2008年に発表されたDr. DeMatteo等によるリポートを見つけました。GIST完全切除後の再発を予測する貴重な情報だと思います。特に術後グリベック服用の判断に必須の情報だと思います。 このリポートは下をクリックして全文が読めます。http://www.pediatricgist.cancer.gov/pdf/articlesDrAntonescu/Dematteo%202008.pdf題は「腫瘍有糸分裂率、腫瘍径、原発臓器は、GIST完全切除後の再発を独立的に予測可能」です。このリポートは1983年から2002年に単体GIST完全摘出手術を受けた127人の患者の経過を報告したものです。即ちグリベック治療以前の情報です。このリポートのメッセージは Figure 1 – 4 で殆どが解ります。できればマウスを各グラフ上に動かし、左ボタン クリックして、その後右ボタン クリックし、また左ボタン クリックしてコッピーをし、別の MS Word などのページにペーストしてプリントできれば解り安いです。グラフ4個を1ページに載せプリントして下さい。
各グラフの縦軸は再発フリー(なし)患者の%割合です。 横軸はGIST完全切除後の年間です。Figure 1 は原発臓器で上から胃、小腸、大腸または直腸で括弧内の数値は患者サンプル数。 これによると胃原発の予後が一番良く、小腸が中、大腸または直腸の予後は良くありません。Figure 2 は腫瘍径がパラメターです。小さい腫瘍径の予後が良いのは確かですが、10cm以上でもそれほど悪くありません。Figure 3 は mitoses, 腫瘍組織の有糸分裂率がパラメターです。GIST腫瘍細胞の有糸分裂率が予後に顕著な影響を与えることが見られます。私見ですが有糸分裂率が腫瘍組織の悪性度を示す基本パラメターだと前から思っていました。腫瘍径は発生時から腫瘍切除時までの時間的な情報がないので、現状を示すものだと思います。しかし腫瘍が大きければ、急速に増殖した可能性が高いと考えられ、その容積に比例して第二次的な突然変異の可能性が増え、悪性度が悪くなるのではと考えています。
Figure 4 は腫瘍組織の mutation, ゲノムの突然変異のエクソン場所がパラメターです。KIT exon 11, PDGFRA, No mutation, KIT exon 9が示されています。KIT exon 11は三種類示され、それは:PM: Point Mutation 遺伝子が突然変異して一個のコードンが間違った別のコードンに変わったものINS: Insertion 遺伝子が突然変異しての余分のコードンが一個入ったものDel: Deletion 遺伝子が突然変異して一個のコードンがなくなったものDEL557 or 8 遺伝子が突然変異してコードン557か558がなくなったもの。PDGRRA: Platelet-Derived Growth Factor Receptor αNo mutation 遺伝子の突然変異が見つからない。ワイルドタイプでしょう。再発の可能性は KIT exon 11 PM/INS、KIT exon 11 Del、PDGRRA、No mutation、KIT exon 11 DEL557 or 8、KIT exon 9の順で悪くなります。著者は遺伝子突然変異は統計的に有意義な独立した要素ではいーーと。他の要素と組み合わせると相関関係が薄くなるとのことです。サンプルサイズが少ないからかもと書かれています。繰り返し、この情報はグリベックや他のタイロシンカイネス(チロシンキナーゼ)抑制剤以前の情報です。これは手術後のアジュヴァント治療を判断をするのに数値化された重要な統計的な情報だと思います。自分の病理リポートを読み、統計的に再発予後が良くなければグリベックの予防的な服用が延命に繋がるでしょう。予後が良い腫瘍はアジュヴァント治療をしなくても再発した時点のグリベック服用で治療効果が良いとのリポートを記憶しています。また、これらのグラフを見て興味を引いたのはKIT exon9を除いて、3-6年生きのびれば横線になり再発の可能性がなくなる事です。ただ統計的な可能性でギャランテイーではありません。
詳しいレポートありがとうございます。 英語は少ししかわかりませんが,SUNNY南加さんの説明でなんとなくですが,理解できました。 エクソン11の異変の場合でも何通りかの異変の仕方があるんですね。自分の場合,そこまでは病理検査の説明時に聞かなかったので次回のCTのときにでも質問して見ます。
Sunny南加さんの話はホントにいつもためになります。ありがとうございます。これからグリベック迷ってる方には心強い文献ですね。私もその一人です。