最近, 治験登録サイトを覗き、好奇心で ’GIST ctDNA' と検索したら二件でてきました。
一つはドイツのミュニック大学主催でもう今年6月に終わっていました。この暫時リポートが発表されていました。
「血液内のfcDNA検出でGIST治療発展の観察法」
http://meetinglibrary.asco.org/content/109224-132
このリポートの結論は 進展しているGIST患者さんの血漿のfcDNA増加を観察し、治療効果を示す患者さんからはfcDNAの減少を観察した。腫瘍fcDNA量は疾患経過と相関した との結論です。
このリポートでは ”mutant free circulating DNA, fcDNA” と呼んでいます。
新しいのはイタリアの治験でいま患者応募中です。
Circulating Cell-free Tumor DNA in the Plasma of Patients With GIST
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02443948?term=GIST+cf-DNA&rank=1
この治験は2014年6月に始まり、2016年に暫定リポートを出し、3年後に完結します。患者募集数は60人。手術前、その後2年間3ケ月おきに採血し、cf-DNAを検出し、CTまたはMRI画像結果を含めた治療結果との相関を評価する ようです。
このリポートでは”circulating cell-free tumor DNA, cf-DNA”と呼んでいます。
この治験詳細説明を翻訳しました。
「Demetri氏らはAACR及びASCO2013年総会で、GRID研究(レゴラフェニブ)における患者のGIST遺伝子型を評価するために探索的分 析を発表した。 KIT遺伝子の変異は腫瘍組織サンプル(31)の66%と比較して58%の血液サンプルから検出された。しかし彼らの分析に着目した場合、イマチニブおよ びスニチニブなどの標的療法への耐性の駆動変異である二次KIT変異だと、組織サンプルのわずか12%と比較して47%の血液サンプルに二次変異を発見し た。また、二次KIT変異が発見された血液試料のほぼ半分は、複数の二次突然変異を保有していた。したがって、cf-DNAが突然変異GISTの状態や病 気自体の効率的なマーカーになるだろう。
これに基づき、本試験は、変異を有する腫瘍DNA(KIT、PDGFRα、BRAF、RAS、SDH)を疾患進行中または治療フォローアップ中のGIST患者の血漿中から検出し、それらを数値化し、GIST疾患治療状態と相関させることができるかを評価する。」
コメント:
この治験詳細を読み ちょっと治験応募者が少ないですが ”これだ!” と大変うれしく感じました。ドイツの治験も独立したものですが、他のGIST液体生検は薬治験に使われ、薬会社がそれらの費用を払っていると思います。例 えば、レゴラフェニブ治験、そしていま現行中のRESET治験と前にもポストしたポナチニブPhase II治験です。これらは第二線またはそれ以後の比較的に進行したGIST患者さんに限定された情報で、一般的なGIST治療と相関できる情報に乏しいので はと思います。でも逐次GIST治療効果とct-DNAとの相関データベースを構築し、ガイドラインになる治療改善となる早い日が近くなることを切望して います。このct-DNAの有意義なデータベースにより、CT, MRIより正確な治療効果がわかり、CTの様な大きなX線被爆が避けられ、第二次的な変異の同定により適宜な薬投与が可能になると考えています。私の場合 も含め、アジュヴァント服用の減量、出来れば休薬にも正確に出来るのではないでしょうか。
一つ心配するのは腫瘍DNAのカケラを検出する機器です。これらの機器は進展中でまだ定着していなと感じています。色々の応用原理、そして検出方法があ り、それらの精度差、信頼度が心配です。ポナチニブ治験をされているDr. Heinrichへの個人的質問に「ごく少量のct-DNAを検出しなくてはならず、BEAMing(ゲノム検出法)は敏感だがまだまだノイズレベルが高 く、まだ難しい」との現実的な返事でした。まだまだ進展中ですから、安価で, 高精度の, 速い機器が勝ち抜き、安定化するのはまだ数年先になるのでは? 下を参考にして下さい。
次世代シーケンサーの分類(2014年版)日本語です。http://genaport.genaris.com/GOC_sequencer_post.php?eid=00091
最後にこれらの文献を読んで、血中に流れている、これら腫瘍DNAのカケラの ’呼び名’ 自体もまちまちです。ヨーロッパでは ”mutant free circulating DNA, fcDNA”, そして ”circulating cell-free tumor DNA, cf-DNA” とも呼んでいます。アメリカの文献では殆どが ”circulating tumor DNA, ct-DNA” と呼んでいます。いつどれに落ち着くのだろうか? 最後のct-DNAがデイレクトで短く良いと思いますが。