オーストラリア、フランス、イタリア、スペインのサーコマ研究機構による835人対象の大きな治験結果です。RO又はR1マージンでGIST摘出手術後の二年間アジュバント イマチニブ服用 と 観察のみの2つのグループの5年以上の治療結果の暫定報告です。これは2015-11-16 Journal of Clinical Oncology誌に発表された要約です。http://jco.ascopubs.org/content/early/2015/11/16/JCO.2015.62.4304後にコメントしました。アジュバント イマチニブ服用者さん、じっくり読んで下さい。 目的: 2004年に我々は、局部的なR0-R1の手術後、高または中リスクのGIST患者対象にアジュバントイマチニブ服用に対し 服用なしの無作為化治験を開始しました。(R0-R1は後にコメントで説明)患者および方法: 手術後患者を無作為に2年間毎日イマチニブ400mg服用か それ以上の薬治療なし と二組に割り当てた。主要エンドポイントは 全生存期間、無再発生存期間(RFS)、無再発期間、そして毒性が二次エンドポイントでした。 2009年に、進行したGIST患者の予後における同時改善を考慮し、我々は独立データモニタリング委員会の同意を得て、主要エンドポイントを「イマチニブの失敗なしの生存」 Imatinib Failure–Free Survival(IFFS)に変更した。ここに計画された暫定解析結果を報告しました。結果: 2004年12月から2008年10月の間に、合計908人の患者はランダム的に イマチニブ服用群に454人、そして観察のみ群はコントロールに454人 の2グループに割り当てられた。これらのうち、835人の患者が適格であった。 追跡 (Follow-up) 期間中央値は4.7年で(統計的信頼度パラメターは省略)、5年間のImatinib Failure–Free Survival - IFFSは イマチニブ群は87% 対 コントロール群では84%であった。(これ以後数値は、前者はイマチニブ服用群、後者はイマチニブ非服用コントロール群)3年間の無再発生存, Relapse Free Survival - RFSは 84% 対 66% であった。5年間の無再発生存, Relapse Free Survival - RFSは 69% 対 63% であった。5年間の全生存率はそれぞれ 100% 対 99% であった。地方の病理医診断による高リスクGIST患者528人のうち、5年間IFFSは 79% 対 73%であった。 336人の中央病院で治療している高リスク患者の5年間IFFSは、それぞれ、77% 対 73%であった。結論: 本研究で、アジュバントイマチニブがRFSに明白な影響を与えていることを確認した。IFFSで顕著な差は認められなかったが、高リスクのサブグループにアジュバント服用に利点がるあ傾向があった。IFFSが潜在的なアジュバントイマチニブ服用のエンドポイントとして考案したのは、それが進行したGIST患者の主な予後不良因子である二次的耐性を敏感に示すからである。私のコメント:切除マージン「R0」マージンとは、切除された腫瘍の端に顕微鏡検査で腫瘍細胞がみつからない完全切除を示す。「R1」マージンとは、切除された腫瘍の端に顕微鏡検査で腫瘍細胞がみつかった不完全切除を示す。「R2」とは、切除マージンに肉眼で見える腫瘍の部分が除去されなかったことを示す。グリベック効果につき多くの治験結果報告を読んでいます。全てを記憶してはいませんが、この治験結果の私の第一印象は、「アジュバント イマチニブ 服用と服用なしは大差ないじゃないの?」です。この治験結果は下に比べると楽観的に感じました。「切除可能GISTに対する1年間および3年間のイマチニブ術後補助療法の比較:無作為化比較試験SSGXVIII/AIO」 https://www.gist.jp/bunken/15.html (日本語です。)しかし、注目しなければならないのはこの治験の患者は悪性度が中または大で、摘出手術マージンをR0かR1に限定したことだと思います。R2,すなわち腫瘍組織を取り残した手術の患者さんは除外されています。(私のは内視鏡摘出手術なのでR1、もしかしたらR2の一人でしょう。)この要約には書かれていませんが、この治験登録書、https://clinicaltrials.gov/show/NCT00103168 によるとこの要約に書かれていない多くの治験参加適格制限があります。1.ローカライズド、即ち転移していないGIST.2.治験開始前、少なくとも2週間ー3ヶ月内に原発腫瘍の切除手術を受けている。3.高リスク: 腫瘍サイズ> 10p、細胞分裂度> 10/50HPFs または 中リスク: 腫瘍サイズ= 5-10p, 細胞分裂度< 5/50HPFs のGISTに制限.4.抗体染色によりキット(CD117)陽性 (即ちワイルドタイプは除外)5.切除はR0(クリアマージン)かR1のみ。R1の定義は: 切除のマージンは腫瘍によって汚染されているが、大きな腫瘍が残されていない。 術中腫瘍破裂も含む (Shelling-out procedure)腫瘍のみの掴み捕り? 内視鏡摘出手術6.摘出後に見える残存的な腫瘍組織の無い事もう一つは彼らはImatinib Failure–Free Survival(IFFS)なる新しい判定基準項目を取り入れたことだと思う。「グリベックに失敗せずの生存」です。それをどの様に確認したかはこの要約からでは読み取れません。たぶん再発後にグリベックを再服用し耐性がでるまでの期間がImatinib Failure–Free Survivalになるのでしょう。このIFFSはアジュバント イマチニブ 服用群では87%、服用なし群は84%だったとの事。大差がないと思いますが?。この裏は13%の前者はグリベック耐性がでたが、後者は16%だった −でしょうか。この治験でいちばん、良い情報は5年間の全生存率は100% 対 99% だったことでしょうか。そしていずれにしてもグリベックが80%以上効いた、でしょうか。
グリペックに関して3年間は再発に効果があるが、こと生存に関しては服用、非服用に関わらずほぼ変わりはないということでしょうか。再発しても外科手術や放射線治療(サイバーナイフ)、ラジオ波等による対処ができ、癌とは違って再発頻度が低く転移しても特定の臓器に限定されて治療がし易いというgist特有の性質にあるのではと思いますがいかがでしょうか。
癌治療である化学療法や放射線治療は、残念ながらGISTにはほとんど効果がないと聞いております。再発もするし、どこにでも転移もします。見方を変えれば、癌よりもやっかいで強かな病のような気がします。薬も数少なく完治する力もありませんし、決して治療がし易くはありません。癌と同じように怖い病気だと私は考えております。
放射線治療の一種のサイバーナイフは特に肝臓転移のgistに効果があると聞いていますが。Sunny北加樣の外国でのご報告事例によればグリペックの服用群、非服用群の両者において<5年間の全生存率はそれぞれ 100% 対 99% であった>とありますが、これをいかが解釈しますか?私も不案内ですのでぜひ春風樣、その他様の意見を聞きたいと願っております。
い草さん、この治験は 2年間アジュヴァントグリベック服用 に対して 観察のみの との比較なのでこの要約からは3年間の優勢はあまり読み取れないと思います。しかし参照した「切除可能GISTに対する1年間および3年間のイマチニブ術後補助療法の比較:無作為化比較試験SSGXVIII/AIO」によると3年服用の優勢がはっきり解ります。その再発可能性の優勢度が図2の表で示されています。次の因子パラメターがあれば3年服用の優勢度は20%から36%も良くなるとの結果がでています:60歳以上、細胞分裂数が10/HPFs以上、腫瘍破裂有り、腫瘍摘出マージンがR1,腫瘍細胞変異がExon11かWild Type.他のガンと比べての再発頻度はこれらからは読みとれません。しかしGISTは癌でないからとの楽観は禁物だと思います。