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住戸数の6割に上る駐車場専用使用者が抽選による入れ替えに反対している。法的問題はないのか? HP管理員 2008年08月29日 (金) 10時08分 No.825

icon ≪マンション管理新時代≫

Q: 住戸数の6割しか駐車場がないマンションに住む者です。管理規約上は、駐車場の専用使用の期間および利用希望者が多数の場合には抽選と明記されていますが、過去一度もなされておりません。抽選実施は議題に上がるが、現利用者が「運用細則(抽選方法など)が決まっていない」と主張し、運用細則の決定を議題に上げると現利用者側の反対多数で否決され、その結果、抽選もされておりません。
運用細則が決定されないことを理由に抽選を実施しない場合、法的問題はないのでしょうか。また、法的リスクを勘案して、細則を決定しないまま理事会の職権で「合理的に公平と見なせる方法での抽選実施」を行った場合にも法的問題はあるのでしょうか。
お教えください。

A: ご相談者のマンションの管理規約には「駐車場の専用使用期間」および「利用希望者が多数の場合には抽選」と明記されているが、分譲時に分譲会社と購入者との間で交わされた何らかの駐車場使用契約によって、申し込み順に駐車場使用者が固定したままになっているという前提で、お答えします。

まず、「利用希望者が多数の場合」という要件に、このマンションは当てはまるかです。
住戸数の6割しか駐車場がなく、駐車場利用希望者が、残り2〜4割の住戸に達するのであれば、この要件は満たすものと思われます。
次に、専用使用期間についてです。
専用使用期間は規約で明記されているということですが、その期間を大幅に超えて駐車場を利用しているのであれば、更新についての運用細則がない以上、規約違反となります。
以上から、ご質問の前半部分である「運用細則がないことを理由に抽選を実施しない場合、法的問題はないのか」については、上記2点において規約違反となります。

次にご質問の後半、「理事会が職権で抽選を行うことに法的問題はないか」という点ですが、現状について規約違反が明らかであるとしても、いきなり抽選に踏み込む前に、もう少し段階を踏んだらいかがでしょうか。

理事会がまずすべきことは、駐車場利用に関する実態調査です。
次にその結果を居住者に広報したうえで暫定的な抽選実施要項を作成し、説明会を開いて意見を集約します。
最後にその意見を反映させて要項を完成させ、抽選を告知して実施するという手順を踏むべきでしょう。

駐車場利用に関する実態調査は、区分所有法30条3項が規定する「利害の衡平性」が保たれているかを判断するために行います。
具体的には以下の(1)〜(4)について調査することが考えられます。

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/mansion/column/20080819/525342/
HP管理員 2008年08月29日 (金) 10時08分 No.826

icon ≪マンション管理新時代≫

(1)もしもマンション内の駐車場が使えるなら利用を希望するか否かという、利用希望者数
(2)マンション内の駐車場を利用できないために外部の駐車場を借りている人の利用料金
(3)外部の駐車場を借りている人がその駐車場からマンションまで到達するのに要する時間
(4)外部の駐車場を借りている人がその駐車場からマンションまで到達する際に感じている不便さ(例えば危険な国道を横断したり歩道橋を渡ったりしなければならないなど)

以上の(1)〜(4)を把握して「利害の衡平性」が保たれていないことを確認できたら、マンション内の駐車場利用者と外部駐車場利用者の置かれた状態を比較した表を作成して、調査結果とともに「規約違反である現状を放置できない」ことを居住者に広報します。

次に、そこから半年くらいの猶予期間をおいて暫定的な「合理的で公平と見なせる方法による抽選実施要項」を作成し、説明会を開き、居住者の意見を集約します。
さらにその説明会で集約した意見を参考にして理事会で抽選実施要項を完成させたうえで、抽選を実施すると広報して、抽選を実行に移すことになります。

ここで法的に問題となる点は、理事会で作成する抽選実施要領の有効性であろうかと思います。
私見ですが、規約で利用希望者が多数の場合は抽選と定められていること、また、利用者調査の結果、金銭的にも時間的にも生活上も外部駐車場利用者が著しく不利益を被っている結果が判明しているのであれば、区分所有者間の「利害の衡平性」は保たれていないと考えます。
また、これまで管理組合総会に抽選実施の運用細則を上げても6割に達するマンション内駐車場利用者によって否決されている現状がある以上、理事会で作成した抽選実施要領は「利害の衡平性」を保つために緊急かつやむを得ない措置であり、その有効性を評価したいと考えます。
マンション内駐車場利用者でなお不満な人は、この要領の無効確認を裁判所に申し立て、最終判断を任せたらいかがでしょうか。

ただ、本件で一番深刻なのは、仮に抽選を実施できても、6割に達する現在のマンション内駐車場利用者が参加せず、現状のまま駐車場利用を継続した場合です。
区分所有法57条に基づき、共同の利益に反する行為をした人に対して、管理組合として行為の停止や行為の結果の除去を請求しようとしても、6割が反対に回れば総会では議決できません。
理事長ができることは、「抽選に参加しないのであれば内部駐車場を利用する意思がないとみなす。速やかに管理組合に駐車場を返還せよ」と勧告することくらいです。

この場合、外部駐車場利用者は、マンション内駐車場利用者に対してその共有持分権により駐車場返還請求訴訟を起こし、勝訴しなければ、実際にはマンション内駐車場を利用できません。
返還訴訟では、理事会の以上の一連の活動によって管理組合が維持管理している駐車場を利用する権限を喪失したにもかかわらず、マンション内駐車場利用者は不法占拠していると主張することになります。
こうした訴訟を起こす場合には、損害賠償請求も同時に行うことが考えられます。

今回の相談事例のような、住人のエゴがもろにぶつかり合っている管理組合の現状には、正直、心が寒くなります。
“不利益は順番に負担しましょう”という気持ちに持って行くには、何よりも普段のコミュニケーションが大切です。
訴訟合戦がマンション内で起これば、そのマンションの財産的価値は下落します。
住人みなが大人になることが肝心です。

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/mansion/column/20080819/525342/?P=2





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