプなので、堂々巡り、“ぬかにクギ”状態が続き、コミュニケーションが成り立ちません。
私の体験したケースの当該者は独身の若者でした。しかたなく、管理組合(理事長)は緊急連絡先のご両親と連絡を取って事情を説明し、ご両親から本人を説得していただき、立ち入ることができました。

このように「拒否」する側にもいろいろな理由(背景)があります。
「立ち入り拒否」問題を解決する一番のポイントは、対話によってできるだけ正確に「拒否」する理由(背景)を把握し、その理由(背景)ごとに管理組合として適切に対応方法を変えることです。

以上の努力を行ったうえでどうしても進展が図れないと判断したときに、初めて、区分所有法や管理規約に基づいて対処することになります。

管理組合(理事長)は、「区分所有者の権利義務等」を規定している区分所有法6条の条項「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」に基づいて、義務違反者に対する措置として、理事長による「勧告及び指示等」または訴訟を起こすことになります。

ただし、この方法ですべてが上手いくとは限りません。解決までの時間、手間、弁護士費用などを考えると、やはり、最初に挙げた当該者との話し合いによる解決策を私はお勧めします。
最初にボタンを掛け間違えると、そのまま事態が進んで「感情」だけが溜まりに溜まり、問題がこじれます。なるべく早期に適切に対処することで、問題を長く引きずらないようにしてください。

参考として、区分所有法とマンション標準管理規約の関連条項を紹介しておきます。

<参考>

区分所有法


6条(区分所有者の権利義務等)
区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
3 第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。

マンション標準管理規約

21条(敷地及び共用部分等の管理)
敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の管理のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。

23条(必要箇所への立入り)
前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
2 前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
3 前項の場合において、正当な理由なく立入りを拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。
4 立入りをした者は、速やかに立入りをした箇所を原状に復さなければならない。

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/mansion/column/20081007/526914/?P=2





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