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HP管理員 2008年09月12日 (金) 18時37分 No.853
≪NIKKEINET 住宅サーチ≫
マンションの資産価値を守るために必要な要素とは
マンションにおけるコミュニティー機能を考えるときに無視できないもうひとつの“価値”が、「資産」の観点です。マンションへの永住意識は高まってきていますが、売却しない場合でも、ライフステージの変化を想定し、賃貸に出したときの市場価値を把握しておくのは非常に大切なことです。
管理組合によって裏付けられたコミュニティーが、マンションの共同管理を円滑にすることは前述の通りですが、適切な管理がマンションの資産価値に差をつけることを表した興味深いデータがあります。
表は、東京都目黒区で築30年以上のすべてのマンションの共用部分の維持管理状態を私どもの研究室で実際に歩いて調査し、市場価格との相関性を調べたものです。経年劣化が進むマンションから、築30年以上とは思えない良好な状態のものまでを4ランクに分け、それぞれで中古販売価格を算出したところ、明らかな違いが結果に表れました。適切に維持管理されているマンションは、そうでないものの平均2倍以上の資産価値を有しています。
建物の修繕だけではなく、市場価格が高かったマンションでは、新たにオートロックや宅配ボックスを設置する、バリアフリー設計にするなど、時代に合った工夫が見受けられました。また、外壁の色を決めるために所有者が全員で集まって試し塗りし、バランスを見ながら話し合ったなどの例もあります。それらの取り組みの土台となるのがマンション管理組合であり、大規模修繕に向けて所有者全員が集まって、今何が必要かをしっかり話し合っていることが成功につながっています。
現在、政府が提唱する200年住宅ビジョンを背景に、「つくっては壊す」フロー型から「いいものを大切に長く使う」ストック型への移行が業界全体で進んでいます。そうした中、現状ですでに全国の住宅数は世帯数の約1.14倍(総務省統計局統計調査部国勢統計課「2003年度住宅・土地統計調査報告」)とされていて、一つの世帯が複数の住宅を所有するというケースもありますが、それでも1割近くが空き家だと推測できます。これは全国均等に空き家が生まれているわけではなく、居住者離れが進んでいる特定の地域があると考えるのが自然でしょう。
この差となってくるのが住環境です。長期間での所有や居住を前提とするからこそ、土地や建物の価値を超えて住環境の価値に注目が集まり、一つの街、一つのマンションという単位で選ばれるためのブランドをつくっていく必要があるのです。住環境をより良くし、確かな資産性を守り続ける役割こそがコミュニティーに求められていると言えるでしょう。それは自分たちのマンションをどう管理していくかという問題にもつながってきます。
200年という長いスパンでマンションの資産性を考える場合、長期に渡って住環境を守るための「適正に管理し続ける」ルールづくりや計画が重要となってきます。20年、30年、40年と、長期修繕計画を立て、その資金を準備したり、共用部分に関しても後々の変更のしやすさを考えた設計を施すなどの配慮も大切です。
場当たり的ではなく、組織的・計画的なマンション管理のために、各コミュニティーで形成する管理組合の役割はいっそう拡大していきます。そこには専門家のサポートも適切に取り入れていくべきでしょう。超長期的視点で今後どのような住宅技術の発達が見込まれるか、それに対してどのような管理体制を築いておくか、プロのアドバイスを管理の土台に置いておく必要があります。また、マンションの寿命が長いほど所有期間には個人差が生まれますが、それに関係なく公平な決定権や費用負担ができる民主的なルールもあらかじめ設定しておかなければなりません。
これまでの「守りの管理」から「攻めの管理」へと変わることが必要です。そのためには問題が発生する前にそれを回避する仕組みづくりが必要です。これこそが、200年住宅ビジョンを見据えたマンション管理のポイントとなります。「環境」と「資産」を総括したマンションの価値を長期的に守り、住んでいて心地よく、さらに人から人へ受け継いでいきたくなる住宅とするためにも、コミュニティーの主体的な取り組みがますます重要になると言えるでしょう。
http://sumai.nikkei.co.jp/sp/vision_200/interview02_02.html