このポストは皆さんにも有意義な情報と感じ、Gisters.netに最近ポストしたものを多少編集したものです。
最近LRG Science Teamから、スカンジナビア諸国の1年対3年アジュヴァントイマチニブ治験の10年
フォローアップ情報をゲノムタイプ別に解析したリポートが紹介されました。これは今年4月4日に
掲載された最近リポートです。
KIT and PDGFRA Mutations and Survival of Gastrointestinal Stromal Tumor Patients Treated
With Adjuvant Imatinib in a Randomized Trial
「ランダム的にアジュバント イマチニブで治療されたGIST患者の KIT および PDGFRA 変異と生存」
概要は https://aacrjournals.org/clincancerres/article/doi/10.1158/1078-0432.CCR-22-3980/726013/KIT-and-PDGFRA-Mutations-and-Survival-of
で読めます。本文は"PDF”をクリックして読めます。
下は概要をGoogle翻訳し、編集したものです。
患者と方法:
スカンジナビア肉腫グループ XVIII/AIO 多施設試験で、2004 年 2 月 4 日から 2008 年 9 月 29
日間に肉眼的に完全手術後、GIST 再発のリスクが高い 400 人の患者が登録された。患者は1 年ま
たは 3 年間、アジュヴァント イマチニブ 400 mg/日を投与された。 KIT および PDGFRA 変異を分
別しGIST が確認された 341 人 (85%) の患者を分析し、結果を再発なし生存率 RFS および全生存
率 OS を推測した。
結果:
追跡期間中央値 10 年の間に、RFS、再発なしの イベント164 件と 76 件の死亡が発生した。 GIST
が再発した場合、ほとんどの患者はイマチニブで再治療された。 KIT エクソン 11 欠失またはイン
デル変異を有する患者のうち、3 年間のアジュバント イマチニブで治療された患者は1 年間治療さ
れた患者よりRFS、再発なしの生存、OS, 全生存が長かった。 KIT エクソン 9 変異を有する患者
は、アジュバント イマチニブの投与期間に関係なくOS、全生存率 が不良だった。
結論:
1 年間のイマチニブ投与と比較して、3 年間のアジュバント イマチニブ投与により、KIT Exon11
欠失/インデル変異を有する患者のサブセットにおいて推定死亡リスクが 66% 低下し、10 年間の
OS 率が高かった。
以下は本文から私が有意義と感じる文章を翻訳したものです。
「GIST 再発の推定リスクが高い患者は、ヨーロッパ EMSOのガイドラインは 3 年間、および米国の
NCCN ガイドラインは少なくとも 3 年間、アジュバント イマチニブ治療が推奨されています。」
「KIT エクソン 11 欠失またはインデル変異 (最大の変異サブグループ) を有する患者は、1 年間
のイマチニブと比較して、3 年間のアジュバント イマチニブの場合、より長く生存することが解っ
た。追跡調査中央値10年間のち、3年間アジュヴァントイマチニブの患者の86%が生存していたのに
対し、他のグループは64%であった。」
百聞は一見に如かず、英語では ”A picture is worth a thousand words.”と言いますが、Kaplan
-Meier推定図(以降KM図)は非常に有意義な情報だと思います。これらKM図はアジュヴァントイマチニブ
効果がゲノム変異タイプしだいで顕著な差がある事が明確に示されています。ゲノムタイプ別KM図
への私の素人説明と、観察コメントもしました。
(Supplemental Figuresは長いURLをクリックすると出てきます。)
Supplementary Figure S1
https://aacr.silverchair-cdn.com/aacr/content_public/journal/clincancerres/proof/10.1158_1078-0432.ccr-22-3980/1/ccr-22-3980_supplementary_figure_s1_suppfs1.pdf?Expires=1685116478&Signature=pfseus-A9xTFzTsIL7G1MUeKlKGbv4-LXHIlvdUfQark2-PUXV17ujvEkmNBTYhVDsdRvXjAYN7N9~wbSS5N6XH2fb8N9jQHH3Kuoo4QkOuaQ1w1SorcQ4IzX2~H2emjMRYY6H53vbcEkaS518KfdWNvMWab7oVh10LSjRRWycSAMKxbU13hK1vpxSOfa~r2Sg8FHuyZcaw5Dg4odw0MZaICOby-RotPI0ISfdcwhb5OPuakgli9rCC2A2yYZsuvGRdia1zSgWo~9qaWd-UmULnPkfmeEkj-liNPg5uh6CQmCiwhpSyErLykr-hQp5XfNcHd
最初のFigure S1- A, Bは Exon11のDeletion, 欠失変異をもつGISTのKM図です。Exon11欠失変異の
うちMK557-558欠失の頻度は最高で、再発率も一番高いと他のヨーロッパ治験が示しています。これ
ら欠失変異は1年服用後の再発率が高く、1年 対3年の再発なし生存率との差も大です。特に1年服
用し、休薬1年内に50+%の患者さんが再発をしています。OS、全生存率も3年服用の効果が帯を引
くように良い事を示しています。しかし、この変異にはイマチニブ効果が良いと報告されている事
は3年間服用の良い予後を示していると考えます。これはExon11欠失変異には長期的なアジュヴァン
トイマチニブ服用が良策だと示唆しているのでしょうか。
Figure S1- C, DはExon11の Indel, Insertion and Deletionの略, 挿入と欠失両者変異をもつGIST
のKM図です。この変異の休薬後の再発なし生存率グラフは殆ど合致しています。両者とも休薬1年直
後の再発なし率が30%ほど急落すると示されています。やはり、服用継続が良策でしょうか。
Supplementary Figure S2
