新型コロナウイルスCovid-19に対する治療法の開発が急がれていますが、すでに市場に出回っている既存薬は、その安全性が証明済みであり、転用で効果があると分かれば保険承認までの期間を大幅に短縮できます。

Repurposing Drugs In Oncology（ReDO：腫瘍学における薬物の転用）ProjectというサイトのCovid-19データベースの集計によると、Covid-19に対する薬物を使用する介入型臨床試験の総数は、5/1時点で767であり、そのうち既存薬が含まれる試験は538で、全体の70.1％を占めています。

最も試行回数の多い薬は、マラリア治療に使われるHydroxychloroquine：ヒドロキシクロロキンで、153回となっています。

http://www.redo-project.org/covid19db/?

このデータベースで「imatinib」＝グリベック、と入れて検索すると4つの試験が見つかります。

実はグリベックは過去の非臨床試験でMERS（中東呼吸器症候群）、SARS（重症急性呼吸器症候群）の感染初期において、ウイルスの増殖を阻害する事が分かっています。ただしこれは in vitro（試験管内）での結果であり、実際に患者さんが効果を得るために必要な服用量は、かなりの高用量になると思われます。

グリベックを転用した臨床試験の内訳は、グリベック単剤での試験が２、他の薬剤との併用が２で、いずれも感染が認められた患者さんを対象に実施されています。

このうちオランダで実施されているグリベック単剤による試験と、グリベックの抗ウイルス効果について、あるCML患者さんがグリベックの開発者Dr. Brian Drukerに質問し、そのやり取りが公開されました。

https://www.facebook.com/groups/9779458758/permalink/10157480415223759/

4/9　メンバーの‎Rob Lasich‎ さんとDr. Brian Drukerのやりとりです。

‎Dr.Drukerの回答の部分だけ私の翻訳を付けました。

「回答：親愛なるロバート、5年経過を達成しましたね。
共有したいいくつかのことがあります。今はできるだけ早くより良い治療法が必要なので、イマチニブが役に立てば幸いです。イマチニブがウイルスの増殖を阻害したという記事がいくつかありましたが、それらでは、ほとんどの人が服用または許容できる量の5〜10倍の用量を使用していました。
オランダの研究は興味深いですが、残念ながら少し心配です。イマチニブが体液貯留につながることはわかっており、彼らの研究の目標は、重度の肺疾患患者の問題としてこれを減らすことでした。そのため、イマチニブが問題を悪化させるのではないかと心配しています。私が間違っているなら嬉しいが、そこにはもっと良いアイデアがあるのではと私は思います。

国際的なCMLコミュニティは患者の感染を追跡しており、感染率の上昇や低下、または転帰の改善は見られませんが、その数は非常に少ないです。それを念頭に置いての私のアドバイスは、人との接触を避けるよう最善を尽くすことです。

これらの信じられないほどの困難な時に最上の願いを込めて。　Brian Druker　MD」

以上


現時点でイマチニブが、新型コロナウイルスCovid-19に対し臨床上の何らかの効果を示す証拠はありません。
ウイルスへの効果を期待して独自の判断をおこなう事は大変危険です。
服用に関する決定は必ず担当の医師とおこなっていただくようお願いいたします。

また、情報は絶えず更新されています。
CMLの患者さんが対象ですが、下記のサイトの情報は参考になると思います（英文）
https://www.hematology.org/covid-19/covid-19-and-cml