https://aacr.silverchair-cdn.com/aacr/content_public/journal/clincancerres/proof/10.1158_1078-0432.ccr-22-3980/1/ccr-22-3980_supplementary_figure_s2_suppfs2.pdf?Expires=1685116478&Signature=ZbYe6TxpPQz30ONFa2qq8y5ugM4SAc9tXLQuv97xjoQJ7gy50YW3hIYfwlgPdLIlD8WTj0B62t50UeM6Tnir6A7JHb8W~h~xs6keZnxj7CS1YYFwLhnsWjGj~LO36ecFYDqHaMFbcYZQztpwnji8eHykQxo1EKucCCrQlipWbghPOcIguHHO6ZwuOqHondSQ1J-ak~brkS-UqzFFD03RYp772daXboIt39SubIvay~HnYWGLTUqPORQFy8j-M0S8PXE8eK3MJrfW7LTcrLpWXLJaOWJVhie-uHekf8-meS2x2SgtLjGY3A~L1Kw~yg9D0qffllYC3k0FoK0o3PdVYA__&Key-Pair-Id=APKAIE5G5CRDK6RD3PGA
Figure S2- AはExon11の, Substitution, 置換変異をもつGISTのKM図です。これはKIT一部のゲノ
ムが置き換えられた変異です。この変異の休薬後の再発率は他のExon11の変異よりも10+%良いと
示されています。同時に休薬後の長期的な再発率の1年、3年差は10%ほどです。
Figure S2- BはExon9の変異をもつGISTのKM図です。この図はExon9変異をもつGISTはアジュヴァン
ト服用期間に無関係にイマチニブの増殖抑制効果が低い事を証明していると示しているでしょう。
Exon9の変異には800rのアジュヴァントイマチニブは400rと大差ばなかったとヨーロッパのリポー
トを記憶しています。
Supplementary Figure S3
https://aacr.silverchair-cdn.com/aacr/content_public/journal/clincancerres/proof/10.1158_1078-0432.ccr-22-3980/1/ccr-22-3980_supplementary_figure_s3_suppfs3.pdf?Expires=1685116478&Signature=JheBLyfNudF-oYc5eyMOzPvB5~1qW~fUqwcBEc8L5VVh1j7V1EvDHjkzlkwByebLqfImRPpEhfAT1dfEtJGI9PFHGAf6meqcPLTJnIpL1758xGsBDnuj1XZJ-CQ7jOFR~QzzI8Xhw3Qd6nB~OHDfQ4nlM5M1~gbFCjNi8JiURUt5k2XJ9TFnojad28ftTBUg2iYCk8-uuWrv9feeMT-tZa1Xg~IBsx0qZQiRj3GePXdtQVRz49devgymLfm-2X0MlWZ1CEwTbmQqJablgGJcUMahMDgUa2grGsYKBOZJhsfSzRAZxZcjpnXHy58CIg-g99ZBV0FUtpyO3Ze1naH2yw__&Key-Pair-Id=APKAIE5G5CRDK6RD3PGA
Figure S3- A, BはExon11 Insertion, 挿入か Duplication, 複製の変異をもつGISTのKM図です。3
年服用組の再発なしの生存率が1年より悪いのは対象患者数が少ないからかもと思っていますが高い
全生存率が10+年後でも維持されていることが嬉しい。
Figure S3- C, D はPDGFRA exon 18 D842V 変異のKM図です。イマチニブがこの変異に効かないの
で、再発は1年、3年間のアジュヴァントに無関係です。しかし高い全生存率を維持しているのは
PDGFRA GISTの進行が遅いからでしょうか。特に3年間アジュヴァント服用者の生存率が10年間100%
です。
Figure S3- E, F はKITでもPDGFRAでの変異なし、すなわち従来のワイルドタイプのGIST患者のKM
図です。これらワイルドタイプにはイマチニブが効かないと言われていますが、アジュヴァント3年
の再発率が1年より低いと示してます。対象患者数が少なく統計的信頼度が低いですが、ワイルドタイ
プも全生存率が高いことは増殖度が遅い事を示唆いるのでしょうか。
本文にも書かれていますが、全生存率はアジュヴァントイマチニブ治療後の再発にイマチニブも含
めた、適切な治療薬効果も大きいでしょう。しかし、それら詳細はこのリポートからは読み取れません
でした。
2016年に発表された1年対3年のアジュヴァントイマチニブ服用治験結果のリポート
Adjuvant Imatinib for High-Risk GI Stromal Tumor: Analysis of a Randomized Trial
は下のサイトで読めます。
https://www.cinj.org/sites/cinj/files/documents/Adjuvant%20Imatinib%20for%20High-Risk%20GI%20Stromal%20Tumor.pdf
このリポートのKM図、Figure 2は全治験患者の平均値ですから、比較的少数のExon 9、PDGFRAと
かWild Typesのアジュヴァントイマチニブ治療効果が統計的に抹殺されています。
ちなみに、筆頭著者のHeikki Joensuu医のグループは2000年3月からイマチニブ(当時の承認前の
薬名はSTI571)を転移した重篤なGIST女性患者に試験的に処方し、奇跡的な結果を得ました。その
後のSTI571治験の劇的な結果によりGIST治療薬と承認され、殆どのGIST患者は長生きできるように
なりました。下はそのケースリポートです。
Effect of the Tyrosine Kinase Inhibitor STI571 in a Patient with a Metastatic Gastrointestinal Stromal Tumor
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJM200104053441404?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200www.ncbi.nlm.nih.gov